リードナーチャリングとは「顧客育成」を意味するマーケティング手法で、既存リードの引き上げを目的としています。

特に検討期間の長いBtoB企業では継続的なアプローチが受注と失注を分ける大きな要因となるため、リードナーチャリングは必須の手法です。

しかし、リードナーチャリングに初めて取り組むことになったマーケティング担当者は具体的に何をすれば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。この記事ではこれからリードナーチャリングに取り組む担当者へ向けて、必要な知識や具体的な手法をご紹介します。

目次

  1. リードナーチャリングとは
  2. BtoBマーケティングの3つの流れ
  3. リードナーチャリングはなぜ必要?
  4. リードナーチャリングのメリット
  5. リードナーチャリングのデメリット
  6. リードナーチャリングの代表的な6つの手法
  7. リードナーチャリングを実践する5つのプロセス
  8. まずはリードナーチャリングをはじめてみよう

リードナーチャリングとは

リードナーチャリングとは、獲得した見込み顧客に対する段階的なアプローチによって購入意欲を高め、将来的な受注につなげるマーケティング手法のことです。特に購入までの検討に時間をかける商品では、有効だとされています。

BtoBマーケティングの3つの流れ

一般的なマーケティングの流れは、以下3つです。

  • リードジェネレーション
  • リードナーチャリング
  • リードクオリフィケーション

それぞれについて解説します。

リードジェネレーション

リードジェネレーションとは、リードを獲得するための活動のことです。展示会やセミナー、オフラインでの名刺交換、アンケート、オンラインでの資料請求、ホワイトペーパーダウンロードなどを通して獲得することが多いといえます。

リードナーチャリング

リードナーチャリングとは、獲得したリードを育成することです。段階的なアプローチを行い、購買意欲を高めます。

リードクオリフィケーション

リードクオリフィケーションとは、リードナーチャリングを行っている顧客のうち、特に購入意欲が高いリードのみ選別することです。

例えば、メール開封や資料請求などの行動を数値化し、より確度の高い顧客へアプローチすれば、営業活動の生産性を高められます。

リードナーチャリングはなぜ必要?

ここでは、リードナーチャリングはなぜ必要なのか、以下3つの視点から解説します。

  • 顧客の行動変化に対応するため
  • 見込み顧客の機会損失を防ぐため
  • 休眠顧客からの受注率を上げるため

顧客の行動変化に対応するため

近年、急速なデジタル化によって、顧客は自ら情報収集し、よりよいサービスを見つけられるようになっています。企業はできるだけ早く関係性を築き、自社商品やサービスをアピールする必要があります。

見込み顧客の機会損失を防ぐため

リードナーチャリングは新規リード獲得に比べると効果が見えにくいため、新規リード獲得をするといいのではと考える方もいるかもしれません。

しかし、特にBtoB企業においてリードナーチャリングは不可欠です。BtoB企業の場合、商材の単価が高く、購入までのプロセスが長期化しやすいといった特徴があるため、商談後も継続的にアプローチをしなければ検討土台から落ちてしまうこともあります。

また、BtoCに比べ母数が少なく、新規リード獲得だけではリードが枯渇してしまうことも考えられるでしょう。BtoB企業は案件化までの時間がかかるため、顧客一人一人との長期的な関わりを大切にしなければなりません。

休眠顧客からの受注率を上げるため

休眠顧客からの受注率を上げるためにも、リードナーチャリングが必要です。休眠顧客とは、過去にやり取りしたものの、契約に結びつかず放置してしまっている顧客のことです。

休眠顧客は、自社商品やサービスには理解があるため、的確なアプローチによって有料顧客となる可能性が高いと言えるでしょう。

また、以下のような調査結果も出ています。

フォローを辞めてしまった顧客の80%が2年以内に競合企業からサービスを購入している
(出典:Sirius Decision)

ナーチャリングされたリードは、そうでないリードより47%も購入確率が高い
(出典:The Annuitas Group)

図_ナーチャ1.png

このような理由から新規リード獲得だけでなく、ナーチャリングも重要なマーケティング施策の一つと言えます。

リードナーチャリングのメリット

リードナーチャリングのメリットとして、次の3つが挙げられます。

機会損失を防げる

リードナーチャリングにおけるメリットの1つは、顧客との機会損失を防げることです。BtoB営業において、案件化できる顧客はごく一部に限られます。確度の高い見込み顧客を優先している間に、既存顧客が他社に流出してしまうリスクがあります。

