
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?“体験への価値”を高めるために知っておきたいこと
- 2018年4月25日
- ニュース
現代の日本では「買えないものはない」と言っても過言ではないほど、たくさんのモノやサービスにあふれています。
そのため、商品やサービスなどの「物質的な価値」の提供に注力することは当然ですが、ここばかりに目を向けていては競合他社と差別化することは難しいのが現状です。
例えば、「A社の企業・ブランドの商品やサービスを利用したい」という選び方ではなく「こういう商品やサービスを利用したいから探してみたらA社が1番やすかったから選んだ」という ユーザー 行動が発生しやすくなります。
そこで重要となってくるのが「カスタマーエクスペリエンス(CX)」です。物質的な価値に加えて、 ユーザー に対してどのような「体験」を提供できるのか、にも注力することで「A社だから選んだ」という ユーザー を増やすことができます。
今回は、そもそもカスタマーエクスペリエンスとはなにか、についてご紹介します。
あわせて意識するメリット3つや向上のために最低限知っておきたいポイント3つ、より考えやすくするための5つの分類についてもご紹介しています。
なかなか自社の売上が伸びない、他社との差別化の方法に悩んでいる、などの場合は、カスタマーエクスペリエンスの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
カスタマーエクスペリエンスとは
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、「Customer Experience」の略称で「顧客が体験する価値」のことを意味します。
商品やサービスの物質的、金銭的な価値だけではなく、商品やサービスの購入前の販促〜購入後のサポートなど、自社の商品やサービスに関連する顧客体験すべてが対象です。
例えば、雰囲気のよいカフェでコーヒーを飲むと仮定します。
ここで ユーザー が受け取る「物質的な」価値はコーヒ1杯分ですが、心地の良いBGMやこだわりの家具、室内の レイアウト などが優れていると、 ユーザー はコーヒーの価値とは別の「快適さ」という価値を受け取ることができます。
商品を購入したりサービスを利用したりなどの際に ユーザー が得られるカスタマーエクスペリエンスが期待以上であれば、 ユーザー はその会社を気に入りリピートしてくれる可能性が高まります。
さらにその評価が口コミなどで広がり新たな ユーザー を呼び込むようになると、顧客ロイヤルティの向上にも繋がります。
カスタマーエクスペリエンスと似たような言葉として取り上げられるものに「顧客満足度( CS )」があります。
顧客満足度はユーザーの不満を解消することに主眼を置くことに対し、カスタマーエクスペリエンスはユーザーの期待を上回る価値を生み出すことに注力します。
マイナスをなくすことに注力するのか、プラスを生み出すことに注力するのか、という点が両者の大きな違いです。
カスタマーエクスペリエンスを意識する3つのメリット
1. リピーター の獲得を狙える
ユーザー
の期待を上回る価値を提供することができれば、その
ユーザー
が
リピーター
になってくれる確率は大きく上がります。
一度
リピーター
になってもらえると、ビジネスの安定性につなげられるだけでなく、ブランドとしての確立にも近づきます。
2. 口コミ による波及効果が狙える
よい商品や良いサービスに出会った場合、人はそれを誰かに教えたくなるものです。
自社がよりよい価値を提供することができれば、その評判は
口コミ
によって広まります。
その流れに乗ることで、
広告
を活発に展開せずとも多くの人に商品やサービスを認知させることが可能です。
新規顧客獲得のためには既存顧客の5倍のコストがかかるという「1:5の法則」から見ても、 口コミ による波及効果は無視できません。
3.ブランド乗り換えのリスクを抑えることができる
何においても、よいうわさ以上に悪いうわさは広まりやすいものです。
カスタマーエクスペリエンスにおいてもこれは同様で、質の低下は
ユーザー
離れに直結します。
ユーザー
に長く愛され続けるためにも、カスタマーエクスペリエンスの向上は必須です。
カスタマーエクスペリエンスを向上させるポイント3つ
1.ミッションステートメントを定義する
ミッションステートメントとは、経営理念や社訓などを実際の行動方針に具体化したものです。
「会社としてどのようなことに取り組み、どのような価値を生み出すのか」
これが社員全体に浸透していなければ、会社全体として価値を高めていくことは難しくなります。
経営者自らがトップダウン型で会社の方針を示し、社内が一丸となって価値創造に取り組みましょう。
2. カスタマージャーニー マップを使って考える
カスタマーエクスペリエンスを向上させるには、
ユーザー
の行動を理解することが重要です。
そのユーザーの行動把握に有効な
フレームワーク
の1つに、
カスタマージャーニー
マップがあります。
カスタマージャーニー
マップとは、
ユーザー
が商品やサービスを購入するまでにどのような接触タイミングがあるのかを可視化する図です。
これを事前に作成することで、どのようなタイミングで
ユーザー
