2. それぞれの当事者にはそれぞれの役割を

Uberのデザインチームは、様々なタイプの人々が様々なニーズを抱えているのを注目して、アプリを設計しています。

例えば、UberEATSを利用するユーザーは注文してからできるだけ早く届けてほしいと思っているので、いまどこにデリバリーパートナーがいるかを地図で表示できるようになっています。

レストラン側のアプリは、注文が入ったらすぐにわかるようなアプリのデザインになっており、過去の売上情報なども簡単に閲覧することができます。

一方、デリバリーパートナーは、正しい経路と、配達までの残り時間を正しく把握しておくことが重要です。
そのため、デリバリーパートナーが見ている地図はユーザーが見ている地図とは違って、交通情報がすぐに理解できるような工夫が施されています。

3つのアプリは、それぞれに独立していますが、すべての一つひとつの注文に対して連携する瞬間があります。
東京都在住港区のAさんが注文をしたら、六本木のレストランB店が注文を受け、それをデリバリーパートナーのCさんが配達の承諾をします。
単にアプリを提供するだけでなく、異なるアプリ同士が一時的なオペレーションチームを組んでミッションをやり遂げていく、このスタイルこそ、UberEATSの醍醐味です。

3. UberEATSの客は誰か?

次に考えていきたいトピックは、「UberEATSの客」とは果たしで誰なのか、ということです。

当然のことながら、アプリで料理の注文をする「ユーザー」です。
ユーザーはUberブランドを通じて料理の提供を待っており、素早いデリバリーと美味しい食事を楽しみます。

しかし、UberEATSの真のお客さんは、レストランです。
自慢の料理をより多くのユーザーに届けるだけでなく、混雑時には柔軟な対応が行い、注文の受付、宅配や支払いなど、デリバリーの面倒ごとはすべてUberEATSが引き受けてくれます。
また、UberEATS側は、レストランをサポートするために、初期設定やメニューのプロモーション、配達時間の効率化などを担ってくれます。
万が一の際にも、電話を通していつでも連絡をすることができます。

そして、忘れてはいけない、デリバリーパートナーも、ある種のお客様と言えるかもしれません。
お金を稼ぐためのフレキシブルな手段を主力商品として、協業しながらもサービスを提供しています。

デジタルとリアルの世界の間で、さまざまな種類の人々を繋ぐのが、このUberEATSです。
UberEATSのデザイナーは役割ごとにまったく違ったアプリをデザインしていますが、それこそがUberEATSの「サービス」とも言えます。

4. それぞれのマーケットの声を聞く

それぞれ全く異なる3つの接点をつないでいる、というのは、言うのは簡単ですが、実際に行うことは非常に難しいものです。
オフィスの中でデザインチームが議論を行うだけでなく、UberEATSのデザイナーやディレクターたちは、実際にUberEATSが展開されている都市に出向いて、フィールドワークを行います。

スピードこそが重要です。
ビジネスにおいては、実際の生の声を聞き、それを即座に反映させることが重要です。
ニューヨークやサンフランシスコのUberEATSチームは、実際にバンコクやロンドンに行って、実際に都市の中を移動してみたり、食べ物の文化を体感してみたり、UberEATSをどのように使っているかを観察したりしています。

uber.png
▲ 世界各地へ行くUberEATSのスタッフ (Source: UberEATS)

こうした*「ウォークアバウト」*と呼んでいるUberEATSの取り組みは、今では欠かすことのできない仕事となっています。
直接パートナーやレストランの従業員、ユーザーへのインタビューを行って、今度は彼らが持っているアイデアをシェアしたりします。

カスタマーから直接感想を聞き取る*「ファイヤーサイド・チャット」*と呼ばれるものも、UberEATSを構築する上で欠かすことができません。
デリバリーパートナーやレストランの従業員、ユーザーをUberEATSのオフィスへ招いて、さまざまなセッションを行います。
こうした異なる接点を実際につなぐことで、見えてこなかった課題が明確になり、UberEATSアプリに即座に反映されるのです。