ホームページやSNSの運用においては、ただ施策を計画・実行するだけでなく、効果測定を行い、改善へとつなげていくことが大切です。
この一連の流れを*「PDCA」*と言い、普段の業務の中に取り入れている方も多いのではないでしょうか。

ですが、実際にPDCAを継続していくと、思った通りの成果が得られなかったり、チェックされないまま次の施策に進んでしまったりといったこともあるかもしれません。
では、PDCAサイクルを回すのに、押さえておきたいポイントには何があるのでしょうか。

今回は、ISO14001から学ぶ、PDCAマネジメントのポイントを解説します。
ISO14001とは製造業を中心に用いられている世界的規格であり、PDCAマネジメント自体を枠組みとしてまとめていることが特徴です。

*「PDCAがまわる指標の立て方がわからない」「PDCAを回すのに時間がかかり過ぎてしまう」*といった悩みを解決するためのヒントになるので、ぜひ参考にしてみてください。

ISO14001とは

ISO14001とは、環境保全のためのマネジメントで守るべきルールを規格として定めたものです。

規格というと、ペットボトルのキャップのサイズや車のタイヤに用いるべきゴムの種類など製品の仕様を定めたものだと認識している方も多いかもしれません。

ISO14001はそういった製品の仕様だけでなく、PDCAを土台とした環境保全のための管理システムを規格として定めているのが特徴です。

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例えば、コンビニ向けの弁当を製造している食品加工会社を想定して考えてみましょう。

食品加工会社では、仕入れた野菜を加工した際に野菜のごみがでます。そのまま廃棄してしまったら、工場から排出されるごみの削減には繋がらないでしょう。

この場合、ごみの削減を目指すためのマネジメントシステムは以下のようになります。

 【Plan】野菜ゴミのうち2割を堆肥にするため、生ゴミ処理機を上期までに購入する。今年度中排出する野菜ゴミの量を前年比20%減少させる。
 【Do】生ゴミ処理機の購入。生ゴミ処理のため作業スタッフを割りあてる。
 【Check】年度末にごみの削減量を集計。前年比を算出する。
【Act】経営層による資料の確認、フィードバック。来年度は堆肥を野菜仕入れ先に販売するなど自社の関連業者内で資源を循環させる仕組みを作るよう計画立てる。

ISOの審査では、このようなマネジメントシステムが正しく循環しているかをチェックされます。ISO14001はPDCAの基本をおさえた規格です。
そのため、法務やCSRの担当者以外でも、普段の業務でPDCAをまわしたいと考えている方にとって参考となるでしょう。

参考:
ISO14001|環境省
‪品質保証のために知っておきたい3つの規格認証制度を紹介[JIS、ISO、IEC]|ferret [フェレット]

ISO14001から学べるPDCAマネジメント3つのポイント

ISO140001ではPDCAサイクルをまわすための円滑なマネジメント方法が定められています。
では具体的に、どういった工夫がされているのでしょうか。3つのポイントを見てみましょう。

1.役割と責任の所在を明確にする

ISO14001では、環境管理統括者や事務局といった役割を割りあてるよう定められています。

以下のとおり、システム確立のための役割を定めている。
1) 最高経営層:大臣、副大臣及び大臣政務官
2)環境管理統括者:事務次官
3)部局長会議:官房長及び部局長
4)部局環境管理責任者:大臣官房各課長及び各局部総括課長
5)部局環境管理推進員:官房各課及び各局部総括課庶務担当補佐
6)環境推進員:各課室庶務担当補佐
7)内部監査統括責任者:総合環境政策局環境計画課長
8)ISO事務局長:大臣官房会計課長
引用:環境省のISO14001認証取得について|環境省

例えば、環境省ではISO14001の取得にあたって、上記のように役割ごとに具体的な役職者を定めています。
特に新しく行う業務については担当者を決めないまま、実行に移してしまうこともあるでしょう。ですが、担当者のいない施策は誰も責任を持たないため、実行はできてもその後の効果測定や改善にはつながりません。

計画の段階で役割ごとに担当者を割り振り、業務がストップしないようにしましょう。

また、ISO14001では施策を実施するスタッフとは異なる経営層による見直しが入るのも特徴です。通常の業務においても、運用側とチェック側の組織を分けることで、見直しの精度が高まります。業務に関わるメンバーだけでは見えてこない欠点も、他の組織なら気づくかもしれません。

2.課題と適応していて、容易に理解・比較ができる、検証可能な目標を立てる

何か新しい施策を行う際には、その施策の成果が出たかどうかを測るためあらかじめ目標を立てておきます。
ですが、やみくもな目標では正しい効果測定には繋がらないでしょう。

ISO14001では目標を立てる際には、以下の4つの点を意識するように定められています。

 ・課題と適応している
 ・容易に理解できる
・容易に比較できる
 ・検証可能である

例えば、ホームページへのアクセスを増やすため、Facebookページを開設して集客をはかる場合の目標を考えてみましょう。

【誤った目標】Facebookページで投稿を行い、自社ホームページへのアクセス数を増やす
 【正しい目標】Facebookページ開設から3ヶ月間のGoogleアナリティクスの数値を計測し、10月には自社ホームページの月間セッション数を300から500にする。

誤った目標では、ホームページへのアクセス数を増やすというだけで、具体的な数値がわからず、検証する方法もわかりません。
一方、正しい目標では「Googleアナリティクスで計測した月間セッション数」という、検証可能で誰でも理解・比較ができる内容となってます。

計画段階で立てた目標が曖昧では、実際に施策を行っても成果がいまいちわからないままになってしまいます。計測が行えるかどうか、また誰でも間違いなく理解・比較できる内容になっているかを考えて目標設定しましょう。

参考:
[事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン|環境省]
(https://www.env.go.jp/policy/report/h15-01/all.pdf)

3.情報共有・相談の場所も明確に決めておく

ISO14001では外部・内部とコミュニケーションをとる方法や頻度を定めておくよう決められています。

*施策を行った後に、どこで施策の成果報告を行うかはあらかじめ決めておくようにしましょう。*具体的には、定例の作業ミーティングや社内掲示板といった場所が挙げられます。

その際には以下の3つのポイントを意識するようにしましょう。

1.対象者とコミュニケーションをとるべき情報を決定する
 2.最適なコミュニケーション方法を決定する
 3.コミュニケーションが取れているか評価し、定期的に判定する

では、実際にどういった内容が考えられるのでしょうか。営業部門の場合、以下のような運用体制が想定できます。

1.共有すべき情報:今週訪問した顧客のうち、どの程度受注できる可能性があるか、その理由を共有する。
 2.最適なコミュニケーション方法:日報に加え、毎週月曜日に上長と30分の面談を行う。
3.コミュニケーションが取れているかの判定:伝達ミスによる失注が発生していないか毎月判定し、失注が発生した場合はコミュニケーションの方法を見直す。

このように情報共有の内容や相談の場所をあらかじめ決めておけば、チェックしないままPDCAサイクルが止まってしまうことを防げます。

参考:
ISO 9001・14001改訂 特設サイト:ISO 14001改訂のポイント | 一般財団法人 日本規格協会
JIS Q 14000ファミリー規格内の参照表コミュニケーションに関する記述