リードナーチャリングによって長期的に顧客と接点を持ち、的確なアプローチをすることで、顧客との機会損失を防げるでしょう。

営業活動の効率化が図れる

リードナーチャリングは、テレアポや訪問営業のように、一件一件電話をかけたり、営業先へ足を運んだりする工数を減らせるため、営業活動の効率化が図れます。

また、受注確度の高い顧客にアプローチするため、受注率の向上も期待できるでしょう。

リードナーチャリングのメリット.png

顧客データを活用できる

リードナーチャリングでは、休眠顧客や既存顧客データを活用できるため、新規顧客を開拓するための工数をカットできます。

顧客データを活用し、継続的なアプローチを行えば、既存顧客や休眠顧客との関係性が築かれ、長期的な利益につながりやすくなるでしょう。

リードナーチャリングのデメリット

リードナーチャリングにはメリットがある反面、次のようなデメリットがあります。

結果が出るまで時間がかかる

リードナーチャリングは、中長期的な活動によって効果を発揮します。

さまざまなアプローチを行い、徐々に顧客の見込み度合いを高めていくため、結果が出るまで時間がかかることを念頭に入れておくと良いでしょう。

リソースの確保が必要

リードナーチャリングには、顧客情報の管理、施策の実行・改善、マーケティング活動の記録などを行うためのリソースの確保が必要です。

人的リソースが不足している場合は、ITツールの導入を検討する必要があるでしょう。

事前集客が必要

リードナーチャリングを行ううえで、全ての顧客の見込み度合いを高められるわけではないため、事前集客が必要となります。

顧客数が少ない場合は、ナーチャリングの前にリードジェネレーションでのリード獲得に力を入れましょう。

リードナーチャリングの代表的な6つの手法

リードナーチャリングの代表的な手法には、以下の6つがあります。

リードナーチャリング6つの手法.png

メール

メールによるリードナーチャリングの手法には、ステップメールセグメントメールの2つがあります。

ステップメールとは、見込み顧客に対し、段階的にメールを配信する手法です。特定の商品やサービスに興味を持っている顧客に、知識や情報を週に2回送る、という使い方ができます。

セグメントメールは、特定の属性の人に対してメールを配信する手法です。例えば、メール内のURLをクリックした人だけに特定の情報を送るという使い方ができます。

メールを使った手法は、メールアドレスだけではじめられ、幅広い層にアプローチできます。クリック率や開封率効果測定しやすいのも魅力のひとつです。また、見込み顧客の興味や関心に応じた内容を配信するため、購入意欲を高められるでしょう。

SNS

SNSは、企業と顧客との距離が近く、気軽にやり取りできる点がメリットです。アカウント開設のハードルも低く、リードナーチャリングをはじめやすいでしょう。

TwitterやInstagram、Facebookから自社ターゲットに適したSNSを選んで情報発信するのがおすすめです。ただし、顧客獲得までには時間がかかるため、長期的な視点で取り組む必要があります。

オウンドメディア

自社で運営するオウンドメディアで顧客に有益な情報を提供することで、ファン化や育成が期待できます。記事だけでなく、ダウンロード資料であるホワイトペーパーや動画など、質の高い情報を伝えることが可能です。

オウンドメディア運営には、SEOの知識Webマーケティングに関する知識が必要不可欠です。SNS同様、顧客獲得まで長期的に取り組む必要があります。

セミナー

セミナーを使った手法は、メールやSNS、オウンドメディアと違い、対面でのコミュニケーションが可能です。セミナーに参加するのは、ある程度自社商品やサービスに興味がある人なので、結果を出しやすい手法だと言えるでしょう。

直接対面のオフラインだけでなく、ウェビナーなどのオンラインセミナーも開催できます。

リターゲティング広告

リターゲティング広告は、自社サイトへ訪問した顧客が他のサイトを閲覧中にも広告表示して再訪を促す方法です。

潜在顧客へのリーチや認知度向上を目的とし、Web上でくり返しアプローチすることで顧客の関心を高められます。

MAツールの活用

MA(マーケティングオートメーション)ツールは、新規顧客の獲得におけるマーケティング活動を自動化・効率化するツールのことです。

見込み顧客の属性別にメールを自動配信したり、オウンドメディアへのアクセスログなどを可視化し、営業活動の効率化が実現できます。

リードナーチャリングを実践する5つのプロセス

リードナーチャリングは以下のように進めます。

  1. 見込み顧客の情報を一元化する
  2. リードのフェーズを管理する
  3. ナーチャリングフローを決める
  4. どのフェーズからナーチャリングをはじめるか決める
  5. フェーズに合わせたナーチャリング・フォローを行う

