UberEATSというデリバリーアプリが注目を集めています。

Uber自体は自動車配車のWebサイトおよびアプリとして世界中で使われています。
Uberは一般的なタクシーだけでなく、一般人が自分の空き時間に自家用車を使って他人を運ぶ仕組を導入しており、人を運ぶ手段において既存の枠組みを超えたアイデアを具現化しています。

そのUberが昨年始めたのがUberEATSというサービスで、宅配員が人気レストランの料理を時間内に届けてくれるサービスです。
Uberアプリと同じように、ユーザーはUberEATSアプリを立ち上げて必要事項を入力し、数回タップするだけで、あっという間に出来上がった料理が自宅に届きます。

現在は東京都の一部地域を中心に利用が可能なので、まだ広くサービスは展開されていませんが、それでもこれまでの電話で行うデリバリーサービスと比べると非常に革新的です。
ホームページにも、100を超える素敵なレストランの豊富なラインナップ、平均して30分程度の素早い配達、チップ不要で事前に登録したアカウントから決済、といった便利な特徴が並びます。

「コンビニに出向く代わりにアプリを開く」という行動が、今後ますます一般的になるでしょう。
実は、UberEATSのこうした革新的な(かつ他の競合に真似されにくい)アイデアは、UberやUberEATSの「エコシステム」にこそ隠されていたのです。

今回は、UberEATSアプリで学ぶ「エコシステムデザイン」を4つの観点からご紹介します。
「エコシステムをデザインする」という概念を学ぶと、UberEATSが単なる宅配サービスではないと感じるかもしれません。

広がるUberEATS

UberEATSは、人々が可能な限り労力をかけずにおいしいものを食べることができるように料理のデリバリーをスマートフォンアプリを通じて行うサービスです。
すでに世界中の80都市以上で展開されており、これからますますその利用可能な範囲が’広がります。

サービスを利用するユーザー側の視点で見れば、食事の方法に関する便利な選択肢が増えた、ということになります。
しかし、他の視点も取り入れて俯瞰的に見てみると、UberEATSというサービスが非常に合理的なサービスであることがご理解いただけると思います。

1. UberEATSの「エコシステム」とは?

UberEATSには、4種類の当事者がいます。
「UberEATS」「ユーザー」「レストラン」「デリバリーパートナー」の4つです。

UberEATSでは、ユーザーが食事をとる際に便利な選択肢が増える、という点ばかりにスポットライトが当たりますが、それだけではありません。
レストラン側からしてみれば、店に客が入るだけでなく、デリバリーの選択肢が増えることで、新しい顧客にリーチすることができます。

しかし、デリバリーをしようと思っても、ランチタイムは人手不足であることが多く、実質的にデリバリーに回す人員がありません。
そこで登場するのが、デリバリーパートナーです。

デリバリーパートナーは、車を所有しているかどうかに関係なく、お金を稼ぐ手段を手に入れられるようになります。
特別な雇用形態ではなく、独立した事業主としてデリバリーに参入することができるのです。

UberEATSは、そうした人々を結びつける役割を担っています。
それぞれの当事者たちは、直接お金のやりとりをする必要はなく、アプリ上でシームレスに行うことができます。
こうした経済圏の創出こそが、UberEATSが担っている役割と呼ぶことができます。

2. それぞれの当事者にはそれぞれの役割を

Uberのデザインチームは、様々なタイプの人々が様々なニーズを抱えているのを注目して、アプリを設計しています。

例えば、UberEATSを利用するユーザーは注文してからできるだけ早く届けてほしいと思っているので、いまどこにデリバリーパートナーがいるかを地図で表示できるようになっています。

レストラン側のアプリは、注文が入ったらすぐにわかるようなアプリのデザインになっており、過去の売上情報なども簡単に閲覧することができます。

一方、デリバリーパートナーは、正しい経路と、配達までの残り時間を正しく把握しておくことが重要です。
そのため、デリバリーパートナーが見ている地図はユーザーが見ている地図とは違って、交通情報がすぐに理解できるような工夫が施されています。