にアプローチができるのか、どのような改善を図れるかを知ることができます。
カスタマージャーニー マップの作り方については、ferretの以下の記事でご紹介していますので、参考にしてみてください。
カスタマージャーニーマップとは〜作成するために最低限知っておきたい基礎知識と活用事例|ferret [フェレット]
3.数値目標を設定する
カスタマーエクスペリエンスは目に見えない価値ですので、数値目標を設定して厳格に計画を進めていく必要があります。
例えば「今年度の売り上げ目標のうち、○%はカスタマーエクスペリエンスの向上で達成する。そうするための施策はこれこれで、その評価軸は…」といったように、具体的な数値目標を定め、そこから逆算する形で行動計画を設定することが効率的にカスタマーエクスペリエンスを向上させるコツです。
カスタマーエクスペリエンスの5つの分類
カスタマーエクスペリエンスは、基本的に以下の5つの経験価値に分類されるのが一般的です。
具体的な内訳を知ることで、自分たちの商品やサービスがどのような観点を強化すれば良いのかを知ることにつながります。
それぞれの特質を把握し、自分たちの強みはどこか、
ユーザー
のニーズはどの要素にあるか検討する要素の1つとして活用してみてはいかがでしょうか。
参照:経験価値とは|マーケティング用語集|株式会社エスピーアイ
1.SENSE(感覚的経験価値)
レイアウト やBGM、香りなど、五感を通じて得ることができるものによってもたらされる価値のことを指します。
先に例として記述した居心地のよいカフェを想定すると、コーヒー1杯を買ってそこで飲むだけでも、空間の居心地がよければコーヒー1杯分以上の価値を提供することができます。
この「居心地の良さ」がユーザーの期待を超えていた場合、こちらのカフェのカスタマーエクスペリエンスは高いと言えます。
2.FEEL(情緒的経験価値)
丁寧な接客や気配りなどで、 ユーザー の感情に働きかけて生み出される価値のことを指します。
「あの店員の接客がよかったので、またあのお店に行きたい」と思った経験はありませんか?人間は感情に左右されやすい生き物です。
実際の商品やサービスに対する評価よりも、それらを購入するに至った感情の動きで店を判断することはよくあります。
ディズニーランドやリッツカールトンホテルといった接客のレベルの高さで知られるこれらの企業は、この感覚的経験価値を非常に重要視しています。
3.THINK(創造的・認知的経験価値)
商品や企業の コンセプト などを前面に押し出すことで、 ユーザー の知的好奇心や探求心を刺激して生み出される価値のことを指します。
例えば、最新技術が使われているパソコンが発売されたと仮定します。
ユーザー
は最新機能を搭載したパソコンを使うことで快適に作業できることに加えて「時代の最先端の技術を体感している」という感覚も味わうことも可能です。
新しい機能でどのようなことができるのか、どれほど便利になれるのかといった好奇心をくすぐるようなカスタマーエクスペリエンス設計を行うことで、機能以上の価値を作り出すことができます。
4.ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)
日々のライフスタイルに変化を起こすことで発生する価値のことを指します。
例えば、電車で通勤中にスマートフォンで簡単に文書作成ができる アプリ を仮定すると、 ユーザー はその機能性が生み出す価値を受け取れることはもちろん「時間の効率化が生む快適さ」の価値も同時に受け取ることになります。
人々のライフスタイルに自社の商品やサービスが受け入れられれば、 リピーター になってくれる可能性も高まります。
5. RELATE(準拠集団や文化との関連づけ)
集団に対する帰属意識に関連して生み出される価値のことを指します。
アーティストのファンクラブやグッズなどが典型的なパターンです。
ファンクラブに入会したりグッズを購入したりすることにより「自分はこの人を応援している」「この人の活動に貢献できている」といった意識を呼び起こすことができます。
多くのファンクラブの会員は、実際の特典よりこうした応援したいという気持ちに突き動かされて入会したのではないでしょうか。
それほどまでに、準拠集団という価値は大きいのです。
まとめ
カスタマーエクスペリエンスの向上を図ることは重要なことですが、間違った方針で計画を進めてしまうと効果が薄くなってしまう可能性もあります。
企業目線で考えすぎてしまうと、実際のユーザーの行動とズレが生じる可能性があります。企業側が考えた通りに ユーザー が行動するとは限らないので、アンケート調査などを通して、 ユーザー の声を多く取り入れたカスタマーエクスペリエンス設計をすることが大切です。
また、 ユーザー の不満解決を目的にしないも重要なポイントです。
ユーザー の不満を解決すること自体は重要な作業ですが、これらの作業は商品やサービスのマイナス面をプラマイゼロにする作業であり、価値そのものを高めるための作業ではありません。
カスタマーエクスペリエンスの向上は、プラマイゼロからプラスにしていく作業です。競合との差別化を図るためにも、カスタマーエクスペリエンスでは「どのような工夫をすれば ユーザー が価値を見出してくれるのか?」と常に自問自答して独自の強みを作ることに意識を向けるよう心がけましょう。