ビジネスの場では、企画会議やプレゼンテーションの場、商談の場など、相手を説得するという場面が多々あります。
少ない工数で成果をあげるためにも、1回1回の説明の場で相手を深く納得させることができるかは大きなポイントのひとつです。

今回は1942年にアメリカの心理学者ハロルド・スポンバーグが提唱した、相手を説得する際に自分に好感をもたせつつ説明内容に興味・関心を引き出すプレゼンテーション方法「クライマックス法・アンチクライマックス法」の2つをご紹介します。
どちらの話法が適しているのかは相手によって変わりますので、その場に応じてどちらの話法も使いこなせるように、本記事を参考に練習を重ねることをオススメします。

クライマックス法とは

クライマックス法とは「プレゼンテーションを行う際に最も相手に伝えるべき重要な箇所を最後に話す」話法です。
プレゼンテーション内容全体を見たときに主語・述語に沿った並び順になっているため、日本人の多くは日頃から無意識にこの話法を取り入れています。

重要な箇所を最後に伝える話法ですので、例えばプレゼンテーションの最後まで相手の興味を引き続けたい場合や内容が少しずつ盛り上がっていく場合などにはこの話法が適切です。
また、プレゼンテーションの相手が前置きや形式にこだわる傾向にある、粘り強いタイプであるという場合や、面接や面談など前提として相手がこちらの話に興味を持っているために最初から最後まで細かく聞いてくれるという状況では、この話法が効果を発揮してくれます。

クライマックス法が有効になりやすいケース

1.相手との信頼関係が構築されている場合

順序立てて話すことで安心感と信頼が生まれるため、相手との信頼関係がすでに構築されている場合は、この話法が有効です。

例:
いつもお世話になっております。毎度私たちの保険をご利用いただき誠にありがとうございます。今回の更新の件ですが、今一度お客様のご家庭の事情も考慮しつつ、ゆっくり検討していきましょう。

いきなり新商品を提案したりメリットなどを強調したりするとユーザーはかえって興味を失いかねません。
例のように順を追って説明し、相手に安心感を与えることがポイントとなります。

2.結論が意外性のあるものである場合

企画のプレゼンや新商品の発表などで、大きな武器となる大事な情報がある場合は、あえてはじめには言わず最後まで取っておく方法が有効です。このような場面では、クライマックス法を用いて話すことになります

例:
まずは、今回の商品を開発するにあたっての経緯についてお話いたします。
~中略~
この新商品の強みは、これまで面倒だった床掃除がスマートフォンでアプリを起動してONをタップするだけで終わってしまうという手軽さにあります。それでは紹介いたします。こちらが、新商品の「おそうじスマホ」です!

ゆっくり焦らしながら紹介を進めていくことで、聞き手の期待とボルテージを高めていくことができます。
期待をあおる分、紹介する商品やサービスなどの内容やクオリティが想定以下のものだと聞き手のモチベーションの落差も激しくなってしまうことには注意が必要です。

3.相手が粘り強く話を聞いてくれる場合

相手がすでにこちらの話に対して興味をもってくれている場合や前のめりに聞いてくれる状況ができあがっている場合は、クライマックス法による話し方が有効となります。
相手がこちらの話を最後まで聞いてくれるという保証があるため、順序立てて話しても相手が飽きてしまう心配がなく、かえって誠実な印象を与えやすくなります。

例:
こちらの車は、2007年式の車で走行距離は約5,000kmです。修理歴はなく10年前のものにも関わらず良好な状態を保っています。ただいまキャンペーン中ですので、この車をお買い上げの場合は保険に関する手続きや手数料などは読点で負担させていただくため、初期費用としてご準備いただく金額は差し引き140万程になります。

こちらはカーディーラーの営業の様子を想定した文章です。すでに中古車を購入したいという「話に興味を持っている」状況ができあがっているため、このように順に追って話をすることで相手に安心感を与えることができます。

アンチクライマックス法とは

アンチクライマックス法とは、先にご紹介したクライマックス法とは逆に「プレゼンテーションを行う際に最も相手に伝えるべき重要な箇所を最初に話す」話法です。
特に話の結論を最初に求めて「Yes・No」をはっきりさせる欧米人が無意識に日常的に使用しています。
プレゼンテーション時に有効なフレームワークのひとつである「PERP法」に類似した話法で、ビジネスの場でも比較的多く使用されています。

