Z世代(生まれたときからインターネットが当たり前のように存在する「デジタルネイティブ」な世代)のような若年層の消費行動は、他の世代と異なり、消費意識が低いとされています。
そのため、若年層向けのマーケティングでは、プロダクト機能の向上だけでなく、自社のプロダクトの価値を創造し、「ブランドイメージを強化する」ことも重要な活動となります。
しかし、訴求内容・方法を、若者含め各世代へ適切に実施しないと、思うような効果は出ません。

2019年6月19日〜21日に東京ビッグサイトにて、販促・マーケティング総合展が開催され、様々な企業の講演が実施されました。今回はその中でも、若者をターゲットにした商品である、ライオン株式会社の口臭ケアブランド「NONIO」が手掛ける若者の心を捉えるためのブランディング戦略についての講演をレポートします。

登壇者

柳田 洋顕氏
ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー
1997年にライオン株式会社へ入社後、 ビューティケア部門の商品開発担当として、2007年に男の体の変化に着目したメンズケアブランド「Pro Tech」を立ち上げる。2015年から口臭ケアブランド「NONIO」に携わる。

NONIO(ノニオ)とは

NONIOは、2017年8月に口臭化学から生まれた、20〜30代の若者をターゲットにするオーラルケア商品ブランド。「ノー・ニオイ」から「NONIO」と名付けられた。
若者に絶大な人気を誇り、日経トレンディの2018年ヒット商品ベスト30にて10位を獲得。売上率は150%を達成し、発売当初から拡大し続けている。

若者にオーラルケアをどう“自分ごと化”させるか

オーラルケア全体の市場は伸びているものの、若年層における数字は伸び悩み、NONIOはその若年層にどのようにアプローチをかければよいかが課題となっていました。

柳田氏は、まず若者のオーラルケアに対しての現状を調査し、若者はオーラルケアに対して無関心であることを発見したといいます。

「20〜30代の若年層は他年代の層と比べてオーラルケア支出額が低く、アンケートを実施すると、自分の使用する歯磨き粉の名前がわからなかったり、マウスウォッシュは使用しなかったりと、オーラルケアに対して無関心な傾向でした。
別の調査では、現代の若者は「目立ちたくない」「嫌われたくない」と考えながら生活をしており、人に否定されないようなコミュニケーションを重要視する結果がわかりました。身だしなみに関する質問では、髪型や服装よりも、自分の口臭や歯の色を気にする割合が多いことが明らかとなりました。インターネットやSNSの普及により、自分の失敗や評判が拡散されやすい不安感が、若年層の心理状況を生み出す要因の一つともなっています」(柳田氏)

自己表現に消極的な若者の社会課題を解決したい

現代の若者は、オーラルケア商品に関心がないにも関わらず、自分の口臭は気になってしまう。それは、若者特有の「周りに嫌われたくないがゆえに自己表現に消極的」である部分に原因があります。
しかし、「若者はオーラルケアに関しては無関心である」という調査結果から、従来の予防歯科や歯周ポケットといった疾患への“啓発+機能訴求”のマーケティングとは異なる、別の視点で訴求を試みる必要がありました。

「口臭不安のストレスから若者を解放すると同時に、インサイト分析で明らかになった『周りに嫌われないために常に気を使って、人との距離を気にしすぎてしまう若者の生きづらさ』も解消したい」と柳田氏が述べるように、「商品の機能」ではなく、「ポジティブなコミュニケーションをサポート」に視点を変えて若者へ訴求しました。