マーケティングの担当者として、より深い学習を行うには数々の理論を提唱している著名な人物はおさえておきたいところです。
理論を断片的に学ぶのではなく、提唱した人と結びつけて学ぶことで「なぜこの理論にいたったのか」といった背景も把握できるでしょう。
しかし、マーケティング理論に関わる書籍を読むのは時間がかかってしまい、なかなか体系的な学習ができていない方も多いのではないでしょうか。

今回は著名なマーケティング学者3名とその功績を紹介します。
フィリップコトラー氏をはじめとして、マーケティングに関わるビジネスパーソンなら知っておきたい著名人ばかりですので、ぜひこの機会に学びましょう。

フィリップ・コトラー(Philip Kotler)

1931年アメリカ生まれのマーケティング学者であり、マーケティングという分野においてもっとも有名な人物の1人です。

現在では、ノースウェスタン大学に所在するビジネススクール・ケロッグ経営大学院の教授を勤めており、その著作は同スクールの教科書としても採用されています。

マーケティングとは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終ゴール。」という発言からもわかる通り、マーケティングを経営そのものと結びついたものにまで高めた人物と言えるでしょう。

マーケティングにおいてコトラー氏の功績は大変大きく、代表的なものとしては以下のような功績が挙げられます。

1.マーケティングを体系化したこと
2.STP分析を提唱したこと
3.ソーシャルマーケティングを確立したこと

それぞれについて詳しく見てみましょう。

1.マーケティングを体系化したこと

コトラー氏は代表作『マーケティングマネージメント』で、マーケティングという言葉の定義やフレームワーク、目標設定の方法といった内容に対して、章立ててて説明を行っています。

著作の発表後も度々編纂を行い、最新のマーケティング情報も同様に体系立てて説明しています。断片的だったマーケティングの研究をまとめ、学問分野として確立したことは大きな功績でしょう。

2.STPを提唱したこと

STPとは、セグメンテーション・ターゲットセグメント・ポジショニングの3つの頭文字を取ったものであり、マーケティングにおける基本的なフレームワークとして用いられてきました。

STPでは市場にいる顧客を属性や性質によってセグメンテーションし、そのなかでも自社が狙うべきターゲットを設定します。その上で、市場においてライバルとの位置関係を知り、自社に取って最適なポジショニングをとるというものです。

この時設定したターゲットやポジショニングは、あらゆるマーケティング施策の土台となって機能します。

3.ソーシャルマーケティングを確立したこと

ソーシャルマーケティングは、利益中心のマーケティングに対して、社会との関わり重視するマーケティングの考え方です。

NPOや病院、大学などの教育機関などで、この考え方は浸透しつつあります。
また、CSRマーケティングやコーズマーケティングといっ、新たなマーケティング手法にまで派生しています。

参考:
【今さら聞けない!?】コトラーが提唱するマーケティング3.0と、 その先のマーケティング4.0における戦略とは?
コトラー博士の最も偉大な3つの功績
[マーケティングとは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終ゴール。|日経ビジネスONLINE]
(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141104/273335/)

ピーター・ドラッカー(Peter Drucker)

1909年、オーストリア・ウィーン生まれの経営学者であるドラッカー氏の名前を聞いたことがある方は多いでしょう。
経営マネジメントの権威であり、『会社という概念』や『マネジメント』『プロフェッショナルの条件』など数多くの著作を出版しています。

ドラッカー氏は顧客創造につながるイノベーションとマーケティングこそが企業の基本的な活動であり、その他の行動はすべてコストである述べています。

マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」という言葉にもある通り、自然と売れる状態を作ることがマーケティングとしています。

そのためには、今取引をしている顧客だけでなく、取引をしていないノンカスタマーから何を欲しているのか、どのような点を価値としているのかを知る必要があるとしました。

参考:
[ドラッカーが語ったマーケティングとイノベーションの関係|日経ビジネスONLINE]
(http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130827/252649/?rt=nocnt)
[マーケティングの理想は販売を不要にすることである|ダイヤモンド社書籍オンライン]
(http://diamond.jp/articles/-/16444)

セオドア・レビット(Theodore Levitt)

