テクノロジーの進歩に伴い、私たちの生活の中でそうした技術が活用される機会は増えています。そんな中、「FinTech」や「HRTech」など、特定の業界とテクノロジーが融合して生まれた価値や仕組みを表す言葉が多用されているのをご存知でしょうか。

今回は、今話題になっている10の「〇〇Tech」を解説します。どんな業界で、どんな新しい価値が生まれているかを知ることで、テクノロジーのトレンドを掴むこともできるはずです。いくつ知っているか、確認してみましょう。

目次

  1. 「〇〇Tech」とは
    1. 「X-Tech」
    2. 「〇〇Tech」「X-Tech」活発化の背景
  2. 話題の「〇〇Tech」10選
    1. AgriTech(農業✕IT)
    2. AutoTech(車✕IT)
    3. EdTech(教育✕IT)
    4. FinTech(金融✕IT)
    5. FoodTech(食✕IT)
    6. HealthcareTech(ヘルスケア✕IT)
    7. HomeTech(住宅✕IT)
    8. HRTech(人材✕IT)
    9. MedTech(医療✕IT)
    10. RealestateTech(不動産✕IT)
  3. まとめ

「〇〇Tech」とは

「〇〇Tech」とは、ある分野・業界がテクノロジーを活用することで生み出した、新しい価値や仕組みのことです。「〇〇」には分野・業界の名称が入ります。「Tech」は「Technology(テクノロジー)」の略語です。

例えば「FinTech」は、金融を意味する「Finance(ファイナンス)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。

テクノロジーといえば、これまではIT業界やWeb業界のイメージが強いものでしたが、近年は業界の垣根を超えて様々な分野で革新が起こっています。

「X-Tech」

「〇〇Tech」を「X-Tech(エクステック)」と総称することもあります。X-Techは、NTTデータ経営研究所が提唱している名称です。

NTTデータ経営研究所は、X-Techの定義を以下のように述べています。

「洗練されたITをコアとして、その業界では新参者である企業が、今までにない価値や仕組みを提供する動向」
引用元:X-Techとは何か|NTTデータ経営研究所

「新参者である企業」とは、上記の文脈においてスタートアップ企業を指します。テクノロジーの進歩により、今後も様々な分野・業界で新しい価値が生み出されていくと考えられています。それに加え、既存の企業も新領域へ参入する機会も多く目にするようになりました。

「〇〇Tech」「X-Tech」活発化の背景

「〇〇Tech」「X-Tech」の活発化は、テクノロジーが企業や個人にとって身近な存在となってきたことが背景です。

X-Tech_-_1.jpg
引用:
平成28年版情報通信白書|総務省

総務省によると、ICTシステムへの投資は年々高まっています。企業はハードウェアからソフトウェア、更にはアウトソーシングなどのサービスへとシフトしています。それに伴い、クラウドサービスの利用率も年々高まっています。

X-Tech_-_2.jpg
引用:
平成28年版情報通信白書|総務省

ICT投資とクラウドサービスの利用企業が増加することで、テクノロジーはより企業にとって身近な存在になってきています。小さなコスト・リスクでテクノロジーを活用しやすくなったことで、スタートアップ企業の参入障壁も下がってきているといえるでしょう。

参考:
X-Techとは何か|株式会社NTTデータ経営研究所

話題の「〇〇Tech」10選

今回は、今話題を集めている10の「〇〇Tech」をアルファベット順にご紹介します。最新のニュースや事例からトレンドも確認しておきましょう。

1.AgriTech(農業✕IT)

AgriTechは、「Agriculture(農業)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。「スマート農業」「農業IoT」と呼ばれることもあります。

農業は、現在就業者の高齢化と、新たな就業者の不足が課題となっています。そこでテクノロジーを農業に活用し、作業効率化や農業技術のノウハウのデータ化、応用を図ろうという取り組みが進んでいます。

AgriTechに関してはferretでも紹介しています。

参考:
農家の課題をテクノロジーで解決する「アグリテック」とは?|ferret

AI・IoT・ビッグデータを活用した「スマート農業」

X-Tech_-_3.jpg
OPTiM スマート農業ソリューション

AI・IoT・ビッグデータのプラットフォームビジネス事業を行う株式会社オプティムと株式会社みちのく銀行は、「スマート農業」を推進する取り組みを始めました。

ハウス内に設置したセンサーを使ったハウス情報管理サービス、自動音声入力による農作業記録サービス、スマートデバイスを用いた遠隔地での作業支援サービスなどを提供しています。

2.AutoTech(車✕IT)

AutoTechは、「automation(自動化)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。「automation」は「自動運転」の意味が込められています。「CarTech」とも呼ばれます。