3つのアプリは、それぞれに独立していますが、すべての一つひとつの注文に対して連携する瞬間があります。
東京都在住港区のAさんが注文をしたら、六本木のレストランB店が注文を受け、それをデリバリーパートナーのCさんが配達の承諾をします。
単にアプリを提供するだけでなく、異なるアプリ同士が一時的なオペレーションチームを組んでミッションをやり遂げていく、このスタイルこそ、UberEATSの醍醐味です。

3. UberEATSの客は誰か?

次に考えていきたいトピックは、「UberEATSの客」とは果たしで誰なのか、ということです。

当然のことながら、アプリで料理の注文をする「ユーザー」です。
ユーザーはUberブランドを通じて料理の提供を待っており、素早いデリバリーと美味しい食事を楽しみます。

しかし、UberEATSの真のお客さんは、レストランです。
自慢の料理をより多くのユーザーに届けるだけでなく、混雑時には柔軟な対応が行い、注文の受付、宅配や支払いなど、デリバリーの面倒ごとはすべてUberEATSが引き受けてくれます。
また、UberEATS側は、レストランをサポートするために、初期設定やメニューのプロモーション、配達時間の効率化などを担ってくれます。
万が一の際にも、電話を通していつでも連絡をすることができます。

そして、忘れてはいけない、デリバリーパートナーも、ある種のお客様と言えるかもしれません。
お金を稼ぐためのフレキシブルな手段を主力商品として、協業しながらもサービスを提供しています。

デジタルとリアルの世界の間で、さまざまな種類の人々を繋ぐのが、このUberEATSです。
UberEATSのデザイナーは役割ごとにまったく違ったアプリをデザインしていますが、それこそがUberEATSの「サービス」とも言えます。

4. それぞれのマーケットの声を聞く

それぞれ全く異なる3つの接点をつないでいる、というのは、言うのは簡単ですが、実際に行うことは非常に難しいものです。
オフィスの中でデザインチームが議論を行うだけでなく、UberEATSのデザイナーやディレクターたちは、実際にUberEATSが展開されている都市に出向いて、フィールドワークを行います。

スピードこそが重要です。
ビジネスにおいては、実際の生の声を聞き、それを即座に反映させることが重要です。
ニューヨークやサンフランシスコのUberEATSチームは、実際にバンコクやロンドンに行って、実際に都市の中を移動してみたり、食べ物の文化を体感してみたり、UberEATSをどのように使っているかを観察したりしています。

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▲ 世界各地へ行くUberEATSのスタッフ (Source: UberEATS)

こうした「ウォークアバウト」と呼んでいるUberEATSの取り組みは、今では欠かすことのできない仕事となっています。
直接パートナーやレストランの従業員、ユーザーへのインタビューを行って、今度は彼らが持っているアイデアをシェアしたりします。

カスタマーから直接感想を聞き取る「ファイヤーサイド・チャット」と呼ばれるものも、UberEATSを構築する上で欠かすことができません。
デリバリーパートナーやレストランの従業員、ユーザーをUberEATSのオフィスへ招いて、さまざまなセッションを行います。
こうした異なる接点を実際につなぐことで、見えてこなかった課題が明確になり、UberEATSアプリに即座に反映されるのです。

まとめ

これまで全く異なる経済圏にいた人々を、UberEATSは繋ごうとしています。
単なるデリバリーのプラットフォームとは異なり、UberEATSはそれぞれの夢を叶えるためのプラットフォームと言うことすらできます。

これは、Uberも同じことが言えます。
Uberはドライバーとユーザーの2点を繋ぐだけではありますが、これまで出会わなかった人々がそれぞれの夢を叶えるためのプラットフォームとして見てみるとどうでしょうか。

新しいビジネスモデルを創出するときに、UberEATSのモデルは大変参考になるでしょう。
ぜひ、よいところはどんどん取り入れて、あらゆる人に愛されるビジネスモデルを作っていきましょう。