ナーチャリングという言葉を見聞きしたことがあるものの、意味を詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。ナーチャリングに取り組むとビジネスにおいて様々なメリットを得られるため、正しく理解しておくことが大切です。

この記事では、ナーチャリングの基礎知識や得られるメリット、具体的な手法などを紹介します。企業でマーケティングを担当している方はぜひ参考にしてください。

目次

  1. ナーチャリングとは顧客育成のこと
  2. ナーチャリングに取り組むメリット
  3. ナーチャリングの具体的な手法
  4. ナーチャリングを成功させるポイント
  5. ナーチャリングでリードや既存顧客の興味度を高めよう

ナーチャリングとは顧客育成のこと

図_リードナーチャリングとは.png

ナーチャリングは、育てるという意味の英単語「nurture」に由来するマーケティング用語です。顧客育成を目的とした取り組みをナーチャリングと呼びます。

上図のように見込み顧客や既存顧客に対して役立つ情報を提供し、自社の商品やサービスにより興味を持ってもらうことがナーチャリングの目的です。

見込み顧客を対象としたナーチャリングは「リードナーチャリング」と呼ばれ、既存顧客を対象としたナーチャリングと区別される場合があります。

ナーチャリングに取り組むメリット

ナーチャリングに取り組むと、営業効率や顧客単価の向上など複数のメリットを得ることが可能です。ここでは、ナーチャリングで得られる主なメリットを4つ紹介します。

図_ナーチャリングのメリット.png

1. 営業の効率を高められる

● 検討期間の長いBtoBビジネスでは必須

リードナーチャリングは、営業時の成約率を高めるために役立ちます。
特に、商品・サービスの認知から購買の意思決定までの期間が長いBtoBビジネスでは、リードナーチャリングが効果的です。

見込み顧客の興味度が高まっていない状態で営業のアプローチをしても、効率よく成約を獲得することができません。

リードナーチャリングによってユーザーのサービス理解を深めたり、見込み顧客の課題をどう解決できるのかを具体的に伝えることで、顧客の興味度を引き上げることができ、営業の精度を高められます。

2. 離脱顧客の掘り起こせる

見込み顧客や既存顧客だけでなく、離脱してしまった顧客にもアプローチできることがナーチャリングのメリットです。

例えば、年度ごとに契約更新が行われるBtoBサービスを販売している場合、切り替えタイミングに合わせてナーチャリングの施策を行うと、再契約に繋がる可能性があります。

図_失注ナーチャリング.png【例】失注したリードをナーチャリングするフロー

離脱した顧客の掘り起こしには、課題解決に繋がる新機能やサポート内容、価格の見直しなどの情報提供が効果的です。

ただし、商品やサービスの内容が全く変わっていないにもかかわらず、情報発信をし続けてしまうと逆効果となるリスクがあります。離脱してしまった原因に応じて、再契約に足るだけの有益な情報を提供することが大切です。

3. 顧客単価の向上に繋がる

顧客単価の向上が期待できることも、ナーチャリングのメリットです。

● BtoBサービスの例

複数のプランがあるBtoBサービスを販売している場合、ナーチャリングを実施することで上位のプランを購入してもらえる可能性があります。

複数のプランがある場合、具体的な機能の違いをよく理解しないまま、とりあえずコストが安いプランを導入するというケースも一般的です。ナーチャリングの施策で、各プランの違いや機能の有用性を正しく周知することが顧客単価の向上に繋がります。

● BtoC商品の例

また、化粧品や健康食品などのBtoC商品を販売している場合は、リピート促進関連商品の購入促進にナーチャリングが効果的です。商品の新たな使い方や魅力、セットで使うべきおすすめ商品などの情報提供が、顧客単価を引き上げてくれるでしょう。

4. 顧客の解約を防止できる

既存顧客からの解約を防止できることも、ナーチャリングのメリットです。サブスクリプション型のサービスや、リピート性の高い商品などを販売している場合、解約防止のための取り組みが重要です。

ナーチャリング施策で既存顧客にとって役立つ情報を発信すると、興味度を持続できるでしょう。

<顧客にとって役立つ情報の例>
・CMSサービス:コンバージョンの出やすいサイト作成のノウハウ
・人事管理サービス:組織運用の悩みを解決するコンテンツ
・化粧水・乳液など:スキンケア時に行う、シワ・たるみに効果的な顔面マッサージ方法

また、商品やサービスに対するよくある疑問やトラブルを解消するような情報も、解約の防止に役立ちます。

ナーチャリングの具体的な手法

ナーチャリングを実施する方法には、メール配信やセミナー開催など様々なやり方があります。ナーチャリングの対象者や提供する情報に応じて、最適な手法を選ぶことが重要です。

ここでは、ナーチャリングの主な手法と、各手法の特徴について解説します。

図_ナーチャリングの手法.png

メルマガ・ステップメールの配信

メールによる情報発信は、取り組みやすいナーチャリング手法の1つです。最新情報を定期的に配信するメルマガや、あらかじめ決められた内容を何回かに分けて配信するステップメールなどでナーチャリングができます。