大手自動車メーカーはIT企業と連携し、自動運転技術を競うように開発しています。

X-Tech_-_4.jpg
引用:
自動運転の定義|N-Link OWNERS

上記画像から分かるように、自動運転にはその自動化のレベルによって4段階に分かれています。現在は2レベル目の技術が実用化されている段階だといわれています。

一方で、自動運転システムによる死亡事故なども発生しており、今後AutoTechが発展する上での課題と考えられています。

参考:
テスラ車の16年死亡事故、オートパイロット機能に一因-米運輸安全委 - Bloomberg

2020年までに高度な自動運転の実現を目指す

日本政府は、2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックで、自動運転のサービスを実現するために制度を整備する方針を掲げています。2017年には、「官民ITS構想・ロードマップ2017」を策定しました。

2020年までに、高速道路など限定領域内でありますが、無人自動運転サービスにおいて自動運転のレベル4である「完全自動走行」を実現させる方針です。

参考:
官民 ITS 構想・ロードマップ 2017|高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議

3.EdTech(教育✕IT)

EdTechは、「Education(教育)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。「EduTech」と呼ばれることもあります。

従来の教育といえば、教員は黒板にチョーク、生徒は教科書とノートを使って行う授業が主流でした。しかし昨今では、「e-Learning」などインターネットを活用した学習ツールが普及しています。「e-Learning」とは、パソコンやインターネットなどのICT技術を活用した教育システムのことです。また、「e-Learning」だけでなく、AIを活用したサービスも生まれています。

世界中の勉強ノートを共有できるサービス

X-Tech_-_5.jpg
Clear

世界で優れた「EdTech」のスタートアップ企業を表彰する「The Global EdTech Startup Awards(GESA)」で、日本からは「Clear」という勉強ノート共有アプリを提供するアルクテラス株式会社が代表として選ばれました。

これまで学校や塾、家庭など限られたコミュニティの中で行われていた学習も、今後テクノロジーによって共有できる範囲は更に広がっていくでしょう。

参考:
手書きの“勉強ノート”を共有できるアプリ「Clear」がEdTechの世界大会へ|CNET Japan

4.FinTech(金融✕IT)

FinTechは、「Finance(金融)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。

モバイル決済」「ビットコイン」「ブロックチェーン」などの言葉を良く目にするようになりました。FinTechは、これまでの金融システムを革新する様々なサービスが生まれていることを表しています。

FinTechに関してはferretでも紹介しています。

参考:
今さら聞けない「Fintech(フィンテック)」とは?基本概要&国内主要サービスまとめ|ferret

送金サービスが浸透

X-Tech_-_6.jpg
paymo

銀行口座からの引き落としや送金に関して、スタートアップ企業が参入し始めています。送金アプリなどが登場しており、若者を中心に浸透しはじめています。

これまでは営業時間内に銀行ATMまで行って引き落とさなければならなかった状況でも、送金アプリを使って簡単に金銭のやり取りができるようになりました。

参考:
アプリ送金、若者に浸透|日本経済新聞

5.FoodTech(食✕IT)

FoodTechは、「Food(食)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。

「食」という大きなカテゴリーの中で、様々な分野でテクノロジーが活用されています。例えば、デリバリーサービス飲食店での予約サービス在庫管理システムAIによるレシピ考案アプリなどが挙げられます。

消費者にとっての利便性向上はもちろん、サービス提供側の業務効率化や、食料資源の有効活用などにも貢献しています。

植物性の原料を使って再現された肉

X-Tech_-_7.jpg
beyondmeat

beyondmeat社は、大豆など植物性の原料を使い、肉の代替品となる食品を開発しています。この開発には、食材を分子単位で分析する「分子調理法」という技術が使われています。

beyondmeat社にはマイクロソフト社の創設者ビル・ゲイツも投資をしており、今後の成長に注目を集めている技術といえるでしょう。

参考:
本当に美味しい? ビル・ゲイツ氏が出資するハンバーガーは肉を使わない|BUSINESS INSIDER JAPAN

6.HealthcareTech(ヘルスケア✕IT)

HealthcareTechは、「Healthcare(ヘルスケア)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。「スマートヘルスケア」と呼ばれることもあります。

近年は、健康、医療に関するテクノロジーの進化はもちろん、個人単位での健康増進や予防医療に関するサービスも生まれてきています。健康に関するビッグデータを活用し、病気にないやすい傾向などを掴んで個人に提供することで、事前に病気を防ぐことが目的です。

一方で、技術面だけでなく倫理面においても、医療の分野にテクノロジーがどこまで踏み込んでいけるかという議論も生まれています。

参考:
医療テクノロジーが問う「死」と「人間性」の未来|Forbes JAPAN

最新テクノロジーと専門コーチによる健康プログラム「noom」

X-Tech_-_8.jpg
noom

noomは、AIを活用した健康状態分析に加え、専門知識を備えたコーチによって健康的な生活に改善するためのプログラムを提供しています。

アプリに食事内容や運動頻度などを入力することで生活習慣を分析し、管理栄養士やスポーツトレーナーと直接メッセージを交わしながらブログラムを進めていきます。スマートフォン上で手軽に生活習慣の改善を図れるようになることで、予防医療はこれまでより身近な手法として取り入れられていくことでしょう。

7.HomeTech(住宅✕IT)

