近年、「ChatWork」や「Slack」といったビジネス型SNSなどで、基本的な機能を無料で提供し、その他の機能を利用するタイミングで課金してもらう「フリーミアム」という仕組みが増えてきました。
今回は、フリーミアムを実際に導入しているサービスの事例を、BtoBツールに絞って紹介します。

目次

  1. フリーミアムとは
  2. フリーミアムサービス事例8選
    1. ビジネスチャットツール
      1. Chatwork
      2. Slack
    2. 名刺管理ツール
      1. Eight
      2. Cardful
    3. オンラインストレージサービス
      1. Google Drive
      2. box
    4. ホームページ・ヒートマップ解析ツール
      1. Ptengine
      2. MIERUCA

フリーミアムとは

フリーミアムは、フリー(free)とプレミアム(premium)をかけ合わせた造語です。
基本料金は無料であり、お金を支払うことでサービスの継続利用や追加機能が利用できる形のビジネスモデルを指します。

フリーミアムという言葉が生まれたのは、インターネットが普及してからのことです。
2009年に出版された『Free: The Future of a Radical Price』(フリー<無料>からお金を生み出す新戦略)のなかで取り扱われ、話題となりました。

この本では、オンラインサイトでは95%の無料ユーザーを5%の有料ユーザーが支えていると指摘しています。
デジタル製品は無料ユーザーにサービスを提供するコストがゼロに近いため、これまでには不可能だったビジネスが成立しているのです。

フリーミアムサービス事例8選

ビジネスチャットツール

1.ChatWork

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チャットワーク

チャットワークは、ビジネス向けのオンラインチャットツールです。チャットだけでなく、ユーザー個人のタスク管理や、ファイルのアップロードにも活用できます。

無料のフリープランでは、グループチャットは14グループまでと制限があるものの、ユーザーとのコンタクトは無制限で増やせます。個人事業主やプライベートで利用する場合は、無料のままでも活用しやすいでしょう。

有料プランに切り替えることにより、ストレージの容量が増えたり、グループチャットの制限がなくなったりといった機能の拡張が可能になります。

参考:
プラン紹介|チャットワーク

フリープランでも十分に活用できる機能を備えることで、ユーザーのサービス利用へのハードルを下げています。その後、活用する範囲が広がり、利用期間も長くなってきたタイミングで有料プランに移行するというユーザーの動きが予想できます。

2.Slack

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Slack

Slackは、チームでのコミュニケーションを重視したオンラインチャットツールです。他社ツールとの連携もでき、業務の生産性向上のための機能が揃っています。

無料のフリープランは、通常のチャット機能は利用できるものの、外部アクセスに関する機能や、複数ユーザーとの音声・ビデオ通信ができません。チームのコミュニケーションツールを検討する上での利用に向いています。

参考:
料金のご案内|Slack

無料プランで機能を減らすことで、有料プランへの切り替えタイミングを図ることができます。しかし、あまりに機能が少ないとそのまま離脱される危険もあることに留意しなければなりません。

有料プランでアピールしたい機能に関しては、機能の制限をしながらも、ユーザーに体験してもらいやすいプラン内容を考えてみましょう。

参考:
Slackの成功事例から学ぶ、フリーミアムモデルの収益化のヒント|ferret

名刺管理ツール

3.Eight

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Eight

Eightは、名刺交換した人とまるでSNSのようにコミュニケーションをとれる、名刺管理アプリです。

無料アカウント登録後、有料プラン(Eightプレミアム)へと移行できます。

【有料プラン】
月額:480円/月
年額:4,800円/年

【機能】
・無料ユーザーよりも優先してデータ登録
・iPhoneの連絡先アプリとの連携
・名刺データのダウンロード

有料プランの案内は、無料登録後に確認できます。基本的には無料で使い続けることができ、あくまでもプラス要素としての機能が有料プランで利用できるようになります。

ただ、名刺のデータが蓄積すればするほど、連絡先との連携やデータのダウンロードの有益性が高まるでしょう。このように、ヘビーユーザー向けのプランとして有料化を促すことも戦略のひとつとして活かせます。