セオドア・レビットは1925年にドイツで生まれの学者で、長年ハーバード大学大学院の教授を勤めました。

マーケティングの格言として有名な「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」という言葉が広がるきっかけとなった人物でもあります。

この格言はドリルを売りたいがためにプロダクトアウト(売り手都合)な発想になりがちな企業に対して、マーケットイン(買い手都合)の発想に転換する必要を問いかけている格言と言えるでしょう。

それだけでなく、レビット氏には以下のような功績も挙げられます。

 1.「マーケティング近視眼」という概念を発表したこと
 2.製造業のサービス化を予見したこと
3.顧客管理の重要性を説いたこと

それぞれ詳しく見てみましょう。

1.「マーケティング近視眼」という概念を指摘したこと

マーケティング近視眼とは、企業が今目の前にしている事象だけに目を向け、社会から見て自社がどのような立ち位置にあるのかを見誤ってしまうことを指します。

レビット氏はこの概念について、ハーバードビジネスレビュー誌に発表した論文「マーケティング近視眼」で説明しました。

では、具体的にはどのような状況が「マーケティング近視眼」として挙げられるのでしょうか。
レビット氏は一例として、アメリカにおける鉄道の衰退を挙げています。

鉄道会社は自社を輸送業者ではなく、鉄道業者と定義してしまったことで、バスや飛行機などの輸送業者から遅れを取り、結果として衰退していると指摘しました。

2.製造業のサービス化を予見したこと

現在ではパソコンや家電、工場用機械などのメーカーにとって、購入した顧客へのアフターケアは当たり前のものとなっています。むしろ商品の品質よりも、修理や交換品への対応といったサービスを魅力だと感じる顧客も多いでしょう。

レビット氏は、1960年から「ほとんどの工業製品の中核的価値はサービスによってもたらされる」として、商品そのものとサービスの関係が逆転する可能性を予見していました。

製造業におけるサービスは単なる付加価値だとされていた当時から見て、先見の明のある指摘だと言えるでしょう。

3.顧客管理の重要性を説いたこと

リードナーチャリングという言葉を聞いたことはあるでしょうか。
リードナーチャリングとは、見込み客と継続的な関係を持ち、徐々に購買意欲を上げることによって実際の購入に結び付ける活動を指します。

こういった見込み顧客の育成において、顧客情報の管理は大変重要でしょう。

レビット氏は、現代のマーケティングでは一般的な「顧客管理」の必要性を説いた人物でもあります。
1983年に発表した「After the Sales is Over・・・」という論文の中で、契約や発注は顧客との長い関係の始まりであり、その後の関係をどのように構築するかが重要であると指摘しました。

CRMやSFAといった顧客管理に関わるツールがマーケティングの手法として普及した背景には、レビット氏の功績があると言えるでしょう。

参考:
[今こそ学びたい、T・レビット博士の歴史的な名論文「マーケティング近視眼」]
(http://marketing-campus.jp/lecture/noyan/066.html)
[[ノヤン先生のマーケティング学]コトラー、ロジャース、レヴィット、ムーア ~ 巨匠たちの教えは現代のマーケティングにいかに「実装」されているか?]
(http://www.hitachi.co.jp/products/it/it-pf/mag/bba/02/)
[セオドア・レビット 偉大なるマーケティング界の巨人]
(http://marketing-campus.jp/lecture/noyan/033.html)

まとめ

マーケティングという学問分野は近現代以降に本格的に研究が始まった、比較的若い学問です。

マーケティングにおいてもっとも著名な人物の1人としては、フィリップ・コトラー氏が挙げられるでしょう。STP分析や競争地位戦略といった理論を提唱しただけでなく、マーケティングそのものを体系化したのも大きな功績です。

また、T.レビット氏は「マーケティング近視眼」という考え方も、企業の衰退に気づく上でおさえておきたい考え方でしょう。その示唆的な指摘は現在でも通じるものが多く、マーケティング担当者としても学んでおきたい人物です。

今回紹介した3名だけでなく、マーケティングの理論を提唱した著名な人物はまだいます。
後編ではさらに掘り下げてご紹介するので、ぜひそちらも合わせて参照してください。

参考:
マーケティングで教えていること|名古屋商科大学ビジネススクール