黒字化となった理由とは

ferret:
2017年に黒字化したとお伺いしました。その理由はどのようなところにあるのでしょうか。

川口氏:
以前、ハフポストのスポンサードコンテンツは、1社専売体制でした。その体制からいまは、いろいろな代理店さんに直接営業するようにしました。また、クライアントにも直接取引するようになり、自社でコントロールできる幅が広がったこともあるのではないでしょうか。

こうしてスポンサードコンテンツの数を増やし、単価も少し上げました。数をこなして間口を広げていったのです。また、編集記事のPV数と連動するアドネットワークでの収入も増え、その相乗効果で黒字化したという感じです。

今までスポンサードコンテンツの料金メニューは1つでしたが、先方の予算によってカスタマイズしたことで受注増にもつながりましたね。そこまで予算を出せないクライアントにも、広告誘導の期間を縮小するとか、想定PVを下げるとか柔軟に対応しています。

人気メディアを運営する上でのコミュニケーション

ferret:
ジャーナリズムを大切にする編集部と広告を販売するPartner Studioでは、メディアの方針として食い違うことはありませんか。

川口氏:
ハフポストでは、編集部の記者が社会的意義のある記事を書くほか、自分の興味のあることを取材して記事化します。それらの編集記事から生まれる、読者が日頃から親しんでいる「ハフポストらしさ」をPartner Studioで抽出し、企業の課題感に合わせて切り口を提示することを重要視しています。

また、フリーアドレスなので、編集部とも同じフロアにいます。なので、読者にアピールするホットトピックスなどを編集部からヒアリングして、切り口案の参考にすることもあります。

Partner Studioでは、提案型の営業から決定後のオリエン、執筆、代理店とのやり取りも、書く人間がやる場合があります。

また、クライアントも、ネイティブアドをやりなれている方ばかりではありません。
中にはスポンサードコンテンツでは表現しづらい要望を出される時もありますね。そういう時はコミュニケーションコストをかけてでも我々の経験値と手法をご説明し、信頼して任せてもらえるように対話します。

企業が伝えたいことに関しては、もちろん了承します。ただその伝え方の一番いい手法は、ハフポスト読者により近い私達が知っているので、そのバランスは「こちらのほうで調整させていただきたい」とお話ししますね。

ferret:
ただ、成果がでなかった場合に企業からのクレームを受けやすくなってしまいます。御社の作成物が効果がでるというのはどのような内容からくるものでしょうか。
川口氏
川口氏:
過去にハフポスト以外の複数の媒体で1つの商品を広告記事出稿されているクライアントがいました。ハフポスト以外の媒体では、クライアントの意向通り、商品紹介の説明で終わっていました。

私たちの場合は、ハフポストの読者が興味を持ちそうなテーマを設定し、商品紹介ではなく、その商品によってどのような利点が生まれるかを、記事を通して知ってもらう流れにしました。もしかしたらクライアントは渋々納得されていたかもしれません。

しかし結果的には他媒体と比較して、ハフポストに掲載された広告記事が一番読まれたんです。クライアントは、やっぱり「ハフポストいいよね」と。

なので必ずしも、クライアント様の要望どおりがいいとは限らないわけです。この話は、以前にNews Picksさんとイベントをした際も話題になりました。「バズを狙ってバズって終わった記事」と「広告主のいうことだけをきいて書いた記事」のどちらも、スポンサードコンテンツとして価値はないよね、と。

つまりインプレッション数だけでは広告としての効果は測れません。企業様の伝えたいことを最大限こちらで理解して、それをハフポスト読者に伝える際に、一番いい手法を知っているのは私達であるということを、説得して納得してもらうことが大事です。

ferret:
ただ、小さなオウンドメディアをやっている担当者は、なかなかそこまで強く言い切れないのが現状かと思います。
川口氏
川口氏:
そこが、すごく難しいところです。私達はスポンサードコンテンツを2013年からやっています。実績を作ってくれた先人たちのおかげで、ハフポストという媒体の認知も広まってきています。年月が経ってやっと言えるようになってきた部分もあります。

あと私達の場合は、編集部との連動が大きいと思います。編集部が作成した、多様性を重視したライフスタイル記事が話題になると同時に、企業のCSR訴求をテーマにしたスポンサードコンテンツの問い合わせも増えてきました。編集と広告の両軸で、メディアブランドとしてのハフポストはこういうところなんだ、こういうことができるんだとクライアントに認知されてきたように思います。

あとは、実際にコンバージョンにつながった例も多くなってきて、知見も溜まってきたので、経験値と実例で説明できるようになったのも一因かもしれません。