OKRとは、Googleやメルカリなど有名企業が導入している目標管理に役立つフレームワークのことです。

この記事ではOKRの基礎知識に加え、KPI・MBOとの違いや具体例について紹介します。OKR導入で失敗しないためのポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. OKRとは?
  2. OKRとKPI、MBOの違い
  3. OKRの構成要素
  4. OKRを活用するメリット
  5. OKRの具体例
  6. OKRの運用ステップ
  7. OKR導入で失敗しないためのポイント
  8. OKRで組織・チームのイノベーションを加速させよう!

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OKRのテンプレート

OKRのテンプレート(Excel形式)です。

OKRとは?

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OKRObjectives and Key Results)とは、Googleなど名だたる企業が取り入れている目標設定のフレームワークのことです。

上図の通り、企業・部門/チーム・個人のOKRはリンクしており、さらに各階層のOKRは組織全体で共有されているのが特徴です。そのため全社でベクトルを揃えやすく、的確な優先順位をつけながら、一定のペースで計画の遂行が行えます。

OKRは定性的な1つの目標O)と、数値などで表す複数の結果指標KR)で構成されています。OKRの「O」はあくまでも定性的な目標を意味しますが、その目標を達成するためには数値で明確に測定できる結果指標「KR」が必要です。

目標(O)には以下2つの考え方があります。

  • ムーンショット:現状とは異なる未来を描く、挑戦的かつ野心的な目標
  • ルーフショット:達成は難しいものの、60〜70%程度で実現可能な目標

ムーンショットは全員が目標達成のために尽力し、一体感が生まれやすくなるというメリットがあります。ルーフショットはOKRの導入初期や、業績で大きなマイナスが続いているときなどに推奨されます。

OKRの導入が向いている組織

一概に定義することは難しいですが、OKRの導入は以下のような組織に向いていると考えられます。

- リソースが限られている組織
- 目標や戦略を現場にも周知したい組織

対して、以下のような組織はOKRの導入に向いていないと考えられます。

- 目標を設定する必要のない組織
- 目標や戦略を全社に公開しない組織

OKRは高い目標を掲げるので、形だけ導入しても達成感が得られず、逆にモチベーションが下がってしまうリスクがあります。重要なのは、高い目標設定を受け入れられる企業文化があるかどうかです。

ただ、企業によって相性はあるものの、導入の仕方を工夫することでOKRのメリットを享受できる可能性があります。

たとえば、数千人規模の大企業でも、OKRをビジョンや戦略を具体化する共通言語として活用できますし、自社の事業モデルと相性の良い部分に限定して導入することもできます。

OKRとKPI、MBOの違い

OKRと混合しやすいものとして、KPI(Key Performance Indicator)とMBO(Management By Objectives)が挙げられます。

それぞれの違いは以下の通りです。

OKR KPI MBO
日本語訳 目標と成果指標 重要業績評価指標 目標管理制度
提唱 アンディ・グローブ ハーバード大学の教授ら ピーター・ドラッカー
誕生時期 1970年代 1990年代 1954年
目的 生産性の向上 評価指標 報酬の決定
設定水準 挑戦的・未来志向 現実的・保守的 現実的・保守的
設定方法 定性と定量 定量 定性と定量
共有範囲 全社 プロジェクトやチーム内 上司と個人
目標達成率 60~70% 100% 100%
サイクル 3ヵ月程度 プロジェクトによる 半年~1年

OKR、KPI、MBOはいずれも目標設定に関する指標・制度ですが、目的や設定方法、設定水準などに違いがあるのが特徴です。

OKRの構成要素

OKRの構成要素である「目標(O)」と「重要な結果指標(KR)」について、さらに詳しく説明します。

Objectives(目標)

OKRでは目標(O)を1つ設定します。その際、これから紹介する3つのポイントを踏まえて設定しましょう。

● 3ヶ月程度で達成を目指す定性的な目標を設定

3ヶ月程度の短い期間における定性的な目標を設定します。

短期的な目標は全社で取り組みやすく、達成感を味わえる機会も多いことから、従業員のモチベーションアップに役立ちます。

● 理想から逆算したチャレンジングなもの

目標は理想から逆算したチャレンジングな内容にします。

変化の激しい時代に組織として成長するには、現在の延長線上ではなくより高いステージを目指す必要があります。組織の理想を起点にして考えることで、より目標が魅力的に映りやすいのもメリットです。

目標が魅力的だと従業員が自ずと「目標を達成したい」と思いやすく、高い成果が期待できます。「何となく達成できそう」「近い将来実現するだろう」といった予測可能な目標設定は避けましょう。

