スマートフォンやタブレットだけでなく、IoT機器など様々なデジタルデバイスから顧客の行動データが取得できるようになり、企業のマーケティングで一人ひとりの行動を把握することが重要になっています。

企業と顧客との接点が多様化する中で、企業が取得できるデータは膨大です。データは複数のツールの利用によって断片的になりやすく、多くの企業ではデータを数値として取り扱っていて、データの向こうにいるひとりの顧客や人そのものを理解できてはいないでしょう。

取得したデータから顧客をとらえ、ただ商品を提供するだけでなく、顧客が企業との接触で体験することすべてを視野に入れるのがCXです。

本連載ではCXとは何かを理解し良い顧客体験をつくる考え方を、CXプラットフォームKARTE(カルテ)を提供する株式会社プレイド社監修のもとに展開していきます。

今回は近年注目を集めるCXの概念や定義について解説します。

CXとは

CXとはカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)の略語です。顧客体験と日本語で訳されるように、「顧客が企業との接触で体験することすべて」であり、商品やサービスの物理的価値だけでなく、それらを通じた一連の体験を視野に入れた考え方です。

例えば、広告での接点から、ウェブサイトへの訪問、製品の購入、製品の利用、カスタマーサポートへの連絡時など、カスタマージャーニーにおける企業とユーザーとのすべての接点を含みます。CXは、これらの接点におけるすべての体験を向上させる取り組みを指し、顧客との良好な関係を築くことで、長く製品を愛用してもらうことを目指すものとなります。

ひとつの事例として、ダイレクト保険会社の「ソニー損保」でのCXの創出があります。短期的には損をすることでもありのままを伝えることでロイヤルティが向上したり、部門横断でCX改善する、NPSを共通言語にしてCX改善するなどの取り組みを行っています。

お客様に対してフェアでありたいという企業文化をもつ同社は、顧客利益を最優先することで結果的に自社の収益向上にもつながることを実証しています。

参考:
大野隆司、有園雄一著(2018).「カスタマーエクスペリエンス戦略」日本経済新聞社発行 
LTVとは | ferret

なぜ今CXが必要なのか

顧客を知り、顧客ニーズに応えることはビジネス、とりわけマーケティングの領域で重要視されてきました。

ただ、最近では顧客のニーズや購買行動は多様化し、単に「価格が安い」「ある特定の機能がある」といったことだけでは商品やサービスが売れにくく差別化が難しくなっています。

さらに、顧客は日々様々な情報に触れているために、ある1つの商品にだけ、興味を持っているというよりは、すぐに別の製品やサービスに関心が移ってしまいがちです。

顧客へアプローチをするにあたり、従来のマーケティングの購買ファネルにあるような「認知」「関心」「検討」「購入」といった一連の流れをたどるだけでなく、生活者の行動の背景にある思考や感情も把握し、顧客(エンドユーザー)に合わせた体験を提供することが重要になってきています。

つまり重要なのは

・一連の思考や行動、及びその背景にある感情にも注目する
・顧客(エンドユーザー)へ適切な良い体験を増やす

ということです。

顧客ロイヤルティの重要性が高まっている

「所有から利用へ」の消費スタイルの変化に合わせ、従来の買い切りモデルから、NetflixやSpotifyに代表されるサブスクリプションモデルのサービスが次々に誕生し、企業にとっては短期的な売上などのKPIを追うことよりも、どう利用し続けてもらうか、顧客との長期的関係性の構築、つまり顧客ロイヤルティを高めるという活動の必要性がますます高まっています。

短期的に数値には現れなくても、顧客ロイヤルティを指標として追うことで、長期的な成果が見込めるのです。

CXは全社で取り組む

顧客ロイヤルティを高めて長期的目線での成果を出そうとしたとき、企業のマーケティングそのものを顧客目線に変えていく必要があります。それがCXデザインであり、例えばオムニチャネルへの対応や、オフラインとオンラインでの購買行動の一元化、クロスデバイスでのトラッキングへの対応などが、企業にとって必要になっています。

顧客のサービスに対する接点を把握する上ではこれらは1つの部門で完結できるものではなく、企業のマーケティング部をはじめ、経営層から企画や営業、エンジニア、CS(カスタマーサポート)まで、顧客の存在や体験が、様々な部署の共通言語や共通のKPIとして機能することが必要なのです。

CXの5つの要素(バーンド・H・シュミット)

CXという言葉はアメリカの経営学者であるバーンド・H・シュミットが1999年に出版した書籍の中で提唱されたのが始まりだとされています。

バーンド・H・シュミットはCXを以下の5つの要素に分けて説明しています。

参考:
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?“体験への価値”を高めるために知っておきたいこと

【1】SENSE(感覚的な経験価値) 
レイアウトやBGM、香りなど、五感を通じて得ることができるものによってもたらされる価値を指します。

【2】FEEL(情緒的な経験価値) 
丁寧な接客や気配りなど商品に付随するサービスを組み合わせることで、ユーザーの感情に働きかけて生み出される価値を指します。

【3】THINK(創造的・認知的な経験価値) 
商品や企業のコンセプトなどを前面に押し出すことで、ユーザーの知的好奇心や探求心を刺激して生み出される価値を指します。

【4】ACT(肉体的な経験価値とライフスタイルに関わる価値) 
人間の体に関する経験に訴え、日々の生活やライフスタイルに変化を起こすことで発生する価値を指します。

【5】RELATE(関わる集団や文化の中での交流) 
集団や組織への帰属意識に関連して生み出される価値を指します。
ソーシャルメディアで人気の商品」や「Webで人気の商品」として価値を高めます。その他にもアーティストのファンクラブやグッズなどが典型的なパターンです。

上記の5項目に着目し、顧客一人ひとりの体験や感情を深く理解することで、顧客に応じたサービス・体験を生み出すことができ、CXが向上します。

まとめ:顧客を深く知り、体験をつくるCX

CXは「顧客が企業との接触で体験することすべて」であり、商品やサービスの物理的価値だけでなく、それらを通じた一連の体験を視野に入れた考え方です。多くのデータが入手でき、マーケティングに生かすことができる現在ではマーケターは数値を追うばかりになり、数値の向こう側にいる顧客への理解を疎かにしがちです。

顧客を理解して良い顧客体験をつくるひとつの方法として、来訪者のあらゆるデータとあわせて情報を解釈し、サイトに訪問中の「いまこの瞬間」の状況をリアルタイムに可視化し、顧客の目線から顧客中心の体験をつくるCXプラットフォーム KARTE(カルテ)があります。

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商品やサービスをただモノの提供といった物理的な面だけでなく、体験として一連の流れで捉えることができます。顧客をより深く知り、良い顧客体験をつくりたい方は利用してみましょう。