どのような業種であっても、ユーザーの満足度向上は、企業の成長に欠かせません。

満足度の向上のためには、商品やサービスの質そのものを向上させる、価格以上の体験を提示するなどに加えて「カスタマーサポートを充実させる」ことも欠かせないポイントです。

そこで今回は、よりよいカスタマーサポートを整えるために意識したい3つのポイントを、品質向上のための5つのポイントとあわせて紹介します。

問い合わせ対応の3つのポイント

1.複数の問い合わせ先の確保

その場で少しでも早く解決したい人であれば電話で問い合わせたい、急ぎではないからメールで問い合わせたいなど、どのような問い合わせ方法を望むのかは人それぞれです。ユーザーが使っているツールやシチュエーションなどによっても異なります。

できるだけ広く対応できるよう、メール、電話、Webフォーム、各種SNSなど、複数の問い合わせ先を確保しましょう。

しかし、複数の問い合わせ先を持つことで管理コストが生じるので、管理体制を整えておくことが重要です。

2.自己解決手段の整備

「企業に問い合わせる」というのは、ユーザーにとって負担のかかる行為です。

そこで重要なのが、ユーザー自身で可能な限り問題解決できる仕組み作りです。
ユーザー自身で問題解決できると、ユーザーはもちろん、企業としても問い合わせに必要な時間や労力を削減できます。

ユーザーが問い合わせをしなくても問題解決ができる仕組みとして、よく活用されているのは以下の2つです。

1.「よくある質問」の作成

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引用:【楽天市場】ヘルプ・問い合わせ

想定できる問い合わせ内容を、あらかじめ「よくある質問」としてまとめておく方法です。

例えば、会員登録方法や退会方法、ポイントの確認方法などは、企業として想定できる質問でしょう。これらの解決法についてはユーザーが自分で解決できるように、わかりやすい文章はもちろん、丁寧な図解やスクリーンショット画像なども交えて解説しておけば、ユーザーは質問する必要がなくなります。

2.チャットボットの整備

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引用:【楽天市場】Shopping is Entertainment!

ここ数年で、チャットボットシステムは急激に発展しています。

チャットボットシステムを使用すれば、ユーザーは電話をせずとも即時に問題解決ができるようになります。
企業側としては、「効率のよさ」と「ユーザー1人ひとりに応じた対応」を両立できます。

チャットボットの活用方法はいくつかありますが、おおまかな問い合わせ内容についてボットシステムでヒアリングし、ボット上で解決策を提示できないようであれば細かい対応をオペレーターが引き継いでチャット上でメッセージのやり取りをする、という方法がおすすめです。

実際に例として挙げている「楽天市場」のチャットシステムでは、まずボットシステムでヒアリング・解決策の提示を行います。
その後「解決しましたか」という旨のメッセージが届き、そこで「解決していない」という選択肢をクリックすると、オペレーターへ引き継がれて個別メッセージのやり取りができるようになっています。

3.オペレーターの品質向上

フォームやチャットボットなどは、効率化は図れるもののユーザーの満足度も画一的なものになりやすい傾向にあります。

しかしオペレーターによる対応は、オペレーターによって満足度が左右されます。
ユーザーの期待に沿う対応をすることができればファンとして定着してくれる可能性も高位でしょう。一方、ユーザーに不満が残る対応をしてしまうと、ユーザーが離れていく可能性もあります。

具体的な対策としては、回答のテンプレートだけでなく、商品やサービスの情報をインプットしておくことなどが挙げられます。また、商品・サービス情報についてすぐ検索できるシステムの導入も検討するとよいでしょう。

品質向上の観点5つ

具体的に問い合わせ対応を向上させるためには、目指すべきゴールやどの点を重点的に強化するか、などあらかじめ設定しておくことが重要です。問い合わせ対応向上のために必要な5点を紹介します。

1.正確さ

品質向上において最も重要な要素は正確さです。
どれだけ早く、わかりやすいお問い合わせ対応であっても、情報が間違っていては意味がありません。

ミスは誰にでも起こるものと前提し、減らすこと・ミスをしたときのカバーについてあらかじめ対応策を練っておきましょう。

例えば、チェック回数を増やす、複数のチェック担当を持つ、システム内で完結するようにしてヒューマンエラーをなくすといった方法でミスの減少が期待できます。

ミスが起きた際はまず謝罪をし上席と交代する、慌てずに落ち着いて一度確認のためのお時間をいただくなどの対処法を徹底しましょう。

2.反応の速さ

ユーザーが問い合わせメールを送信した際、返信速度が遅いとユーザーの印象が悪くなる可能性があります。場合によっては問い合わせをキャンセルし、サービスの利用そのものをやめてしまうこともあるでしょう。

