企業が取り組むオウンドメディアをNPOも

代表個人での情報発信の次は、団体としての情報発信について見ていきましょう。その前に、少し企業の情報発信のトレンドを紹介させてください。

近年、企業が自らメディアを立ち上げ、ブランディングをしたり、サービスや商品を紹介したり、ユーザーを獲得するために情報を発信するケースが増えています。こうした企業が運営するウェブマガジンやブログは「オウンドメディア」と呼ばれています。

NPOの中にも「オウンドメディア」の運営に取り組んでいる事例があり、その代表例が、「病児保育」「障害児保育」「小規模保育」「赤ちゃん縁組」などの課題に取り組むNPO法人フローレンスです。

フローレンスは、オウンドメディア「フローレンスNEWS」を立ち上げ、情報を発信しています。

たとえば、「アクション最前線」というコーナーでは、フローレンス代表の駒崎さんと識者による対談や、事業を始めた背景にある社会構造の問題について紹介しています。子どもの貧困問題を解決していくための事業「子ども宅食」に関する記事では、相対的貧困に関する現状がデータを活用しながら丁寧にまとめられており、非常に読み応えのある内容になっています。

alt 子ども宅食に関する記事

記事の文末にはフローレンスへの寄付や求人へのリンクが貼られているため、共感した人がそのままアクションを起こせるような設計がされています。

実施できれば効果が上がる可能性が高いオウンドメディアですが、課題は立ち上げや運営にかかるコストです。サイト設計やコンテンツ制作、データ分析など行うべき業務も多くあり、まとまった資金も必要となるため、立ち上げるためにはクラウドファンディング等を通じた資金集めも検討するべきでしょう。

資金獲得だけではないクラウドファンディング

では、最後は今話に出たクラウドファンディングについて紹介します。クラウドファンディングとは、インターネットを活用して不特定多数の支援者から資金を集めるサービスのことを指します。

海外から始まったクラウドファンディングは、国内でも複数の事業者がサービスを運営しています。「ジャパンギビング」や「Readyfor」、CAMPFIREの「GoodMorning」など、寄付として資金を受け取ることができる「寄付型」のサービスを提供している事業者も存在します。

NPOがクラウドファンディングを活用することで、資金が得られるだけでなく、クラウドファンディングのサービス上でページを開設すること自体がひとつのチャネルとなり、新しいファン層の獲得につながることでしょう。

クラウドファンディングへの挑戦自体が注目され、メディアに取材されることもあります。

通信制高校・定時制高校の高校生に特化し、独自のプログラム「クレッシェンド」やインターシップなどを展開しているNPO法人D×P(ディーピー)は、クラウドファンディングを上手く活用されています。

alt D×P理事長の今井紀明さんが挑戦したクラウドファンディング

D×P理事長の今井さんによるクラウドファンディングでは、直接的な団体の取り組みではなく、自身の挑戦と絡めてクラウドファンディングを行うことで、D×Pの認知度拡大につなげています。

これまでに今井さんは、250kmを走る「サハラ砂漠マラソン」と「アタカマ砂漠マラソン」に挑戦するため、CAMPFIRE上でクラウドファンディングを行いました。前者は520万円、後者は764万円の支援を獲得。プロジェクトページでは、個人の挑戦として取り組む意義だけでなく、事業を行う社会的な背景や具体的な取り組みも丁寧に説明されています。

過酷なマラソンに挑戦することで、高校生にその背中を見せるだけでなく、D×Pの認知度拡大や活動資金につなげているのが印象的でした(マラソン参加のための諸経費は100万円前後ですが、残りは「D×Pへの支援として活用する」と記載されています)。