スマートフォンが普及してから、映画や音楽、ゲームや書籍といったエンタメコンテンツはすべてスマートフォン1つで楽しめるようになりつつあります。

なかには「テレビよりもスマートフォンで動画配信サイトを視聴する」「コンシューマーゲームはやらないけどスマートフォンでゲームはする」という方も多いのではないでしょうか。

スマートフォンでエンタメコンテンツを楽しむことが当たり前となった今、企業はどのようなことを意識してコンテンツやプラットフォームを提供していくべきなのでしょう。

2018年8月24日に株式会社フラー主催のカンファレンス「スマホファーストの次を探そう。」が開催されました。

エンタメコンテンツ制作に関わる4社が「スマホ×エンタメの未来」をテーマに セッションした様子をレポートします。

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登壇者プロフィール

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(左より)
SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田裕二 氏
株式会社meleap CEO 福田浩士 氏
株式会社セガゲームス 上席執行役員CSO 岩城農 氏

モデレータ:フラー株式会社代表取締役CEO 渋谷修太 氏

ヒットコンテンツのカギは「共感」と「落差」

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渋谷 氏:
エンタメコンテンツがヒットするカギはどのようなものだと思いますか?

前田 氏:
おもしろいってなんだろうと考えた時に、2つに分類できると気付き始めたんです。1つ目「共感」、2つ目は「落差」です。「ギャップ」と表現してもいいですね。

今「カメラを止めるな!」って映画がヒットしているじゃないですか。これがヒットした理由はとてもシンプルで「制作費が300万円なのにおもしろい」からなんです。つまり「〇〇なのに〇〇」がヒットの秘訣です。

なぜ落差が重要なのかというと、ヒットには「拡散」が必要だからです。拡散したくなるためには「意外性」「落差」が必要です。例えば、ただ普通に「カメラを止めるな!が楽しかった」だけでは語りにくいんですよね。「カメラを止めるな!」は、人が語りたいところにうまく紐づいているんですよ。結局は、「お金じゃなく、アイデアだ」ってみんな言いたいんですよ。

今の時代は「落差」がヒットのベースになっているので、自分がコンテンツを作るときにも意識をしていますね。

渋谷 氏:
「SHOWROOM」ではどのような落差を意識しているのですか?

前田 氏:
僕らはあくまでコンテンツではなくてプラットフォームを作っています。なので、1つひとつのコンテンツのおもしろさは演者に委ねています。ただ基本的には、偶像と身近の落差だと思っています。

「SHOWROOM」は身近を演出できるプラットフォームです。アイドルのように偶像側の人がちょっと身近にくると、「この人ってアイドルなのにこんなに親しみやすいんだ」という落差が生まれて心が近づいていきます。僕らが台本を渡しているわけではないけれど、間接的にそういう仕組みが設計できているような状態です。

渋谷 氏:
SEGAの場合はどうでしょうか?大御所ならではの期待値の高さなどもあり難しさもあると思いますが……。

岩城 氏:
コンテンツを売る側から話すと、「何を1番伝えたいか」を自分でわかっていないといけないと思います。今の時代は、自分の興味があるコミュニティに辿り着きやすい世の中です。どんどんソリッドにしていった方が伝わる。それって売る側がコントロールするものではなくきっかけを作っていくということは、落差とも言い変えられるでしょう。なので売る側も「1番伝えたいことは何か」を強く意識する必要はありますよね。

みんな自分が興味のあるコミュニティを探している中で、そのようなコミュニティをどうやったら作っていけるのか。同じものに興味がある人が集まってくるということから、ドラマが生まれますし文脈が出てきますし、それを続けていくと発言する方も増えていきます。それがどれだけ拡散性があるかっていうのはコンテンツにもよりますが……。

渋谷 氏:
ということは、やはりコミュニティを意識しているということですか?

岩城 氏:
ありがたいことにお客さまとの距離は昔よりも確実に近くなっています。そこをさらにどうやって詰めていくか。自分たちが作っているものを自分たちが1番愛しているのであれば、それがやりたいことでしょうし、やるべきことなはずです。そういった意味で、コミュニティを意識しているというのはあります。

前田 氏:
もう1つロジックがあるとすると、ストーリーがあるかどうかですよね。ストーリーとは、終わった後につい誰かに話したくなることだと思っています。今この話を聞いて、そのあと誰かに伝えてくれたら、それはもう僕の中でストーリーです。

人に伝えたくなる話の1つとして「おもしろい」がある。おもしろいの中に「共感」と「落差」があって。おもしろい以外にも色々あるんですけど、今はおもしろいの中の落差がヒット角度が高いと感じています。

だからこそ、「ついほかの人に伝えたくなるかどうか」を作り手側は大事にするべきだと思っていますね。

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渋谷 氏:
ARやVRなどの新しいテクノロジーでビジネスしている福田さんはどうですか?

福田 氏:
ストーリーは僕ら株式会社meleapも追求しているところです。僕らの場合は店舗ですので、お客さんがわざわざ時間をかけて店舗まで来てくれています。家でもゲームができるのに、わざわざ店舗まで来てくれている。

その理由としては、出会いがあると思います。そこに行けば仲間がいて、楽しい時間が過ごせて、その仲間とうまい飯が食える。そのストーリーは大事にしていますね。

動画の未来はどうなる?

