近年、ベンチャー投資の分野でも注目されている「ディープテック(Deep Tech)」。インターネットサービスやアプリなど“すぐに使える”技術がある一方で、なぜ回収に時間のかかるディープテックに注目が集まっているのでしょうか。

今回はディープテックが注目されている理由と、ディープテックの投資事例を紹介します。

ディープテック(Deep Tech)とは

世の中の科学技術には、インターネットサービスやアプリといった利用目的が明確な技術と、まだ形になっておらず、それ自体何に使えるのかが不明確な要素技術があります。

そんな要素技術の中でも、ディープテックは将来の科学技術に大きな変化をもたらす可能性のある技術のことを指します。ディープテックには、次のような特徴があります。

・最先端の科学技術、または研究開発を基礎とした技術がある。
・実現までに高いスキルと非常に多額の投資額と長い時間がかかる。
・多くの場合、具体的な製品・サービスが見えていない。
・成功した場合のインパクトが非常に大きく、破壊的ソリューションとなり得る可能性を秘めている。
引用元:いま、なぜディープテックが注目されるのか|Harvard Business Review

ディープテックを成功させるには、投資や技術的なハードル、時間など多数の困難が待ち受けています。しかし、今は注目されていない技術だからこそ、将来成功したときには世の中の常識を変え得るほどの大きなインパクトを与えられるのです。

ディープテック(Deep Tech)が注目される理由

ディープテック自体は何年も前から存在していましたが、特に注目され始めたのは2018年頃からです。では、なぜ最近になってディープテックへの資金供給が進んでいるのでしょうか。

まず、ディープテックのきっかけとなる『眠れる技術』がたくさんあるということ。大学や研究機関にはまだ完成していない技術が眠っており、それらは大きな可能性を持っています。実際にこの眠れる技術を活用した成功例も増えてきているのです。

次に、ディープテックにより地球規模の課題解決ができること。こうした課題解決は、投資額を回収できるほどのビジネスチャンスに繋がり、成功したらその資金を新たな技術の開発に回すことで、良い循環が生まれます。

こうした可能性に注目した投資家たちは、ディープテックへのベンチャー投資を始めているのです。

ディープテックの投資事例

インドネシアのスタートアップ

パーム油の工場廃液を放置するとメタンガスが発生します。メタンは地球温暖化を促進する物質であり、パーム油の工場廃液の処理が課題となっていました。

インドネシアのスタートアップ企業はディープテックを活用し、廃液を脱水・乾燥させることで燃料化することを目指しています。成功すれば現地の汚水の水質改善、環境改善、温室効果ガスの排出の削減に貢献できるでしょう。

参考:インドネシア国におけるパームオイル工場廃液の燃料化事業

ビル・ゲイツは安全な原子力発電に投資

Microsoftの創業者であるビル・ゲイツは、原子力エネルギー会社Terra Power社に数百万ドルを投資しています。

Terra Power社が開発しているディープテックは、濃縮ウランではなく既存原発の廃棄物である劣化ウランを使用するより安全な原子炉。放射性廃棄物も通常の1/1000しか出しません。

この原子力発電の開発に成功すれば、震災の多い日本でも取り入れられ、原発事故の被害を最小限に抑えられる可能性を秘めています。

参考:ゲイツ氏が支援する次世代原発技術|WIRED.jp

ブルーオリジン社の再利用可能ロケット開発

アマゾンの創業者でCEOのジェフ・ベゾスは航空宇宙企業ブルーオリジン社を設立し、再利用可能ロケット「ニュー・シェパード」の開発を進めています。

ベゾス氏は数百万ドルの資金をブルーオリジン社へ投資。その理由は、地球の資源が限られており、私たちの子孫が貧しい暮らしを強いられてしまう未来を防ぐため、そして地球を守るためです。

宇宙への移住はロケットだけでなく生存可能な環境かどうか、どのようにして基盤を築くかなど課題も多いです。しかし数百年規模の長期視点を持っており、成功すれば人類はより長く、豊かに繁栄できるでしょう。

参考:ジェフ・ベゾスは、 地球を救うために宇宙を目指す|WIRED.jp