マーケティング活動をする際に注意しなくてはならないものの一つが「ステルスマーケティング(ステマ)」です。ステルスマーケティングは、2023年10月1日から景品表示法で禁じる「不当表示」に指定されるため、改めて理解を深めておきましょう。

今回は、ステルスマーケティングの概要や問題視されている背景、問題になった事例対策などを紹介します。2023年10月1日からの規制強化についても解説しますので、ぜひご覧ください。

目次

  1. ステルスマーケティングとは
  2. ステルスマーケティングが問題視されている背景
  3. 2023年10月1日からステルスマーケティングの規制が強化
  4. ステルスマーケティングが問題になった事例3つ
  5. ステルスマーケティングとみなされないための対策
  6. ステルスマーケティングを避けて正しく宣伝しよう

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ステルスマーケティングとは

ステルスマーケティングマーケティング手法の一つであり、広告や宣伝であることを消費者に気づかれないように商品やサービスの宣伝・口コミを発信する行為のことです。

第三者が企業からの依頼を受けて商品を宣伝しているにもかかわらず、そのことを隠して行われる情報発信全般がステルスマーケティングにあたります。

例えば、以下のような行為はステルスマーケティングとみなされます。

・影響力のあるインフルエンサーやアフィリエイターなどに、PRであることを伏せて商品やサービスの宣伝をしてもらう

・広告ということを隠して、情報サイトなどに、高評価レビューや好意的な口コミを投稿してもらう

ステルスマーケティングが問題視されている背景

ステルスマーケティングが問題視されている背景として考えられるのは、主に次の2つです。

消費者を騙してしまうことにつながる

ステルスマーケティングを行うことで、消費者を騙してしまうことにつながるのが問題の一つです。

株式会社ジャストシステムが行った調査では、「商品やサービスを購入する際に、生活者のクチコミやレビュー(UGC)を信頼しますか?」という質問に対し、64.6%の人がUGCを信頼すると回答しています。

このようにUGCを信頼している消費者が多い中、ステルスマーケティングによる口コミ・レビューが広まってしまうと、消費者は正しい判断・選択ができません。

そしてステルスマーケティングが発覚した場合、消費者は「騙された」と感じ、企業に対する信頼感の損失ブランドイメージの低下につながることは避けられません。

参考:【2022年】UGCに対する意識調査結果を公開!~生活者はUGCをどれくらい信頼している?商品カテゴリ別に調べました~

炎上につながるリスクがある

ステルスマーケティングは消費者に宣伝であることを隠蔽する手法であるため、その実態が明るみに出ると大きな批判や炎上のリスクがあります。

SNS利用者が増えている現代では、「○○という会社はステルスマーケティングをしている」などの、ネガティブな投稿を広めることが容易になっています。

SNSで炎上すると、炎上の内容をまとめた記事が作成されたりメディアで報道されたりして、さらに被害が拡大する可能性があります。

一度炎上してしまうと、ステルスマーケティングで宣伝した商品の売上だけでなく、企業全体の売上が低下する恐れもあるため注意が必要です。

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2023年10月1日からステルスマーケティングの規制が強化

2023年10月1日から、消費者庁によるステルスマーケティングに対する法規制が施行されます。

この法規制により、ステルスマーケティングは景品表示法における「不当表示」に指定され、規制に違反した場合は事業者に罰則・罰金が科される可能性があります。

参考:ステマ規制は10月1日から、河野大臣が発表 違反すれば行政処分の対象に

「不当表示」の対象に追加されることで何が変わる?

2023年10月1日から施行される法規制により、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が、不当な表示として規制されます。

つまり、事業者の表示であるにもかかわらずそのことを隠したり分からないような形で表示したりすることが規制の対象*となります。

例えば、規制の対象となる可能性が高いケースは以下の通りです。

・事業者が依頼しているにもかかわらず、一般消費者などの第三者による表示であるように見せかける行為

・「PR」「プロモーション」などの表示が小さい

・  数多くのハッシュタグの中に1個だけ「PR」などが入っており、宣伝であることがわかりにくい

・インフルエンサーやアフィリエイターなどに対して事業者が「良い商品だったと投稿してください」など、表示内容の決定に関与するような形で依頼する

事業者からインフルエンサー・アフィリエイターなどの第三者に商品やサービスなどを提供した場合でも、「商品について自由な内容でレビューをしてください」と依頼することは問題ありません。

