"PlayStation VR" や "Oculus Lift" などのコンシューマー向けVR製品の登場によって、私たちの生活においてVRはごく一般的になりつつあります。さらには、"Google Cardboard" のようなアクセサリーをスマートフォンに付けることで、廉価でVRを体験することができます。

こうした中で、コンテンツの制作競争もますます激化しています。もはやVRコンテンツを作成しているのは"グラフィックスタジオ"や"デジタルエージェンシー"ばかりではなく、この度、ニュース配信を行うイギリスの公共放送BBCも新しいVRに対応したアプリをリリースしました。

そこで今回は、先日BBCがリリースしたVRアプリ「Taster VR」についてご紹介します。

数々のコンテンツを世の中に送り出してきたBBCがリリースしたアプリ「Taster VR」では、どのようなVR体験が可能なのでしょうか。
  

BBC Taster VRとは?

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画像引用元:Tech Chrunch

BBCが7月上旬にリリースしたのが、「BBC Taster VR」と呼ばれるアプリです。こちらは、Android、またはiOSを搭載したモバイル機器で利用することができます。特定のVR機器を必要としている訳ではないので、現在使っているヘッドマウントディスプレイやゴーグルなどで使うことが可能です。

ゴーグルなどがない状態でも、手にスマートフォンを持った状態であれば、傾けたりすることでVRコンテンツを操作することが可能です。
  

それでは、実際に、BBC Taster VRアプリをダウンロードして起動してみるとします。

Taster VRアプリで視聴可能ならコンテンツのリストが表示され、閲覧する際には個別にコンテンツをダウンロードする必要があります。

具体的には「Planet Earth 2 360」と呼ばれる、地球上に生息する野生動物を扱ったドキュメンタリーが用意されており、6つの様々な環境を360度映像で探検することが可能です。また、もう1つの「One Deadly Weekend In America」という人間社会のドキュメンタリー番組では、アメリカの銃社会の危険なエリアをまさに歩いているかのような体験をすることもできます(実際に自分にめがけて銃を撃ってくるシーンもあります)。

そのほか、All Pilotsと呼ばれるリストで、様々なVRコンテンツを楽しむことが可能です。

これらの番組は、360度映像を使っていることはもちろんのこと、バイノーラル録音された音声も取り入れられています。
単に左右のステレオ音源になっているのはなく、あらゆる方向から立体的に音が聞こえてくるので、本当に自分がそこにいるかのような感覚になります。
  

BBC Tasterのバイラル戦略

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画像引用元:Taster VR

ブルータルなデザインを採用しているBBC Tasterのブランディングですが、使い方をシンプルにすることで、バイラルに(口コミで)コンテンツが広がるような工夫がなされています。

例えば、BBC Tasterのホームページで紹介されている基本的な使い方は「Try」「Rate」「Share」に集約されます。
  

Try (観てみよう)

まずはBBCで製作された新しいコンテンツをジャンルに関係なく、見てみることが推奨されています。

実際、BBCはTasterのことを「実験場」だと表現しており、「作り込まれた」コンテンツというよりは、「試しに作ってみた」コンテンツに近いので、たくさんのフィードバックを期待しているのです。
  

Rate (評価しよう)

このプロジェクトを本格的に始動させるのに、ユーザーのフィードバックを期待しています。

とは言っても、VRコンテンツを閲覧したら、その作品に星5つのうちいくつの星をあげてもよいかを評価するだけです。
非常にシンプルで簡単な評価方法かつ、「評価してみよう」と必ずと言っていいほどポップアップが出てくるので、ほとんどの評価がとりこぼされずに蓄積される仕組みになっています。

Share (シェアしよう)

Rateの5つ星評価の部分でコメント機能を付けなかったのは、ある意味でBBC Tasterの戦略であるとも言えます。

このVR作品に何か一言もの申したい時に、BBC Tasterプラットフォーム上ではなく、それぞれが使っているソーシャルメディア上でコメントさせることで、バイラルに広がり、閲覧者をどんどん増やしていく構造が作られています。
  

BBCがVRを展開する意味

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画像引用元:Vrupple

現在、BBC Taster VRで閲覧することができるコンテンツはまだ限られていますが、BBCは今後さらにコンテンツ量を増やそうとしています。
BBCはドキュメンタリー作品やドラマ作品なども手掛けているので、製作コンテンツとしては幅広い品揃えになっていますが、もしこの分野でVRが広がれば、今後は時事ニュースでもVRを使った報道が増えてくるかもしれません。

実際のところ、アメリカのNew York Times誌は、2016年11月にニュースフィードの一部として360度動画を使ったVRストーリーを始めており、第1弾として戦争でボロボロになったイエメンの市街の様子をVR動画で生々しく伝えています。

また、BBC TesterのWebサイトではVRに対応していない作品もチェックすることができますが、この中には「ドクター・フー」などの有名なドラマ作品も並んでいます。BBCが率先してVR界を先導していけば、360度カメラで、まるで自分がその場にいるかのような感覚のドラマが一般に普及するかもしれません。
  

まとめ

個人がVRコンテンツを楽しめる時代が瞬く間に広がっていますが、BBC Taster VRは、そのきっかけを作ってくれそうなアプリケーションです。

現在、まだコンテンツ量は多くはありませんが、今後はラインナップが充実してくるでしょう。

百聞は一見にしかずといいますが、ぜひ自分の身体を使ってBBC Taster VRを身をもって体験してみてください。