重要な箇所を最初に伝える話法ですので、スピードさが求められる商談の場やダラダラと結論を後回しにすると電話を切られてしまいがちな営業などのテレアポなどではこの話法が適切です。
また、プレゼンテーションの相手が論理的・合理的な会話を好むタイプである、初対面に近くまだそれほど親しくない相手である、なかなかこちらの話を前のめりで聞いてもらえる状況にない、と行った場合にはこの話法が効果を発揮してくれます。

アンチクライマックス法が有効になりやすいケース

1.相手がこちらの話に興味をしてしていない場合

プレゼンテーションを行う前の相手の様子を判断してこちらの話に興味をしてしていないと見受けられる場合は、結論を先に述べて興味・関心を惹き付けるアンチクライマックス法が有効です。
先にご紹介したクライマックス法を使用して順序だてて話してしまうと結論を伝える前に相手が離脱してしまう可能性もあります。

例:
今回の新商品のポイントは3つです。「価格が前モデルより2000円下がっていること」「作業能率が2割上がっていること」「カラーバリエーションが7種類もあること」。ではそれぞれのポイントについて詳しくご紹介いたします。

プレゼンテーションの冒頭で商品やサービスの強みを大々的にアピールすることで、相手の興味・関心を惹くと同時に特に聞いておくべきポイントを示します。ポイントを示すことで相手は話を聞きやすくなるため、より印象に残りやすくなります。

2.電話でセールスをかける場合

基本的に電話でのセールスでは、最初の数十秒でいかに相手の興味・関心を惹き付けることができるかが重要なポイントとなります。
アンチクライマックス法では最短ルートで相手に話のポイントを伝える話法ですので、最初の数十秒が勝負となるテレアポでは非常に有効です。

例:
あなたの家の電気代が、今よりもさらにお安くなる可能性のあるプランをご紹介させてください。3分で構いませんのでお時間をいただけませんでしょうか。

冒頭からプラン内容の説明をしてしまうと、相手は話を聞くメリットを感じずに電話を切られてしまう可能性があります。
そこで「電気料金が下がるかもしれない」という興味・関心を惹き付ける情報を最初に出すことで、話を聞いてもらえるよう可能性を高めることができます。

3.記事やニュースなどを書く場合

アンチクライマックス法は、ホームページなどで記事やニュースなどを記載する場合でも有効です。
インターネット上には把握しきれない程の情報が溢れている上に、現在はスマートフォンの普及により誰でもいつでも手軽に情報に触れることができます。
情報過多の中でいかに自社の発信する情報に興味を持ってもらうためには、重要な情報や結論を先に出してユーザーの興味・関心を惹き付ける必要があります。
記事やニュースの冒頭でユーザーの興味・関心を惹き付けることができればその後の詳しい内容を読んでもらえる可能性が高まり、滞在時間を伸ばすことにもつながります。

例:
(タイトル)株式会社Aの成功の秘訣は「チームビルディング」にあった

今回のインタビューでは、近年成長著しい株式会社Aの社長であるB氏に、社内で特に意識していることについて伺った。
「より短期間で高い成果を出すために御社が特に意識していることを伺えますでしょうか」
「そうですね、弊社ではチームビルディングに重きを置いて組織作りを行っています。具体的には年齢や社歴などよりもチームメンバーの性格の相性やメンバーが得意なこと、これまでの業務に対する貢献度などを総合的に見てチームを組むようにしています」

タイトルで「チームビルディング」に関する記事であることを提示することで、この分野に興味のあるユーザーの興味・関心をひきつけています。
記事内容でも先に結論を述べてから具体的な解説を行うことで、株式会社Aのことを知らない読者でも読み進めやすい工夫が見られます。

まとめ

いつでも同じ話し方をしていては、聞き手となる相手が常に変わる場合はプレゼンテーションの成功率は必然的に下がりやすくなります。
そのため、相手の心理状況やプレゼンテーションの場の雰囲気などを見極めて話し方を柔軟に変えることが重要です。
見極めのポイントは、記事内でご紹介している各話法が有効になりやすいケースを参考にしてみてください。

結論を先に述べるのか後に述べるのか、だけでも、相手を納得させられるかどうかに大きく関わってきます。
プレゼンテーションのフレームワークは多々ありますが、ぜひ本記事を参考にまずは2つの話法をマスターすることから始めてみてはいかがでしょうか。

印象に残る話し方を学ぶ

情報を伝える順が大事!「初頭効果」と「親近効果」を使い分けよう

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今回は、「初頭効果」「新近効果」について紹介します。情報を最初に提示するのか最後に提示するのか、相手や状況によって変化させることで説得力のある話術が身につきます。特に営業やプレゼンテーションなどを行う機会の多い方におすすめです。