総務省が発表する情報通信白書の中にある「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、いまだコミュニケーション手段の中心を担うのはメールだという統計データが記載されています。

とはいえ、時代の流れと共に、徐々に"メールからソーシャルメディアへ"コミュニケーション手段の移行が進みつつはあり、40代及び50代もソーシャルメディア利用が増加していることは明らかです。

ただ、10代、20代のSNS利用は平成24年の8.8%から約11%成長して20.1%と爆発的に伸びています。

ただし、それでも30代~50代、60代のコミュニケーション手段のトップは「携帯電話」「固定電話」「ネット通話」「SNS」「メール」で考えた際、最も多いのはメールで、全世代で見ても26.2%でトップ、2位SNSの20.1%と僅差に迫るものの、いまだ多くのユーザーの主要なコミュニケーション手段として存在しています。
※上記で挙げたメールないしSNSの利用率は休日を含まず、平日利用に限った数値

それは普段の生活だけではなくビジネスシーンでも同様です。
事実、Webマーケティングを行う上でよく耳にする手法の1つに「メールマーケティング」があります。

このメールマーケティング、メールを使った販促手段ではありますが、一体メールマガジン(メルマガ)と何が違うのか、皆さんわかりますでしょうか。部下や後輩、お客様に聞かれた際、説明できますでしょうか。

そこで今回は、そんな方々のために「メールマーケティングとは」についてわかりやすく解説していきます。
  
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コミュニケーション手段としてのインターネット利用時間、行為者率|総務省27年度版情報通信白書より

  
参考:
コミュニケーション手段としてのインターネット利用時間、行為者率|総務省27年度版情報通信白書
  

メールマーケティングとメルマガの違い

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実は、この「メールマーケティング」と「メルマガ」というのは、マーケティング用語的に明確に区別された定義が存在するわけではありません。

ただし一般的には、「相手に合わせた情報提供」をメールマーケティング、「一方的な情報伝達」をメルマガ、と呼んで区別しています。

メルマガの歴史は古く、1978年にアメリカのある企業が見込み客に対してメールを一斉に配信したところ、多くの売上を上げたことがブームのきっかけと言われています。
それから長いことメルマガは企業からお客様への情報伝達手段として使われてきました。

そんなメルマガが近年、メール配信システム側の機能向上により、お客様一人ひとりに寄り添った形でのメール配信ができるようになり、また配信結果を数値で見られるようになったことで、企業側はより戦略的なメール配信が行えるようになりました。

「戦略的に設計され、効果検証されたメールかどうか」がメルマガとメールマーケティングの大きな違いなのです。
  
「なんで再び注目されているの? メルマガなんて誰も読まない」
  
そんな声をよく日本国内から耳にしますが、海外でも何年も前から「e-mailmagazine is dead」なんて言われてきました。

ところが、前述したようにメール配信システム側の機能を使って効果測定してみると、実は非常に費用対効果の高い販促手段だということがわかったのです。

その要因には以下のようなものがあります。

・ 広くリーチできる
FacebookやLINE、Twitterなど、近年ではSNSの利用者は非常に伸びていますが、これらアプリを利用する(ダウンロードする)にはそもそもメールアカウントが必要です。
つまり、どのアプリの利用者よりもメールアドレスを持っている人の方が多いため、幅広くリーチすることが可能なのです。

・ コストが安い
メール配信システムを使用する場合、1件あたりにかかるコストは数円です。対して、郵送DMは1通50円前後、電話で10分話すと25円ほどかかります。
また、メール配信システムは配信回数が増えても定額で利用できるシステムも多いので、配信すればするほど1件あたりのコストは下がります。

・ 改善が簡単
リスティング広告に代表されるPPC(クリック課金型)広告などの運用型広告とは異なり、メールマーケティングは他社の影響を受けません。つまり、配信の結果は自社だけの責任なのです。そして、改善すべき個所は非常に限られていますので、定石に沿って改善をしていくだけで大きな効果が見込めます。
導入も運用も簡単。だけれども、しっかりと効果が出る。これが、メールマーケティングの醍醐味です。

  

メールマーケティングを始めるには

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まずは、メールを送る目的(ゴール)を設定しましょう。ゴールについては、「○○を〇個売り上げる」「セミナーへの参加者を〇人集める」など、定量的な数値を設定してください。

「お客様とのリテンションを向上させたい」「ファンを作りたい」という数値化が難しいゴールを設定しないようにしましょう。難しいゴールを設定してしまうと、配信結果からの改善をどうしたら良いのか頭を抱えてしまうことになります。

そういった意味でも、まずは具体的なゴールを設定してください。

次に、配信リストの作成です。

効果を最大化するためには、「ゴールに近い位置にいるお客様に配信する」のが1番です。そのためには、配信リストをゴールに合わせた形で顧客属性ごとに分類しておく必要があります。
  
