アメリカのデジタル広告業界IABは、2019年のアニュアルリーダーシップミーティングでダイレクトブランドの動向を分析したレポート『How to Build a 21st Century Brand』を発表しました。

image3.png

画像出典:IAB「How to build a 21st century brand 2019-2020」

2010年以降、アメリカではブランドが直接消費者とコミュニケーションをとるダイレクトブランドが主流に。その中でD2Cビジネスを展開する注目するべきブランド250を紹介しています。
そのブランドのラインナップを見てみると、アパレルだけでなく、ライフスタイルや健康・フィットネス、飲食、美容など幅広いジャンルにD2Cビジネスが広がっていることがわかります。

こうした北米のD2Cビジネスは、特にミレニアル世代に広く支持されている様子。どんなブランドが注目されているのか、紐解いてみましょう。

参考:IAB「How to build a 21st century brand 2019-2020」

IAB「How to build a 21st century brand 2019-2020」

D2C企業はミレニアル世代にウケている!?

スマホは当たり前、息をするようにSNSを使う。そんな特徴を持つミレニアル世代。インターネットを使った購買活動も抵抗感なく受け入れる世代です。
そんなミレニアル世代の特徴は、これまでの世代とは異なるライフスタイルや価値観。例えば、SNSなどを通じて自ら情報を発信するのもそのひとつ。さらに、情報収集はインターネットよりSNS、ダイバーシティ(多様性)に寛容、モノよりもコト(体験)を重視する傾向にある、などの特徴があります。

image4.png

画像出典:「Neighborhood Goods」公式Facebook

こうしたミレニアル世代に、D2Cは違和感なく受け入れられています。Beforeコロナとなる2020年1月には、ニューヨーク・マンハッタンにD2Cブランドを集めたニュータイプの百貨店「Neighborhood Goods」がオープン。そもそも、「Neighborhood Goods」という中間流通を経由しているという段階でD2Cではなくなってしまっている……というご指摘があることは重々承知していますが、そのくらい、D2Cブランドがアメリカでは人気になっている例としては注目したいニュースです。

参考:
インスタグラムで人気のD2Cブランドを集めた"新しいデパート"がマンハッタンにオープン、行ってみた

「Neighborhood Goods」公式サイト(英語)

アメリカで注目のD2C企業

日本でのD2Cビジネス展開を考える上で、アメリカではどんなD2Cビジネスが受け入れられているのかを見てみましょう。

Glossier.(グロシエ)

image1.png

画像
引用:Glossier. 公式サイト

アメリカのコスメ・ビューティー業界はメガブランドの失速と同時に台頭してきているのが、D2Cブランドです。その代表格の一つが2013年にスタートアップした「Glossier.グロシエ)」です。

2013年の創業から売上高1億ドルを突破するまでの期間は、わずか4年! 企業評価額が10億ドル以上の未上場かつ創業10年以内の企業を指す『ユニコーン』企業となりました。同社のSNSを見てみると、Instagramのフォロワー数は2020年7月7日時点で約286万人。

InstagramやFacebookはもちろんのこと、Slack上で顧客とコミュニケーションを図り、商品開発につなげるなど、より消費者と近いビジネスを展開しています。「Glossier.」を創業したエミリー・ワイズは創業前からブログでビューティー系の記事を発信。平均135万PVを叩き出すなど、インフルエンサーとしての顔も持ちます。

参考:
GLOSSIER公式サイト(英語)

WIRED「How Glossier turned itself into a billion-dollar beauty brand」(英語)

ROCKETS OF AWESOME

image2.png

画像出典:ROCKETS OF AWESOME公式サイト

子ども服のサブスクサービスを展開する「ROCKETS OF AWESOME(ロケッツ・オブ・オーサム)」は、2人の子どもを持つレイチェル・ブルメンタルが創業したD2Cビジネスです。
子ども服をじっくり買う時間のない親をターゲットにしたサブスクサービスの内容は、およそ次の通り。シーズンごとに8スタイルの子ども服セットが自宅に届き、気に入った服を選んで購入できます。商品の価格帯は大体16〜38ドル前後。使わなかった服は送料無料で返送できます。

このように、アメリカのD2C企業によく見られるのがサブスクサービスなどの仕組みも取り入れた新しいビジネスの形。月額1ドルで髭剃りの替刃を安価に提供する「Dollar Shave Club(ダラーシェイブクラブ)」も、この一例として挙げられます。

参考:
ROCKETS OF AWESOME公式サイト(英語)

Dollar Shave Club公式サイト(英語)

アメリカのD2C企業の特徴は?

今、アメリカで注目されているD2C企業を見てみると、次のような共通点が見えてきます。
まず第一に言えるのが、スタートアップ企業が多いということ。ここまでご紹介してきた「Glossier.」「ROCKETS OF AWESOME」、「Dollar Shave Club」もスタートアップ企業として、投資家から注目され、資金調達に成功しています。

もう一つの特徴が、デジタルマーケティングを駆使することにより、見込み客や顧客情報を獲得している点です。また、顧客体験もデジタル上で展開。InstagramなどのSNS、YouTubeなどオンラインコミュニケーションを最大限活用しています。加えて、ブランドの認知や価値向上もWeb上でのコンテンツ発信により展開しているのが特徴です。

WWD 小島健輔リポート 『D2C神話から“個客”実利のC2Mへ』

[『デジタル社会におけるブランドのあり方』澁谷 覚,マーケティングジャーナル,39巻 (2019-2020) 3号(https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/39/3/39_2020.003/_article/-char/ja/)

日本はD2Cビジネスの土壌がある!?

アメリカのD2Cから学ぶべきこと

  • デジタルマーケティングを徹底して行っている
  • どんな顧客体験を提供するかを考える
  • 見込み客からリピート客にするための戦略を考えよう

もちろん、日本でもD2Cビジネスの成功事例はあります。たとえば再春館製薬所の「ドモホルンリンクル」もそのひとつ。D2Cブランドの日本での発展はこれからかもしれません。

関連記事

D2C(DtoC/ディーツーシー)とは?成功のために押さえておきたいポイントと事例を解説

D2C(DtoC/ディーツーシー)とは?成功のために押さえておきたいポイントと事例を解説

D2C(DtoC)とは、2000年代後半よりインターネットの普及やEC市場の拡大によって徐々に増えてきたビジネスモデルです。D2Cとはどんな形の取引のことを意味するのか、メリット・デメリット、成功事例などを紹介します。