例えば、既存顧客に対して有益な情報をメルマガで配信すると、自社や商品・サービスに対する信頼性が高まるでしょう。また、資料請求をした見込み顧客に対して、より詳しい情報やセミナーの案内などをステップメールで送ることも効果的です。

コストや手間をあまりかけることなく取り組める点が、メルマガ・ステップメールのメリットです。

ホワイトペーパーの作成

ホワイトペーパーとは、調査データやノウハウなどがまとめられた資料を指します。自社のターゲット層に役立つホワイトペーパーを作成し、Web上でダウンロードしてもらうことでナーチャリングが可能です。

例えば、BtoBの求人支援サービスを販売している企業では、人材不足の解消や求人コストの削減に役立つホワイトペーパーが考えられます。ホワイトペーパーの中で課題解決に役立つ情報を提供した上で、自社のサービスを紹介すると、見込み顧客の興味度が高まるでしょう。

また、ホワイトペーパーを使った施策はナーチャリングだけでなく、リードの獲得にも効果的です。

ウェビナー・セミナーの開催

ウェビナーとは、オンラインで開催するセミナーを指します。ウェビナーやセミナーでは、ある程度興味度が高まった見込み顧客に対して、さらに詳しい情報を提供することが可能です。

例えば、広告配信サービスを提供している企業なら、広告の費用対効果を高めるノウハウや運用ツールの使い方などをテーマにしたウェビナーやセミナーが考えられます。参加者からの質問にその場で回答し、満足度を高められることがウェビナーやセミナーの特徴です。

また、ウェビナーならどこからでも参加できるため、全国を対象に参加者を募集できます。セミナーと比べて、会場予約の手間やコストがかからない点もウェビナーのメリットです。

リターゲティング広告

リターゲティング広告とはWeb広告の一種です。自社のWebサイトなどにアクセスしたユーザーに対して、サイトから離脱した後も広告を表示できます。リターゲティング広告は、次のようなケースで使うことが可能です。

  • サイト訪問者にホワイトペーパー広告を表示する
  • 資料請求を完了したユーザーにウェビナーの広告を表示する
  • 商品を購入した既存顧客に関連商品の広告を表示する

サイトに訪問したものの、その後のステップに進んでいないユーザーに向けてナーチャリングを行いたい場合、リターゲティング広告が適しています。また、リターゲティング広告は、過去の資料請求者や商品購入者と行動パターンが似ているユーザーに表示することも可能です。

ナーチャリングを成功させるポイント

ナーチャリング施策で成果を上げるためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。特に重要なポイントは次の3つです。

シナリオを作成する

シナリオとは、ターゲットの行動に合わせてどのような施策を行うかを決めた流れのことです。ナーチャリングを成功させるためには、ターゲットの属性や興味度などに応じて、適切なシナリオを作成する必要があります。

シナリオで決めるべき項目の例は次の通りです。

  • 資料請求から何日後にどのようなステップメールを配信するか
  • ウェビナー参加からリアクションが無い見込み顧客にどうアプローチを行うか
  • 上位顧客に対してより付加価値を提供するためにどのような施策を行うか

各ステップでターゲットユーザーが抱えている課題や知りたい情報などを考慮し、効果的なシナリオを作成しましょう。

図_ナーチャリング設計の例.png【例】ナーチャリングフローの一例

自社に合うツールを使用する

ナーチャリング施策には、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客管理)などのツールが役立ちます。

MAツールでは、メール配信や広告出稿などの施策を自動化することが可能です。CRMツールを使うと、見込み顧客や既存顧客を行動履歴に基づいてセグメント化し、ターゲットに合わせた施策を立案できます。

特に、多くのターゲットに対してナーチャリングを行いたい場合は、ツールを使って施策の手間を省くことが重要です。自社で実施したいナーチャリング施策に合わせて、必要な機能を備えたツールを導入しましょう。

KPIを設定しPDCAを回す

ナーチャリングを実施する際は、達成するべきKPIを定めた上で、PDCAを回すことがポイントです。ナーチャリング施策を実行しても、効果検証を行わないと成果に繋がっているかどうかが分かりません

ナーチャリングを行う際のKPIとして、次のような項目が挙げられます。

  • メルマガ経由で発生した売上
  • ウェビナー参加者の商品購入率
  • 見込み顧客に対する営業の成約率
  • 継続サービスの解約率
  • ホワイトペーパーのダウンロード数
  • リターゲティング広告のCPA

施策を行った前後で上記のような数値を比較し、狙った通りの成果が得られているか確認しましょう。KPIが未達の場合は施策の内容を見直す必要があります。

ナーチャリングでリードや既存顧客の興味度を高めよう

ナーチャリングは、見込み顧客や既存顧客を育成するための施策です。ターゲットユーザーに役立つ情報を提供することで、商品やサービスへの興味度が高まるでしょう。

営業の成約率や顧客単価の向上、解約の防止などに取り組みたい方は、ナーチャリングの実施を検討してみてはいかがでしょうか。

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