「週2日で正社員」というオファーが「複業社員」きっかけに

飯髙:
ところで西村さんは、株式会社HARESの代表取締役でありながら、ランサーズ株式会社の「複業社員」でもありますよね。フリーランスとしての参画ではなく「社員」を選んだっていうのはなぜですか?

西村 氏:
実は、2017年6月からタレント社員という形でジョインしていました。きっかけ自体は(今年の5月に退任してしまったのですが)「フリーランス協会」で立ち上げの記者会見の司会進行を引き受けたことです。

その2週間後ぐらいに理事になってほしいと依頼を受けました。そうしたら、理事の1人にランサーズ広報の潮田沙弥さんっていう女性の方がいて、彼女と話しているうちにランサーズの目指す脱クラウドソーシングという考え方に共感したのが大きな理由ですね。

「顔の見えないクラウドから、顔が見えるタレントへ」みたいなオープンタレントプラットフォーム構想を掲げており、複業も含めたフリーランサーの生活を支援するフリーランスの生活圏・経済圏を作っていくんだっていう話をしてて面白いなと思ったんです。

潮田さんと話した翌週ぐらいに社長の秋好陽介さんと30分ほど会議室で話す機会があり、「どういう形でやるのがいいですかね」みたいな話をしたところ、向こうとしてはぜひ正社員としてジョインしてほしいみたいな感じでオファーいただきました。

会社を経営していたので正社員としてはお断りしようとしたところ、「週何日だったら大丈夫?」と言っていただいたんです。

こういうケースって、業務委託契約が多いのですが、業務委託ってどこまで行っても業務委託だから、会社の情報とかっていうのを全て見れるわけではないんですよね。決して「同じ船」には乗れないから、週2日でもいいから社員としてやろうと言ってくれて、複業正社員になりました。

フリーランス(業務委託)契約の限界

飯髙:
業務委託である以上いつまでも業務委託という話がありましたが、結構フリーランスの人ですごい優秀なスキルを持っているのに、業務委託という契約上、深く入れないという方もいますよね。

西村 氏:
そうですね。フリーランサーはそうですよね。

飯髙:
ランサーズの複業社員のような取り組みをしている会社は、IT業界でこそ広まり始めていますが、まだまだ少ないですよね。

現状だと、フリーランスの方と契約していても、どうしても自社で不足したリソースを補う「機能」のような位置付けになってしまうことがあります。

だからこそ、事業に踏み込めずにいるフリーランスも多いんじゃないかなと。

西村 氏:
そうです。だから一般的にフリーランスは(組織で)機能しなくなった瞬間に「さよなら」なんで……。

フリーランスと企業の双方にメリットがある2つの解決策

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飯髙:
企業としてもフリーランスとの取り組みをする上で難しいことがありますよね。契約した条件の中で業務を依頼しなければならないという制約がある。

仮に領域を超過した場合の対応をどうするかと考えなければならないですからね。フリーランスの方のディレクションってすごい難しいなと思っていて。この課題はどうやったら解決できるんだろうか……。

西村 氏:
そうですね。どこからどこまで踏み込んでいいのかな、みたいになりますから。解決策としては、2つあるかなと思っています。

1つ目は企業側がフリーランスを保証するということ。最近、パートタイム正社員というのが話題になっていますよね。時給制で給料払っていく正社員というのをもっと促進させようというものです。

そういう形で、僕みたいな(複業社員のような)働き方が増えれば、最初は業務委託として契約していても、この人ともっと深く仕事したいなと思った時に、「うちで社員として働けない?」ってオファーができるわけです。

でもフルタイムっていうカードしかなければ、「いや、ちょっと自分の仕事は引き続きやりたいんで」となってしまいます。業務委託で週2回と、社員で週2回では割く時間変わりません。それならば社員で良いっていう選択肢が増えますよね。

2つ目が、フリーランスの活用の仕方をナレッジ化しシンクタンク的なものを作ることです。それにより、日本のフリーランスマネジメントのレベルを高めていくんです。

例えば、なぜかフリーランスには残業代っていう概念がないんです。稼働30時間を5時間超えたときに、どう扱うのか。

弁護士などは、顧問契約を結んでいる1時間単位の料金(チャージ料金)で取ってくるわけですよ。でもそれって当たり前のことだと思っていて、それをフリーランスの業界にも導入する。

そのためには重要なのはフリーランスを適切に管理するフリーランスマネジメントシステムです。

海外だとUpwork(アップワーク)というフリーランスのマネジメントプラットフォームを提供する企業があり、マッチングやフリーランサーをマネジメントできるサービスがあります。

そこでフリーランサーがどれぐらい稼働してるっていうのがちゃんと管理できるようになっていて、超えたら超えた分チャージしてもらえるような仕組みがあるんですよね。テクノロジーの問題で解決するという観点があると思います。