4.Cardful

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Cardful

Cardfulは、情報管理ツール「Evernote」と連携した編集ができる名刺管理アプリです。Cardfulに直接名刺データを登録するのはもちろん、名刺のスキャンデータをEvernoteにアップロードすることで、Cardfulに取り込めます。

無料だと初回30枚、毎月10枚ずつの名刺データ登録が可能です。1,400円(税込)でアップグレードすることで、無制限で名刺データを登録できます。

月額ではないため、一度課金すればその後はユーザーへの負担なく、長く利用できるメリットがあります。月額料金よりも料金は高く見えがちであるものの、途中解約のリスクはなくなるでしょう。

月額や年額といった料金形態だけでなく、買い切り型のプランも検討してみると、フリーミアムの幅が広がります。

オンラインストレージサービス

5.Google Drive

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Google Drive

Google Driveは、文章や写真、音楽などのデータを保管できるオンラインストレージサービスです。

無料で15GB利用でき、それ以上容量を増やすには、有料プランへのアップグレードが必要です。

参考:
お支払いプラン|Google Drive

無料の間にユーザーが利便性を感じて利用を続ければ、必然的に容量追加の必要性が生まれてきます。

6.box

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box

boxは、個人向け・ビジネス向け双方に活用できる、ファイル共有クラウドサービスです。世界中で利用されており、パソコンだけでなくモバイルからの利用にも対応しています。

個人ユーザー向けに無料プランが用意されています。無料プランでは、10GBのストレージと、250MBまでのアップロード制限があります。

boxは、個人ユーザーとビジネスユーザーを明確に線引きしており、それぞれの活用に応じたプランを用意しています。ユーザーはまず無料プランに登録し、様子を見てからビジネス向けの有料プランを導入できます。

容量の他にも、ユーザーレポートの作成やデータの紛失防止などの付加価値を加えることでプランに差をつけています。基本的な機能が変わらない場合は、細分化したターゲットユーザーそれぞれにとって有益な機能を押し出すのも一手です。

ホームページ・ヒートマップ解析ツール

7.Ptengine

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Ptengine

Ptengineは、ヒートマップ機能を搭載したアクセス解析ツールです。

パソコン・スマートフォン・タブレットなどのデバイスに対応しており、リアルタイムで訪問ユーザーの計測ができます。

無料のフリープランでは、1つのヒートマップを規定の数値まで解析できます。その他、A/Bテストなどの詳しい分析や、メールやチャットによるサポートを希望する場合は有料プランへ移行します。

ヒートマップ自体を初めて利用するユーザーや、複数のツールを検討しているユーザーに対して、まずは無料プランで試してもらえるよう、作成できるヒートマップの数を限定する代わりに、分析機能などはほぼ網羅的に活用できます。

参考:
プランとご利用料金|Ptengine

月額料金が高価になればなるほどユーザーも契約に躊躇するため、できるだけ無料で試せるような機会を提供するとよいでしょう。

8.MIERUCA

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MIERUCA

MIERUCAは、スクロール・クリック・アテンション(熟読)の3つの観点から解析できるヒートマップ解析ツールです。

スマートフォンサイトにも対応しており、無料で簡単に設定できます。

有料プランでは、複数のホームページドメインの解析や、解析データの閲覧期間の延長が可能になります。動画マニュアルなども利用できるようになるため、無料プランで機能に慣れ、より効果的な分析と改善を行いたいと考えるタイミングで移行するユーザーも想定できるでしょう。

参考:
MIERUCAヒートマッププラン一覧・ご利用料金|MIERUCA

機能の拡張だけでなく、ユーザーをフォローする機能やサービスも付加価値として重要なポイントになり得ます。

まとめ

フリーミアムは、発売前の知名度が高くないサービスでもユーザーに利用してもらいやすいビジネスモデルです。ただ、無料利用期間内にユーザーに利便性を感じてもらえなければ、課金されることは難しいでしょう。

無料プランで利用できる機能を拡張したり、付加価値を与えるような機能を追加したりすることで、有料プランへのメリットを訴求していくことが重要です。

今回紹介したサービスと有料化のポイントを参考に、自社の新サービスにおける活用法を考えてみてはいかがでしょうか。