見込み顧客の情報を一元化する

まずは、見込み顧客の情報を一元化しましょう。展示会やセミナーなどでもらった名刺や、問合せフォームから取得した顧客情報などを整理します。一元化することで、リストの重複や情報の漏れを防ぐことができるでしょう。

リードのフェーズを管理する

一元化した情報をもとに、リードのフェーズ管理を行いましょう。

フェーズ管理とは、リードを「自社サービスを認知している段階」~「商談」のような段階に分け、それぞれに対して一つ上のフェーズに上げられるようにアプローチを行うことを指します。

下表は一般的なリードフェーズの判定条件をまとめたものです。
図_ナーチャ2.png

どのようなリードフェーズの方法が良いかはマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスで話し合うと良いでしょう。

ナーチャリングフローを決める

リードフェーズの管理方法が決まったら、それぞれのフェーズに対し、どのようなアプローチを行うかを決めましょう。

ナーチャリングフローを決めることで「電話やメールがつながらないままのMQL」や「商談獲得したが検討時期がまだ先だった」という状況を避けられます。その結果、リードを一つ上のフェーズへ引き上げられる可能性が高まります。

例えば下図のようなフローを決めれば、上のフェーズに引き上げができた場合とできなかった場合のアプローチがを明確になります。

図_ナーチャ3.png

ナーチャリングのフローも、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスで話し合いましょう。

どのフェーズからナーチャリングをはじめるか決める

次に、どのフェーズからナーチャリング施策の検討と実施をしていくのかを決めます。効果が出やすい受注に近いところから行うのが鉄則です。

先ほどの図の場合は「有効リード→商談」への引き上げが最初にはじめる施策となります。

フェーズに合わせたナーチャリング・フォローを行う

全てのフェーズで同じナーチャリング方法をしても「興味のないメールマガジンが届く」「情報収集しただけなのに何回も営業電話がかかってくる」と感じられてしまいます。

そのため、フェーズに合わせたナーチャリングが必要です。ここからは、下図をもとにフェーズに合わせた施策をご紹介します。

図_ナーチャ4.png

● ①比較・検討層をキャッチする

1つ目は、過去に資料ダウンロードをしたまま、商談には至っていないリードへのフォローです。以下のような状況が考えられます。

ツール導入のため情報収集で資料ダウンロードをした
↓
社内で複数ツールの検討中のため商談をするまでではなかった
↓
ある程度検討ツールが絞れたため、具体的な検討を開始し、自社サイトを再訪問

このような状況でフォローを行わないと他社ツールの検討度合いが高まる可能性があります。

まずは、比較・検討層が自社サイトを再訪問した場合に通知が飛ぶなどの設定をマーケティングオートメーションツールで行いましょう。

● ②名刺・過去商談の活用

2つ目は、過去商談しているのにそのまま停滞してしまっているリードへのフォローです。この場合は商談後に新ツールの導入時期が延期されてしまい、その後再検討が始まった場合などが考えられます。

自社サイトの再訪問で通知が飛ぶなどの設定を行い、再検討の時期にきちんとフォローできる体制を整えましょう。

● ③製品ウェビナーからの引き上げ

製品ウェビナーなど、比較的温度感の高いウェビナーに参加しているにも関わらず商談につながらない場合、はどこでつまずいているのかを明確にしましょう。

下図のように、ウェビナーから商談獲得までの流れを分解すれば、原因が特定できます。

ウェビナーから商談獲得までの流れ.jpg

例えば、フォロー数が少ない場合はフォロー条件の見直し、応答率が低い場合はトークスクリプトの見直しを行い、引き上げ数・率の改善を狙います。

まずはリードナーチャリングをはじめてみよう

リードナーチャリングを行うことで、獲得した見込み顧客へ段階的なアプローチを行い、将来的な受注の可能性を高められます。今回ご紹介した代表的な手法を用いて、リードナーチャリングをぜひはじめてみましょう。

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