ネットニュートラリティとは、ネットにおける通信業者の中立性を指した言葉です。どんなサイト・サービスであったとしても、通信業者の一存で回線速度を遅くしたり、接続しにくくしたりしてはならない、という考え方ですが、近年はこのネットニュートラリティを中心に様々な議論が巻き起こっています。アメリカを中心に話題を呼ぶネットニュートラリティは、日本にどのような影響を及ぼすのでしょうか。国内のWebマーケティング企業や一般ユーザーにも波及する問題なので、この記事を通してネットニュートラリティとはどういうものか、理解しておきましょう。

ネットニュートラリティとは

ネットニュートラリティとは、ネットにおけるニュートラリティ、つまり中立性を指した言葉です。インターネットでは様々な回線業者がひしめいており、回線業者と契約することでスマホやパソコン、タブレットがネットと繋がり、Webサイトの閲覧やアプリの利用が可能になります。

しかし、インターネットはそもそも公共のもので、その利用権を獲得した回線業者が自社の回線や電波を用いて通信サービスを提供しています。少しイメージしづらいので、道路で例えてみましょう。

公道はもともと誰のものでもない公共の道路です。これがインターネットにあたります。公道を走るバスの運行会社が回線業者で、GoogleやAmazonといった企業はバスの製造を手がけるメーカーだと考えると分かりやすいでしょう。そして、バスの乗客が私たちユーザーや消費者です。バスに乗るときを考えていただけると分かりやすいですが、バスに乗車する際には運行会社にお金を支払って乗車しますよね。

同様に、私たちユーザーは毎月いくらかのお金を回線業者に払ってインターネットに接続する権利を購入しています。代金を受け取った運行会社は、ユーザーが誰であろうと、バスがどのメーカーのものであろうと、変わらず乗客を目的地まで運ばなければなりません。これと同じことがネットの世界でも言えるはずだ、というのがネットニュートラリティの主張と言えます。

これは一見すると当たり前のことのように思えますが、アメリカではこのネットニュートラリティについてとある議論が巻き起こり、大きな話題を呼んでいます。

アメリカで議論が起きている

もともと、オバマ政権のころに導入されていたネットニュートラリティ規制では、通信業者が特定の企業やサービスに対して高い利用料を請求したり、回線速度に高低をつけてはならないという決まりがありました。しかし、2017年にアメリカの通信委員会「FCC」の委員長に就任したアジット・パイ氏は、”ISP企業の透明性によるインターネットサービスユーザーへの選択肢を広げる”ことを目的としてネットニュートラリティ規制の撤廃に向けた企画を始動。

つまり、ネットニュートラリティを廃止して、通信業者が自由に回線速度や料金を操作して良い仕組みを再構築しよう、と考えていました。これが可決されれば、IT企業にとっては大打撃です。

これまでのように「良質なコンテンツを作成して届ける」だけではユーザーの目に止まらなくなる可能性が生まれ、「通信業者に追加で料金を支払って高速回線を利用させてもらわないと閲覧できなくなる」という最悪のリスクも孕んでいます。GoogleTwitter、Facebookといった米国の大手IT企業はこれまで通りにネットニュートラリティが維持されるようユーザーに対して協力を呼びかけていました。その甲斐なく2017年にはネットニュートラリティの規制撤廃が決定し、今日まで続いていたのです。

ところが、民主党のナンシー・ペロシ氏は、2017年に撤廃されたネットニュートラリティの規制をもう一度復活させるための法案を提出します。これは2019年3月6日にインターネット保護法という名前で提出され、大きな波紋を呼びました。

こうした背景があり、アメリカを中心にネットニュートラリティについての議論が巻き起こっているのが実状です。

参考:To restore the Federal Communications Commission’s Open Internet Order
and its net neutrality protections.