10代の若者を中心としたスマートフォン向けショート動画SNSサービスの「Tik Tok」が目覚ましい成長を見せています。撮影した15秒のショートムービーを音楽やエフェクトで加工・編集して投稿できる「Tik Tok」は、世界150ヵ国以上で利用され、MAUは1億人以上と言われています。

米国調査会社センサータワー(Sensor Tower)の調査では、2018年Q1の全世界App Storeでのダウンロード数で、中国国外版の「Tik Tok」が、4580万回に達してトップの座に着きました。

一時的ではありますが、Facebook、Instagram、YouTubeといった他のSNSアプリダウンロード数を上回り、ダウンロード数世界一のiOSアプリとなったことになります。日本市場では、2017年11月にはiOS無料アプリランキングで第1位を記録しました。

なぜ「Tik Tok」は、ここまで急激な成長を遂げているのでしょうか。「Tik Tok」の成長について考察しました。

参考:
「Tik Tok」が世界一に App Storeダウンロード数(2018.Q1)

「Tik Tok」とは

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AppStore

「Tik Tok」を運営しているのは、中国にある「Bytedance」という企業です。1.2億人の読者を持つニュースアグリゲーターの「Toutiao」(今日頭条)を運営している会社でもあります。

「Tik Tok」の特徴は、15秒の「リップシンク(口パク)動画」です。余計な操作をせずに簡単に投稿できるので、動画編集や撮影の専門スキルがなくても利用できます。

世界最大の動画プラットフォームである「YouTube」動画視聴時間は、平均5分前後とされています。それと比べると、「Tik Tok」に投稿されている動画は15秒と短時間で撮影、視聴ができることがわかるでしょう

凝ったネタを考えなくても、口パク動画を次々と気軽に投稿していくことができるところから、日本では中高生を中心に火がつきました。口パクで利用できるBGMもあらかじめ数万種類が用意されています。

目次

  1. 「Tik Tok」が流行している3つの理由
    1. 「口パク」というハードルの低さ
    2. 拡散力の高さ
    3. 動画制作の簡単さ
  2. 企業の動き
  3. まとめ:動画SNSが流行る条件は投稿ハードルが低いこと

「Tik Tok」が流行している3つの理由

1.「口パク」というハードルの低さ

「Tik Tok」が流行している理由の1つとして、「口パクで投稿できる」という参加ハードルの低さが挙げられます。動画にオリジナリティを求められることが少ないことが、ユーザーにとってはメリットかもしれません。自分の身体と顔があれば誰でも投稿できるわけです。

YouTubeでは、オリジナリティのある著名YouTuberが次々登場しました。しかし、「Tik Tok」では、オリジナリティよりも既存の楽曲をいかにおもしろく利用するかが重要視される傾向にあります。これは、これまでの動画ブームの流れを変えるほどのインパクトを与えました。

2.拡散力の高さ

「Tik Tok」が流行している2つ目の理由としては、拡散力の高さが挙げられます。

実際に、TwitterやInstagramなど他のSNSではフォロワーの少なかった投稿者が、「Tik Tok」を始めた途端にいきなり数千のフォロワーを獲得するという例も報告されています。

成熟段階に入った他の動画SNSで始めるよりも、今まさにTake Offが始まったばかりの新鮮な「Tik Tok」からチャンネルを開始するユーザーも多いようです。これは「Tik Tok」や動画SNSだけのことではなく、急成長が始まったSNSに共通の現象です。

開始されたばかりのコミュニティでは、まずできるだけ多くの人をフォローして自分の視聴タイムラインを確立しようという動きが活発です。この初期に先行してチャンネルを始めるということが、多くの「いいね」やフォロワーを獲得するための非常に重要な段階と言えます。

3.動画制作の簡単さ

「Tik Tok」で作成・公開できる時間は15秒程度であり、YouTubeなどの動画メディアと比べて、短い時間となっています。
楽曲も用意されているため、専門的な企画スキルや動画編集スキルを必要とせず、誰でも簡単に動画を作成でき、ユーザー数を獲得しやすくなっています。

企業の動き

SNSのインフルエンサープロモーションを掲げる企業では、実際に活動しているインフルエンサーを中心に、従来のTwitter、Instagram、YouTubeの3セットに加えて「Tik Tok」のインフルエンサーも含めたプロモーションセットを提案するケースが出てきています。

インフルエンサープロモーションの特徴は、女子高生を中心とした「若年層女性」に対してダイレクトにアプローチできることです。「Tik Tok」の総フォロワー数だけで100万人以上をカバーできるプランも登場しています。

目まぐるしい「Tik Tok」の成長スピードに大手広告代理店も動き始めています。電通系ネット広告の株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)では、2018年7月3日に、「Tik Tok」向けのコンテンツ開発や広告商品の販売を強化するための、広告パートナー契約を締結したとリリースしました。

取り組みの内容として、具体的には「Tik Tok」に関連する広告プロダクト開発、販売支援、日本市場のニーズに合致したプロダクトの開発やプランニング〜運用、広告販売、さらにコンテンツ開発の支援やスポンサーコンテンツの開発などを挙げています。それに加えて、「Tik Tok」のインフルエンサーを招き、グループ社員向けに「Tik Tokに関するマーケティング講座」の開催なども行なっているということです。

またサントリー食品インターナショナルでは、4月17日に発売した「ペプシJコーラ」のSNS動画を制作。4月23日、5月1日、5月7日と3週に分けて公開した動画12本は総再生数が1527万6500回以上を達成しています。SNSを中心に話題が拡がり、動画で踊っているダンスを2万人以上が真似して投稿しているほど話題になりました。この動画の撮影にも「Tik Tok」が使われています。

参考:
CCI、Tik Tok向けのコンテンツ開発および広告販売を強化するための広告パートナーシップ契約を締結

その他にも2018年10月19日にはエイベックスが提携を発表し「Tik Tok」に約2万5000曲を追加しています。低額制音楽配信サービスを提供する「AWA」も提携を発表しており、音楽業界も「Tik Tok」がきっかけで楽曲の認知が広がることなどを受け、高い関心を寄せています。

まとめ:動画SNSが流行る条件は投稿ハードルが低いこと

「Tik Tok」で流行に火がついた「リップシンク(口パク)」は、これまでの動画SNSや、「大人」にはヒットするとは想像のできなかったジャンルです。

従来であれば、「人マネ」であったり、どちらかというと「恥ずかしい」とされるコンテンツが注目を浴び、大企業のプロモーション担当部署を動かしているという状況をみると、今後の動画SNSや動画アプリの向かう先が少し見えてくるように思えます。

まず絶対条件は「投稿のハードルが低いこと」なのではないでしょうか。

動画に限りませんが、これだけ市場にネットコンテンツが溢れている時代になると、純粋なオリジナルコンテンツを作って配信することのできるユーザーは限られてきます。たとえ配信自体は模倣であっても、その模倣のセンスを競う段階に入ったのかもしれません。

リップシンクは究極の模倣=モノマネであり、そういう点からも現在の「Tik Tok」の隆盛がすんなり理解できるところがあると思いますし、今後の動きを予測するヒントもあるように感じています。