なぜ会議でファシリテーター・ファシリテーションが重要視されるか

2012年にNTTデータ研究所が行った「会議の革新とワークスタイル」に関する調査では、現在の会議の問題点について下記の点が挙げられました。

・無駄な会議等が多い(45.0%)
・会議等の時間が長い(44.1%)
・会議等の頻度が多い(36.7%)
・会議等の参加者のスケジュールを調整するのが難しい(21.7%)
・会議等の結論が持ち越されたと思う会議がよくある (21.5%)
・会議等の時間を守らない人が多い(21.1%)
・会議等のコミュニケーションが活性化しない(20.9%)
※カッコ内の数値は回答した人の割合
引用: 2012年10月5日「会議の革新とワークスタイル」に関する調査|株式会社NTTデータ経営研究所

ファシリテーションとは、会議をスムーズに進め、良いアウトプットを促進するためのスキルです。参加者に問いかけを行いつつ、アイデアをまとめて参加者全員が納得する結論を形成していく手法は、20%の人が上げているような結論の持ち越しを防ぎます。

また、同調査で13.8%の人が回答している「声の大きな人の意見に誘導されやすい」という問題や「コミュニケーションが活性化しない」という問題も、それぞれの意見を引き出すファシリテーションの手法で解決できるでしょう。

行政においてもファシリテーションを軸としたコミュニケーションが、ビジネスや社会の仕組みに対するイノベーションの創造につながると期待されています。文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」では、イノベーションを生み出す手法の1つにファシリテーションが挙げられています。

参加者が主体的にかかわり、アイデアを出していくスタイルは、新しいアイデアを生み出していく手法としても優れているといえるでしょう。

参考:
2012年10月5日「会議の革新とワークスタイル」に関する調査|株式会社NTTデータ経営研究所
「イノベーション対話ツールの開発」について|文部科学省

ファシリテーションの活用事例

ファシリテーションは教育現場からビジネスまで幅広い分野で注目されています。中でも特徴的な活用事例をみてみましょう。
  

大学教育

厚生労働省では「学校教育領域におけるキャリア形成支援」として、大学で学生に対するキャリア支援を行う教員に対して講習会を行っています。その中で、グループワークを通じたファシリテーションの実践を呼びかけています。

学習は、本来、学習する者が自ら発し、自らが活動して行うものであるが、講義形式による知識を注入される学習方法では、学習者は受け身のままで主体的にはならず、学習者個々の個性的な思考はおしならされたままである。これに対し、グループワークは、注入され、承るだけの学習を、学習者の活動として主体化し、学習者相互のやり取りによって一層活性化することに役立つ
引用:平成28年度講習テキスト及び参考資料(大学等) 講習テキストPart2(第4章)

講習会のテキストには、グループワークの意義について、上記のように述べており、画一的な講義形式に比べ、グループワークは主体的な学びにつながるとしています。この時、大学教員がファシリテーターとしての役割を担い、学生同士のグループワークを活性化する役割を担います。

グループワークは、メンバー同士で意見を理解し、かつ自分の意見を主張していくファシリテーション能力が要求されます。このような能力は「学生が社会に出てから活動するために必要な力である」と同テキストでも述べられており、ファシリテーションが教育現場でも注目されていることがわかります。
  

介護・医療

短時間の間に患者や入居者の健康状態や医療情報を共有する必要がある介護や医療の現場でも、ファシリテーションは注目されています。

実際、厚生労働省が運営している「介護人材確保地域戦略会議」では、介護現場におけるマネジメントのあり方としてファシリテーションに関する情報が共有されています。また、独自にファシリテーション研修に参加し、社内の人材育成に役立てている事業者もあります。

参考:
「人材確保に向けた事業者の自助努力を促進するワークショップ型課題検討プログラム」|厚生労働省
介護人材確保地域戦略会議|厚生労働省