対策として、まずは「メールの場合は2〜3日以内に返信します」などの対応期間の目安を記載しましょう。

ユーザーとしては、どの程度で返信がくるのかわからないまま待つよりも、目安となる期間が提示されている方が安心です。

それでももちろん、ユーザーにとっては少しでも早く対応することが望ましいでしょう。チャットボットや自動音声案内などを活用してオペレーターが対応しなければいけない事案を減らす、シフト調節をして対応時間を長く設定するなどの対策も考えていきましょう。

3.柔軟さ

複数のサービスを運営している場合、ユーザーが問い合わせ内容に適している部署へ連絡してくるとは限りません。管轄外の質問を受けた際に「こちらの方ではわからない」などと回答してしまうと、「たらい回しにされた」とユーザーも気分を害してしまいます。

事前の対策などでユーザーを適切なお問い合わせ先に誘導することも大切ですが、想定外の問い合わせがあった際に柔軟に対応することも重要です。

例えば銀行で考えてみましょう。個人口座の開設だけではなく個人事業主や法人の口座を開設することもできますが、開設したい口座によって問い合わせ先は異なります。
特に個人事業主として口座を開設する場合、まず先に個人口座を開設しなければならないなどのルールもあります。問い合わせをしたくてもどこに連絡をすればよいのか迷ってしまうこともあるでしょう。

企業側としては「部署が異なるためわからない」という主張ですが、ユーザーとしては「同じA銀行のサービスなのに部署が違うからわからない、というのは不親切」と感じてしまうのは当然です。

正しいお問い合わせ先を提示する、担当部署へ電話をつなぐ、オペレーターが直接別のお問い合わせ先に連絡して回答を得る、などの対応でユーザー満足度を上げられます。

期待以上の対応をすることができれば、ファンとして定着してもらえる可能性も高まります。オペレーターの自由度を高くするなどして、ユーザーの要望に柔軟に答えられる仕組みづくりをしましょう。

4.悩みや問題を傾聴する

ユーザーの話を親身になって聞くことは、オペレーターにとって最重要といっても過言ではないほど必要不可欠なことです。
ユーザーはなにかしらの問題に困って問い合わせをするため、そこで悩みや問題に傾聴できない、ということは致命的です。

例えばあいさつ、丁寧な言葉づかい、抑揚をつけた話し方、ユーザーの話を聞き漏らさないようにメモを取るなどを心がけましょう。

基本事項ではありますが、ユーザーはこれらの基本事項の欠如を敏感に察知します。「悩みや問題を傾聴する」という対応策は難しいですが、いくつかの項目をピックアップしたチェックシートの作成、オペレーターの相互チェックなどの方法で対策できます。

不親切な対応をしていないかどうか、常日頃から内省する習慣を身につけましょう。

5.信頼感

信頼感は、ユーザーが「この企業に任せて大丈夫かどうか」を判断するための指標です。

ユーザーは様々な角度から信頼感があるかどうかを判別します。「ここに気をつければよい」ということは企業によって、またターゲットユーザーによっても変わりますが、わかりやすいホームページや誰でも使いやすいフォームを設計する、オペレーターの対応を企業が考える最高水準レベルに保つ、などが考えられます。

まとめ:カスタマーサポートを充実させて満足度向上を目指そう

「ユーザーの満足度を向上させる」というのは、必要以上にへりくだる、ということではありません。理不尽な要求があった場合は、毅然とした態度で接することも重要です。

カスタマーサポートは、ユーザーが商品やサービスを選択する際の判断基準にもなりえます。同じ商品を扱っているA社とB社があるとして、A社は非常に丁寧なカスタマーサポート対応をしていて、B社はマニュアルを意識しすぎてユーザーのニーズを汲み取れないとしたら、どちらの企業を利用したいかは一目瞭然です。

カスタマーサポートの重要性を認識し、自社が目指す水準をクリアできているのかを再確認しましょう。