売上にコミットする組織

まずは1つ目の成功理由である「売上を目標とすることによるチームワークの向上」についてです。

先ほども述べたように、営業推進部では、製品およびサービスのデマンドジェネレーションからインサイドセールス、ハイタッチセールスまでを担当しており、ハイタッチセールスによって商談にたどり着いた顧客の中から、特に見込みのある顧客を営業に引き継いでいます。

いうまでもなく、このプロセスの最終目標は、顧客を引き継いだ営業が案件を成約させて売上を上げることです。そこで近藤様は、同部のメンバー全員が常に「売上を高める」という最終目標を念頭に置き、そこから逆算して「自分が達成させるべき目の前のKPIは何か?」ということを意識させることにしました。

例えば、一般にデマンドジェネレーションのKPIはリード数、インサイドセールスはアポイント率、ハイタッチセールスは商談数ですが、デマンドジェネレーションによってどんなにリード数が上がっても、次のステップであるインサイドセールスでアポイント率が上がらなければ「売上を高める」という最終目標には至りません。

そこで、デマンドジェネレーションの担当者は、次のステップであるインサイドセールスのアポイント率も重要なKPIとし、インサイドセールスの担当者はアポイント率だけでなくハイタッチセールスの商談数も、ハイタッチセールス担当者は商談数だけでなく営業による受注率も意識するように意識改革を図ったのです。

その結果、「自分はリード数の向上だけに専念すればいい」といった役割ごとの縦割り意識が薄れ、各ステップの担当者が互いにチームワークを取りながら、「売上を高める」という共通の最終目標を目指す意識が醸成されたのです。

この意識づくりのための仕掛けとして、同部では「KPIダッシュボード」というツールを作りました。これは、デマンドジェネレーションから商談に至る全てのKPIの達成状況がリアルタイムで一覧できるツールです。

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マルケト様提供資料:KPIダッシュボード

デマンドジェネレーションのKPIはMAから、インサイドセールスとハイタッチセールスのKPIはSFAから取って組み合わせたものですが、このツールによってどのステップがKPIを達成できていないのかを全ての担当者が一目で把握できるようになり、自分の取り組みを見直したり、互いにフォローアップしたりするようになりました。

この取り組みが「Nutanix」の売上アップに大きく貢献したことは間違いなさそうです。
  

顧客本位の価値あるコンテンツを提供

続いては、第2の成功理由である「顧客本位の価値あるコンテンツを提供したこと」です。

メルマガやWebなどで製品情報を提供する場合、発信者側の自分本位で「この技術はすごい」とか「画期的な製品です」と言っても、なかなか顧客には響きません。

そこで、「どんな市場やキーパーソンに発信するのか?」「必要とされている情報は何か?」「ターゲットはどうやって情報収集をしているのか?」「ターゲットはいつ情報を必要とするのか?」といったことを踏まえながら、顧客が本当に求めているコンテンツを考え、発信することにしました。

そうしたコンテンツづくりのため、「購買プロセス」と「顧客へのコミュニケーション図」という2つのフレームワークを用いています。

「購買プロセス」のフレームワークは、下の図のように縦軸をキーパーソンの役職、横軸を課題発生からベンダー選定に至るまでの流れでチャート化したものです。この中から、誰の、どのニーズに対応する情報を発信するのかということを踏まえて、コンテンツを作成することにしました。

ちなみに同社では、現場で直接課題解決にあたる部長から一般社員をコアターゲットに据えているとのことです。

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マルケト様提供資料:購買プロセス

また、「顧客へのコミュニケーション図」は、顧客の育成状況に応じてナーチャリング施策を変えていくための指針です。

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マルケト様提供資料:顧客へのコミュニケーション図

NEW(製品情報を無認知)の顧客に対してはリード情報の獲得、MCL(製品情報に無関心)に対しては製品認知やトレンド認知、MEL(製品に興味・関心を持っている)に対しては詳細情報の提供、MQL(非対面での接触を検討)には価格情報や競合情報を提供するといったように、顧客の状況に応じてきめ細かな情報発信を行っています。

また、顧客に響くコンテンツを提供するため、制作は外注せず、社内のマーケターやエンジニアなどが直接作ることを原則としており、発信したコンテンツについては必ず反応に対する評価を行い、PDCAを回しながら改善を図っているとのことです。