例)

ゴール 配信対象の顧客属性例
特定商品の購入 その商品が属するカテゴリーの商品を購入したことのある顧客
見込み客のセミナーへの誘導 セミナー会場の近くに拠点がある企業で働く顧客
期間限定商品の案内 購入頻度の高い顧客

  
「自社にはメールアドレスと名前くらいしか情報が無いから、お客様を属性ごとに分類できない……」

落ち込まないでください!同じ悩みを持つ企業は多数いらっしゃいます。
こんな場合は、これからのメール配信をとおして、ゴールに近い位置にいるお客様を見つけていけばいいのです。

あとは、「機能」・「コスト」・「サポート」を比較し、自社に合うメール配信システムを用意するだけです。

これでメールマーケティングを始める準備ができました。下記ではメールマーケティングを行う上でチェックすべき改善ポイントを説明していきます。
  

メールマーケティングでチェックすべき改善ポイント

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先述したとおり、メールマーケティングで、チェックすべき改善個所は非常に限られています。

1. そのメールは届いたか(到達率)
2. そのメールは興味を惹いたか(開封率)
3. そのメールは心に響いたか(クリック率)
4. メールと誘導先は一致していたか(コンバージョン率)

大まかに言えば、上記4ヵ所がメールマーケティングでチェックすべき改善ポイントです。

それぞれの数値は、業界や配信内容により異なりますが、まずは以下の数値をベンチマークとするといいでしょう。

1. 到達率(エラー数 / 配信数 *100)→90%以上
2. 開封率(開封数 / 配信数 *100)→10%以上
3. クリック率(クリック数 / 配信数 *100)→2%以上
4. コンバージョン率(コンバージョン数 / 配信数 *100)→0.2%以上

  

1. 到達率の改善

到達率とは、配信したメールのうち、相手のメール受信サーバーまで届いた割合です。

「え?送ったメールは全部届くんじゃないの?」
はい。届きません。届かない理由はいくつかあります。

・ 送り先のメールアドレスがもう使われていない
これは一番多いパターンです。特にキャリアメール(docomoやau,softbankなどの独自のメールアドレス)は、携帯会社を変更すると使えなくなってしまいます。
もう届く見込みのないメールアドレスは送信先リストから速やかに削除しましょう。

・ 迷惑メールと判定されてしまった
こちらも多くみられるパターンです。各社の迷惑メールの判断基準は当然の事ながら公開されることはありませんが、主に「送信元ドメイン」「送信元サーバ」「コンテンツ」などが基準となっています。
このあたりは専門的な部分でもあるため、ご利用になるメール配信システムのシステムベンダーに相談されることをオススメします。

そのほかにも様々な原因やそれに合った対策がありますが、大事なのは「エラーとなった原因」をきちんと確認し、対策をしていくことです。

この対策を怠ると、到達率はどんどん下がってしまい、せっかく作ったコンテンツも相手に届いていないということになってしまいますので注意しましょう。
  

2. 開封率の改善

開封率とは、配信したメールのうち、相手がメールを見た割合です。

どうやって計測しているかと言うと、HTML形式で送付したメールのソース内に画像が埋め込まれており、その画像が呼び出された数をカウントしているのです。

受信者側のメールソフトでHTMLメールを受け取らない設定にしている場合は、テキストメールとして届くので、開封したかどうか計測できません。

開封率の改善ポイントは、ずばり「タイトル(件名)」です。
送ったメールがそもそも開かれなかったら、何の意味もありません。まずは、中身を読みたくなるような件名を付けましょう。
  

3. クリック率の改善

クリック率とは、配信したメールのうち、コンテンツ内のURLをクリックした割合です。

これは、計測したいURLがクリックされた数をカウントするので、テキストメール・HTML
メールに関わらず計測が可能です。

クリック率を改善するにはコンテンツの構成や中身を見直す必要があります。

無理にコンテンツに中身を詰め込むよりも、訴求力の高いランディングページを作成し、そちらへの誘導に力を入れた方が良いでしょう。
  

4. コンバージョン率の改善

コンバージョン率は、配信したメールのうち、設定した目標を達成した割合です。

メールから誘導されてきた先が期待していた中身と異なる場合、お客様は目標を達成せずに離脱してしまう可能性が高くなります。

メールと誘導先の親和性を高めるとともに、ランディングページでの訴求力を上げたり、目標を達成するためのハードルを下げたりすることでコンバージョン率を高めましょう。
  

まとめ

いかがでしたでしょうか?先述いたしましたが、導入も運用も簡単です。

ただ「しっかりと効果が出る」というのがメールマーケティングの醍醐味ではありますが、これを実現するための肝は「振り返りのための定量的なゴール設定」と「改善をし続ける継続力」です。

ぜひ、皆さんもメールマーケティングにチャレンジしてみてください。