HomeTechは、「Home(住宅)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。「スマートホーム」と呼ばれることもあります。

近年、「IoT(モノのインターネット」が普及しており、その代表例のひとつがスマートホームです。スマートホームでは、電気やガスの使用量をモニターで可視化したり、帰宅前にスマートフォンの遠隔操作で冷暖房のスイッチを入れたりといったことが可能になります。

住みやすさだけでなく、防犯や子どもや高齢者の安全確認など、安全性にも配慮したシステムが開発されています。

AIアシスタントとの連携が進む

Google社やAmazon社は、AIスピーカーなどに会社独自の「AIアシスタント」を搭載しています。そのAIアシスタントを家電と連携させることで、スピーカーだけでなく住宅全体でユーザーのサポートができる取り組みが進んでいます。

例えば、冷蔵庫にAmazon社のAIアシスタントである「Alexa」を搭載することで、冷蔵庫内の食品の不足に気付いたタイミングで「〇〇を買っておいて」と言うだけで、Amazonでの注文ができるようになります。

他にも、Google社のAIアシスタントである「Googleアシスタント」に「テレビをつけて」と言えば、リモコンがなくても連携しているテレビの電源を入れることができます。

上記のように、AIアシスタントを通じて様々なデバイスやサービスが連携するため、かつて手動で操作していたものを代替できるようになると期待されています。

参考:
グーグルとアマゾンのAIスピーカーが破壊した「ネット家電」の壁:CES2018|BUSINESS INSIDER JAPAN

8.HRTech(人材✕IT)

HRTechは、「Human Resources(人材)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。

ビックデータやAI、クラウドを活用して、人材の採用・育成・管理などの業務を行います。少子高齢化によって人材不足が叫ばれている今、いかに優秀な人材を採用し、戦力となるよう育成し、働きがいをもって長く就業してもらうかはどの企業にとっても大きな課題となっています。

HRTechは前述した採用・育成・管理といった分野の中で様々なサービスが生まれており、導入を検討する企業も増えてきています。

参考:
「大事なのは“何ができるか”ではなく“何がしたいか”」CAのHRTech活用法|ferret

AIでエントリーシートの合否を判定

ソフトバンク株式会社は、2017年の新卒採用から、IBM社のWatsonというAIを活用したエントリーシート選考を行っています。自然言語分類技術を使って内容を分析し、これまでの
合否の基準と照らし合わせて合否を判断します。

不合格と判定されたエントリーシートは必ず採用担当者が再度確認しているものの、この取り組みによって500時間ほどの業務時間を短縮できる見込みを立てています。

参考:
AIによるエントリーシート選考が“攻めの採用”を加速させる〜500時間の工数を削減した“ソフトバンク流”未来の新卒採用(前編)|日本の人事部

9.MedTech(医療✕IT)

MedTechは、「Medical(医療)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。

今の日本は高齢化による医療費の増加医療専門職の慢性的な人材不足といった課題にぶつかっています。そこで医療機器とIT技術を組み合わせたサービスを使い、医療過程の効率化や自動化が進められています。

高度な技術を実現する手術ロボットや、介護分野で身体的負担を軽減するためのパワースーツなどが例として挙げられます。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」

X-Tech_-_9.jpg
手術支援ロボット「ダヴィンチ」

ダヴィンチ」は、内視鏡を使って行う鏡視下手術に、ロボットの機能を組み合わせて発展させた手術を行います。手術者は3Dモニターで遠隔操作し、その動きを通してロボットを動かす仕組みです。

ダヴィンチ手術は出血量の抑制、合併症リスクの低減など様々なメリットがあり、保険適用も広がってきています。

参考:
「ダヴィンチ」手術、一挙に12件を保険適用へ|m3.com

10.RealestateTech(不動産✕IT)

RealestateTechは、「Realestate(不動産)」と「Technology」をかけ合わせた言葉です。「ReTech」と呼ばれることもあります。

不動産業界では、事業者と消費者との間の「情報の非対称性」が課題とされてきました。賃貸でいえば空室の状況や家賃相場、売買でいえば住宅の価値相場など、消費者側の情報が少ないのでは、という指摘があったのです。

しかし現在では、インターネットやテクノロジーの進化・普及により、消費者も簡単に情報を得、比較検討しやすくなっています。

VRで内見の疑似体験

X-Tech_-_10.jpg
VR内見

ナーブ株式会社は、VRを活用した物件内見システムを提供しています。物件まで向かわなくても、実際の部屋の間取りや距離感などを疑似体験できます。消費者にとっては手間を省け、遠方の部屋探しをするときにも便利です。また事業者にとっても、多くの物件に出向く工数が省けるため、業務効率化にもつながります。

まとめ

今回ご紹介した業界に加え、新しい「〇〇Tech」はこれからも生まれてくるはずです。今やテクノロジー技術の活用は、業界の壁を超えて横断的に広がっています。様々な業界のトレンドを押さえておくことで、今後の動向を掴むことができるでしょう。