新しいメディアの誕生は、新しい広告スペースの誕生でもあります。新聞やポスターなど写真と活字でのコミュニケーションの時代から、テレビCMで音声を伴う動画でのコミュニケーションが主流の時代に移り、インターネットの誕生によって「個」の興味に対してバナー広告などで精度の高いターゲティングメッセージが打てるまでに進化しました。

しかしインターネットは一方で情報爆発を生み、最近ではバナー枠そのものがそもそも目に入らない「バナーブラインドネス」というある種の"ユーザーの適応現象"が起こっています。そのため、Web広告黎明期には物珍しさもあってバナー広告のクリック率は1%を超えるものもありましたが、最近では平均クリック率は0.1%以下になっています。

そんな状況を受け、普段ユーザーが情報摂取しているSNSのタイムラインなどの「面」を使ってコミュニケーションを図る「ネイティブ広告」という手法が生まれました。広告表記はつくものの、友人の投稿や編集コンテンツと同じ場所・フォーマットで情報を届けられるため、バナー枠などよりも受容度が高くなることが期待されているのです。

さらに、ネイティブ広告のなかでも「編集部による語り口」によって読者に語りかけられる「記事広告」という手法は、今改めて注目が高まってきています。いつも読んでいる好きなメディアのトーン&マナーでコミュニケーションができる上に、編集部の「第三者目線」での紹介という構造的な説得力も持たせられることが他にはない魅力です。

ただ、編集記事で取り上げられただけではモノが売れないのと同様、単に自然な形で読者に届けただけでは読んではもらえても肝心の態度変容までは至りません。しかし現実には多くの場合、記事広告は*「広告っぽさをなくして読ませよう」としすぎるあまり、読後に何も残らないものになりがち*です。これから依頼する際にも、自分で書く場合にも踏まえておきたい"効く"記事広告を打つための3つのポイントをご紹介します。

①翻訳力:読者インサイトを知り尽くした編集部による「翻訳」

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本来は読者インサイトを踏まえた「ベネフィット変換」こそ、記事広告制作者の仕事です。商品・サービスの機能はそのまま伝えるだけではピンとこないため、普段から読者と向き合っている編集部が具体的な日常シーンなどにおいてのベネフィットに翻訳する。それによって初めて、読者は新しい機能の「価値」に気づき、自分ゴト化できます。

期待してメディアにオリエンしたはいいものの、オリエンシートそのままに記事があがってきて、掲載後もやはり無風でがっかり……というシーン、広告代理店や広告主の社内では割と日常風景です。これを回避するためには、オリエン時に機能紹介だけでなく、それらを適切に「読者に翻訳」してほしい旨を伝えるとよいでしょう。

②文脈創造:読者とブランドとの「新しい結び目」を作る切り口の発見

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ただ適切に機能を翻訳して伝えればモノが動くかといえば、そういうわけでもないのがマーケティングの難しいところ。ただ機能を分かりやすく伝えるだけの内容であれば、幾多ある他の記事のひとつとして埋もれてしまいます。そもそもの「必要性」を強く感じさせなければ、便利だなと思っても購買行動には結びつきません(そうでないとお金がいくらあっても足りませんね)。

メディアが抱える読者の価値というのは「そのメディアの読者=そのテーマに興味のあるユーザーが多い」というセグメントの要素が一つ。ただ、もう一つ見逃せないのが「継続的なメディア接触によって、ある程度の前提意識が形成されている」ということ。

記事広告で行うべきは、この継続的なメディア接触によって読者のなかで培われた前提意識(=文脈)をテコにして、1回の接触で態度変容まで持っていく文脈創造をすることです。