● 具体的かつシンプルな言葉を使う

目標は具体的かつシンプルな言葉を用いて、魅力的に表現します。

成果は従業員のモチベーションに大きく左右されます。誰もが共通認識を持てる目標を提示することで、全社で目標達成に向けて奮い立ち、最大限の努力を尽くすことができます。

Key Results(成果指標)

重要な結果指標(KR)は、目標(O)とは設定ポイントが異なります。ここでは4つのポイントに絞って解説します。

● 1つの目標につき3個ほど設定

重要な結果指標(KR)は、1つの目標(O)に対して3個ほどに絞り込んで設定します。

多くの指標を設定したはいいものの、それらを有効活用できていないケースは多いものです。そのためKRは、多くても5個までに絞りましょう。

目標(O)に向かって何をやるべきかだけでなく、何を捨てるべきかを明確にすることで、優先すべき指標が見えてきます。

● 計測可能で具体的に判断できる定量的指標

重要な結果指標(KR)は、計測可能で具体的に判断できる定量的指標を定めます。

成功の判断基準は人によって異なるため、組織内での認識がずれないようファクトベースで確認できるものに設定します。定量的指数を求めるための計算式も明確にしておくとよいでしょう。

● 目標(Objective)と結びついた内容

重要な結果指標(KR)は目標(O)と結びついた内容にします。

当たり前のことのように思えますが、意外とズレが発生している場面は多々あります。特に忙しいあまり、締め切りギリギリにその場しのぎで指標を設定した場合に齟齬が発生しやすい傾向にあります。

また、同じ指標を追い続けるのも適切ではありません。指標は市場や競合状況に合わせて変化するため、定期的に見直すようにします。

● ストレッチゾーンで設定

重要な結果指標(KR)は、今の状態から少し背伸びしてやっと達成できるストレッチゾーンで設定します。

重要な結果指標(KR)は、挑戦的かつ魅力的な目標(O)の達成度合いを測るため、高い数値目標を設定する必要があります。

とはいえ、到底達成できないレベルに設定してしまうと、魅力を通り越してやる気を失いかねません。容易には達成できないものの、まったく無理といえない範囲に重要な結果指標(KR)を設定しましょう。

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OKRを活用するメリット

OKRを組織で活用することで、得られるメリットを4つ紹介します。

メンバー全員のベクトルが揃えられる

明確な数値目標を設定しても、目標が共有されなければベクトルはバラつきます。

その点OKRは企業、部門/チーム、個人の目標(O)がリンクしているため、OKRそのものにベクトルの向きを揃える力が備わっています。

このようにOKRは設定段階からベクトルを合わせられることから、全員が一致団結して目標達成に取り組みやすい目標設定のフレームワークと言えるでしょう。

外部環境の変化に対応しやすい

OKRは3ヶ月という短い期間で目標を見直していきます。そのため、高頻度で定期的なミーティングやフィードバックを実施することから、外部環境の変化に対応しやすくなるメリットがあります。

OKRによって組織の成長スピードがアップするため、予期せぬ事態が発生してもすぐに修正できるようになり、新たな取り組みに対してもチャレンジしやすくなります。

重要な点に集中できる

OKRでは重要な結果指標(KR)を最大5個までに制限しています。それにより目標(O)と一貫性のある、優先すべきタスクが明確になっているのが特徴です。

そのため、誤った方向に進むリスクや、成果につながらないアクションにエネルギーを浪費するリスクを軽減できます。

従業員のエンゲージメントが向上する

OKRでは企業、部門/チーム、個人のOKRとその進捗状況がすべて公開されることが一般的です。そのため、従業員は自分の仕事企業の目標にどのように貢献しているのか理解しやすくなり、従業員のエンゲージメント向上が期待できます。

また進捗状況が公開されていることで、メンバー同士のコミュニケーションも円滑になりやすいのが特徴です。目標達成には横のつながりも欠かせないため、より高いモチベーションで目標に取り組みやすくなるでしょう。

OKRの具体例

ここでは、OKRの具体例を紹介します。KRの指標には行動指標と結果指標がありますが、目標を達成させるためにも可能な限り結果指標を採用しましょう。

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企業のOKR

O目標
自社サービスのブランディング力を高め、業界シェア上位に食い込む

KR重要な結果指標

  • 売上高が前年同期比8%増
  • ROAS 500%を達成
  • インセンティブ施策で新規顧客20%増

部門/チームのOKR

O目標
自社サービスのメディア掲載を獲得し、ユーザー定着とブランディングに資する

KR重要な結果指標

  • 4マス媒体で自社サービスが5件以上掲載される
  • 自社サービスの利用者数20%増
  • SNSマーケティングでCV率5%超え

個人のOKR

O目標
自社サービスサイトの認知度を上げる

KR重要な結果指標

  • サービスサイトの月間PV100万達成
  • 友達紹介キャンペーンを実施し利用者10%増
  • SNSのエンゲージメント率50%増
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OKRの運用ステップ