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渋谷 氏:
動画の未来はどうなっていくと思いますか?

前田 氏:
動画には「幅」か「深さ」かという2つの切り口があります。今までは何人に認知されたかという「幅」が重要視されて来ました。でもこれからは「深さ」が重視されると思います。コンテンツへの入り込み方によって、1インプレッションあたりの単価が100倍ぐらい変わってもおかしくないと思っています。

これからの動画は、より深く入り込めるものを作っていけるかどうかです。なぜ深さが重要かというと、深さがビジネスになり始めているからです。2017年の上半期アプリの売上で「Netflix」を超えて「SHOWROOM」が1位ですってなったことがありますが、これは1人ひとりの深さが「SHOWROOM」は深くて、それをマネタイズできたからだと思っています。

広告業界でも同じことが起きると思っていて。深くユーザーに刺さる動画は1インプレッションあたりの単価がどんどん上がっていくだろうと。

じゃあどうやって動画で深さをとれるかって話になりますよね。深さを取るには「クオリティ」か「リアリティ」のどちらかだと思います。「ONE MEDIA」の明石ガクトさんなんて、1本1千万円以下では動画を作らないと言っています。自分たちは一定のクオリティ以下のものは作らない。お金をかけて、ユーザーの共感や感動を呼び起こすものを作ってグッと入っていく。

渋谷 氏:
それはすごく共感できます。フラーでもお客さんのサービスのアプリを開発するってことをやっていますが、予算がある程度ないとやらないようにしていますね。結局うまく行かなくなってしまうので。

前田 氏:
「スターウォーズ」などの映画もそうですよね。膨大にお金をかけてクオリティ側に寄せている。

そしてもう1つは「リアリティ」で、全く逆のことをします。どれだけお金をかけずに、次の瞬間に何が起きるかわからないドキドキを生み出せるかということで深さを作っていくんです。

エンタメコンテンツの10年後

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渋谷 氏:
スマートフォン、動画、ゲーム、AR/VRなど、様々なエンタメコンテンツがありますが、10年後のエンタメコンテンツはどうなっていると思いますか?

岩城 氏:
正直なところ、10年後はわからないですね(笑)
日本の会社はどうなって行くかという視点で話させてもらうと、もう少し自分たちが何者かを考えて海外に向けてやっていかなきゃいけないと思います。

というのは、日本は同質性が高い民族だからユーザーの顔が想像しやすいんです。でも海外に発信するのであれば、そうはいきません。どれだけデータドリブンになるかというのがすごく重要で、データを重ね合わせてアナリティクスをしていかなければいけない。

コンテンツそのものについてはどうせ想像がつかないものなので、おもしろいと思ったことをやるしかありません。

福田 氏:
僕は人間の妄想をもっと具現化できるような力が欲しいです。言葉にしなくてもいいからコミュニケーションが自由にできて、もっと進化できるようなプラットフォームが作りたいと思います。

前田 氏:
僕はコンテンツの供給側と受け手側がもっと曖昧になって行くと思います。受け手が供給側になっていくって現象がもっと起きていくと思いますね。「SHOWROOM」もそうですし、「YouTube」もそうですよね。

あとは、もう1人の人格、現実世界とは別のアイデンティティをみんなが持っている時代がくると予測しています。アバターって概念は今までもありましたけど、あれを本気でやりきろうと思っていて。

現実世界って生きにくいじゃないですか。見た目が嫌とか……。僕らは今はまだ見た目もフレッシュですけど、だんだんとそうではなくなっていくと思うんです。現実世界で僕らが抱えているコンプレックスや今後抱えるコンプレックスを排除した世界の方がいいのではないか、ということです。その世界は今はまだ居心地がよくないけど、今後はどんどんそっちの世界にいくかもしれない。今でもすでにバーチャルYouTuberが出てきていますよね。

テキストを認識して音声転換したり、動画をテキストに転換したりできるテクノロジーも進んでいます。例えば、裏側でバーチャルYouTuberが手話をしていて、手話をテキストにする。そしてテキストを音声に転換すれば、「こんにちは、バーチャルYouTuberです」と画面上で話している子が、実は裏側では声が出なくて耳も聞こえない。けれども、視聴者側からすれば障がいを持っている人と思わないじゃないですか。そういったものを活用すれば、障がいもまったく関係ない世界になっていく。

そんな世界が作れたらいいなと思いますね。

まとめ:人に話したくなるようなコンテンツ制作を

ブログやSNSなど、個人が発信する機会が増えている今、ヒットコンテンツを作るにはどれだけ情報を拡散してもらえるかが重要となります。

情報を拡散してもらうには、コンテンツに触れたユーザーに、「これはおもしろい」「人に話したい」と思ってもらう必要があるでしょう。

その際、このコンテンツは共感してもらえるのか、意外性があって話したくなるのかといった視点からコンテンツ制作を初めて見るとよいのではないでしょうか。