規制対象にならないためには「PR」「プロモーション」などの表示を明記し、事業者による表示であることが分かるようにしておくことが重要となるでしょう。

参考:消費者庁|「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について

ステルスマーケティングが問題になった事例3つ

ここでは、過去に問題になったステルスマーケティングの事例を3つ紹介します。

ウォルト・ディズニー・ジャパン「アナと雪の女王2」

2019年12月3日に、映画「アナと雪の女王2」の感想を表現した漫画が7本一斉にTwitterへ投稿され、その不自然さからSNS上などで「ステルスマーケティングではないか」と疑問視する声があがった事例です。

映画の配給元であるウォルト・ディズニー・ジャパンは、「本来クリエーターにPRであることを明記してもらう予定だったが、関係者間でのコミュニケーションが行き届かず、抜け落ちてしまった」と説明しています。

同社は、今後コミュニケーション体制を見直し、再発防止策を講じていくと発表しています。

参考:
「アナ雪2」PRで謝罪 ステマ批判にディズニー
「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び

マイクロソフト「Xbox One」

アメリカのマイクロソフトが販売する「Xbox One」に関する事例です。

同社は販売促進のための取り組みとして、「Xbox One」を使用している30秒以上の動画を投稿することで、1,000回の視聴につき3ドル(約300円)を支払うというキャンペーンを実施しました。

このキャンペーンが、ある動画サイトのユーザーに対してメールやSNSで周知されたことで「ステルスマーケティングではないか」という声が上がりました。

一般的に、第三者が広告主との関係性や報酬を受け取って宣伝していることを明らかにした上で、「Xbox One」をプレイしている動画を投稿し報酬を受け取ることは問題ありません。

しかし、このキャンペーン第三者が広告として投稿していることを隠していると認識できるようなものだと指摘されたことで、ステルスマーケティングとみなされ問題となりました。

参考:マイクロソフトが「Xbox One」のプロモーションでステルスマーケティングを行っていることが判明

株式会社カカクコム「食べログ」

カカクコムが運営しているレストラン検索・予約サイト「食べログ」の事例です。

同サイトには、その店を利用した人による口コミや点数、それを基にしたランキングが掲載されています。

ところが2012年1月、飲食店に好意的な評価を投稿してランキングを上げる見返りに、金銭を受け取る業者が39社いたことが発覚しました。

その後、カカクコムは以下のようなガイドラインを定め、不正行為の防止に努めています。

  • 店舗関係者による投稿の禁止
  • 対価(金品や役務提供)を目的とした投稿の禁止
  • ステルスマーケティングなどの不正行為の可能性があると判断されたユーザーには点数への影響度を付与しない

参考:
食べログ事件で明るみ、巧妙な“ステマ”の実態
ステルスマーケティングに対する取り組み

他の事例についても知りたい方は、以下の記事も合わせてお読みください。

参考記事:ステマ(ステルスマーケティング)とは?事例6選と絶対にやってはいけない3つの理由

ステルスマーケティングとみなされないための対策

今回紹介した事例や2023年10月1日からの法規制を踏まえると、ステルスマーケティングとみなされないためには以下3つの点に注意すべきと考えられます。

  • 広告であることを明示する
  • 事業者側から投稿内容を指定しない
  • 消費者庁が公表している運用基準に反していないかをチェック

事業者による宣伝であることが分かるようになっていれば規制の対象外となるため、インフルエンサーやアフィリエイターなどに宣伝を依頼する際は「広告」「プロモーション」「PR」などの表示を必ずしてもらうことが大切です。

また、企業側からインフルエンサーなどに内容を指定して投稿することを依頼した場合は規制対象となってしまうため、自由な内容を投稿してもらいましょう。

さらに、消費者庁より以下の運用基準が公開されているため、これをもとにマーケティング施策を検討する必要があります。

参考:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

ステルスマーケティングを避けて正しく宣伝しよう

ステルスマーケティングを行ってしまうと、SNSなどで炎上するリスクがあるだけでなく、企業としての信頼や売上を低下させてしまう恐れがあります。

ステルスマーケティングを行うつもりはなくても、広告・宣伝であることを隠して宣伝をしたり、それが分からないような形で表示をしたりすると、ステルスマーケティングとみなされてしまう可能性があります。

正しい形での販売促進を行うためにも、ステルスマーケティングについての理解を深めた上でマーケティング施策を検討・実施しましょう。

▼あわせて読みたい、専門家によるステルスマーケティングの解説

2023年10月から、ステルスマーケティングの法規制はどう変わる? 弁護士が解説!マーケ担当者が知っておきたい法律知識

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2023年10月1日から、消費者庁によるステルスマーケティングに対する法規制が施行されます。ユーザーからの口コミやレビューをマーケティング施策に活用する際に、今後何が問題になってくるのか、法律事務所ZeLo・外国法共同事業の官澤康平弁護士に伺いました。