OKRを組織で設定・運用する際のステップを5段階に分けて紹介します。

1. 年間・四半期における組織のOKRを設定する

まずは最上位のOKRである、組織のOKRを設定します。企業1つにつき1つのOKRが良いとされていますが、いくつかの事業を営んでいる場合は目標(O)を複数設けても問題ありません。

組織のOKRを設定する際、経営陣の完全なトップダウンではなく、各部門からのボトムアップが理想的です。

● OKRとは別に健全性指標を設定する

健全性指標とは、OKRには記載されていないものの、OKRを達成するために必要な指標のことです。たとえば、従業員のメンタルヘルス、企業の財務状況などが挙げられます。

指標は青・黄・赤の3段階で設定し、青は問題なし、赤に近づくほど危険度が高くなります。

2. 四半期におけるチーム・個人のOKRを設定する

組織の最上位OKRに基づき、各チーム・個人のOKRを設定します。

この段階でOKRの責任者と各KRの責任者を任命し、責任の所在を明確にします。

● KRの自信度を設定する

KRの自信度を10段階評価(0:ありえない〜10:確実)で5〜6になるよう、各自が調整します。自己申告することで、無理難題な目標であると言い訳させない狙いがあります。

3. 四半期のOKRを全社に共有する

四半期のOKRを全社で共有します。

目標管理ツールやチームコミュニケーションツールを活用するとスムーズに共有が図れるでしょう。

全階層のOKRを可視化することで取るべきアクションが明確になり、従業員間の協力や円滑なコミュニケーションの促進が期待されます。

4. 定期的にOKRの進捗状況・優先事項・アクションプランを振り返る

定期的にOKRの進捗状況、優先事項、アクションプランを振り返ります。

担当者や個人は進捗を測定し、上位者はメンバーが目標達成できるようサポートします。その際のコミュニケーション方法として、チェックイン・ウィンセッションと中間レビューを実施します。

● チェックイン・ウィンセッションの実施

チェックインは週の初めに行う進捗確認の会議のことです。現在のOKRの進捗、達成見込みを共有し、ポジティブな言葉で会議を締めます。

ウィンセッションは、週の終わりに行う進捗会議のことです。結果に関わらず高い目標に挑んだメンバーを承認・称賛し、学びやモチベーションの向上につなげます。

● 中間レビューの実施

中間レビューは1.5ヶ月経過したタイミングで実施します。進捗の遅れやリソースの配分ミスなど課題が生じた場合、必要に応じて目標やアクションプランを調整します。

5. 四半期のOKRを振り返り、評価を行う

OKRの対象期間が終了したら、振り返りを実施して各OKRの結果を評価します。

10段階評価やパーセント評価を使用して結果を分析し、今後同じ目標を続けるか、別の目標に切り替えるかを判断します。

OKR導入で失敗しないためのポイント

OKR導入で失敗しないためのポイントは次の3つです。

全員にわかりやすく説明する

OKRの導入にあたり、自社にOKRが必要な理由を全員にわかりやすく説明することが大切です。

Googleが採用しているから、ベンチャー企業向けだからという理由だけでは、十分な納得感が得られず導入がうまくいかない可能性があります。

どのような理想に向かって、どんな風に行動するのか、具体的な例を示して説明しましょう。

目的と手段を混同しない

重要な評価指標(KR)の主な目的は、目標(O)の達成にあります。

OKRの運用や、KRの測定が目的ではないので注意しましょう。

OKRの導入で大切なことは、従業員の心理的安全性を確保しつつ、全員が振り返りの結果や意見を自由に表現できる環境を構築することです。

OKRと人事評価制度を直結させない

OKRは人事評価と直結させないようにします。

人事評価が関係してしまうと、従業員は評価を上げる目的で達成しやすい目標を設定してしまうリスクがあるためです。

OKRは組織強化を目的に導入するフレームワークであり、従業員のモチベーションを高める目標(O)の達成に注力しましょう。

OKRで組織・チームのイノベーションを加速させよう!

OKRは組織の強化生産性の向上を目的に、KPIやMBOと異なる特徴を持つフレームワークです。

OKRによって挑戦的かつ魅力的な目標を伝え続けることで、従業員のモチベーションが向上し、組織は強化されるはずです。適切なOKR運用によって組織のイノベーションを促進して、組織の成長を加速させましょう。

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