DXが叫ばれている中、その推進に対する最適解を見いだせずにいる企業は少なくないだろう。その理由の一つが「マーケター不足」だと考えられる。

2020年12月、デジタルマーケティングプランナー専門の派遣事業を行う「メンバーズグッドコミュニケーションズカンパニー」が設立された。同社に所属するデジタルマーケティングプランナー(≒マーケター)が、クライアントの顧客に向いた本質的なマーケ活動を支援する。

今回は同社のカンパニー社長に、マーケターを取り巻く環境や企業の課題について伺った。

マーケティングの課題を解決しファンを獲得

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松永 剛氏

メンバーズグッドコミュニケーションズカンパニー カンパニー社長
2013年メンバーズ入社。大手広告代理店、自動車メーカーに常駐後、 大手ファストファッションブランド、スポーツメーカー、お菓子メーカー のデジタルマーケティング/コミュニケーション戦略を担当。 2020年11月より 「すべてはファンの声・ニーズを起点にして、コミュニケーションを考え て、ファンから愛される企業を育む」をコンセプトに「企業が好きだから その商品を買う」というファンをデジタルマーケティングで獲得育成して いく、デジタルマーケティングプランナーの派遣事業(社内カンパニー)の代表を務める。

Twitterアカウントhttps://twitter.com/goubuddyplus

**[primary]ferret:[/primary]**メンバーズグッドコミュニケーションズカンパニーとはどのような会社なのでしょうか?

**[primary]松永氏:[/primary]**一言でいうとデジタルマーケティングプランナーの派遣事業です。ですが、ただ売上を上げるためにデジタルマーケティングプランナーを派遣するのではありません。そのサービスのファンとの関係性を構築し、企業に常駐して中の人たちと一緒にサービスを作れるデジタルマーケティングプランナーを派遣します。

**[primary]ferret:[/primary]**与えられたタスクをこなすだけのリソースではなく、中の人と一緒になってサービスを作っていくマーケターというわけですね。なぜこのような会社を設立されたのでしょうか?

課題は人材不足と生活者の変化

**[primary]松永氏:[/primary]**まず企業がデジタルマーケティングを推進していくための課題は2つあると考えています。

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出典:(左)富士通総研「大企業のデジタルマーケティングへの取り組み実態と課題」
※このWebページは現在公開されていないためURL削除しました

出典:(右)アジャイルメディアネットワーク「コロナ禍で注力するマーケティング活動は「SNS活用/SNS広告」が6割に迫り、ファンや既存顧客に向けたデジタルへの投資が顕著に」

1つはマーケティング人材の不足です。企業はデジタルマーケティングがビジネスに貢獻していることを実感しているものの、マーケティング人材が不足していると感じています。具体的には戦略を構築できる人材やSNSの運用ができる人材ですね。それにより、ビジネスの機会損失が発生していると考えられます。

世の中ごとでいうと、DXを推進していかなければならないものの、そこに取り掛かる余力も人材もいないのが現状です。ですので、この課題を解決したいのが1つ。

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出典:左:総務省「我が国における総人口の長期的推移」
出典:右:厚生労働省「平成30年 国民生活基礎調査の概況 Ⅱ 各種世帯の所得等の状況」

もう1つは社会問題とも関連することです。今から10年後の2030年には3000万人も人口が減るというデータがあります。人口が少なくなれば、それだけ新規顧客の獲得が困難になるだけでなく、少ないパイを他社と取り合わなければなりません。

また、所得も1994年をピークに下がり続けています。このコロナ禍においてはさらに下がっていると予想されます。消費が鈍くなっている中、新しいものを買ってもらうのは難しい時代になってきていて、今までと同じように新規顧客を獲得するために多くの予算をかけるマーケティングではROI的に良いとはいえないでしょう。

このコロナ禍で生活者の購買行動がオンラインにシフトしています。つまり、これまで正解とされてきたアプローチが通用しなくなってきているので、改めて、もっと生活者に向き合ったコミュニケーションや情報発信が必要だと思っています。

余談ですが、キャンペーンで獲得した顧客はなかなかファンとして定着してくれないというのが私のこれまでの経験で得られたことです。だからこそ新しいアプローチが必要だと日々考えていました。

**[primary]ferret:[/primary]**マーケター不足と生活者の変化、この2つの課題を解決する必要があるとお考えになったわけですね。

**[primary]松永氏:[/primary]**そうですね。それもどちらか片方を解決するのではなく、この課題を同時に解決すること、解決できるノウハウと人材を確保しているのが弊社の強みです。

作業を巻き取り、本質的なマーケ活動に注力できる体制に

**[primary]ferret:[/primary]**具体的にはどのように解決していくのでしょうか?

**[primary]松永氏:[/primary]**人材の観点でいうと、現場のマーケターは戦略策定や調査、分析、メンバーのマネジメントなど、マルチタスクをこなしていると思います。そのため、全ての業務が片手間になってしまい、最も大切な業務の1つである施策立案や実施に時間がかけられていないという課題があります。

その現場に弊社のデジタルマーケティングプランナーを入れ、まずは作業を巻き取らせていただきます。それだけでなく、ユーザー調査やユーザーインタビューをもとに、生活者が抱えている想いや課題を抽出し、施策に反映。そしてデジタルマーケティングを推進できるのが強みですね。

なぜこれができるかというと、弊社の母体である株式会社メンバーズはデジタルマーケティングを全方位的に行っており、そこで得られたノウハウを生かしたサポートができるからです。

**[primary]ferret:[/primary]**この点は他人材派遣サービスにはない独自性ですね。

**[primary]松永氏:[/primary]**ただ手を動かすだけの人材ではない、という点は強みですね。

人材を派遣して企業の体制を整えるのはもちろんですが、弊社のデジタルマーケティングプランナーは運用にも強みを持っています。ですので、運用フローや体制を構築し、デジタルマーケティングの運用が円滑に回る仕組み作りでも貢献できると思っています。

**[primary]ferret:[/primary]**では生活者の観点もお聞かせいただけますか?

**[primary]松永氏:[/primary]**生活者の変化の観点でいうと、よく言われていることではありますが、企業が伝えたいことと生活者が知りたいことはイコールではない、という問題があります。

企業が「発信すれば分かってもらえる」と思っていることも課題だなと思っていて、このギャップを埋めていく必要があると考えています。企業は何千万、何億とかけて広告を出稿しているのに、生活者はそれをノイズとしか思わないなんてもったいないですよね。広告にネガティブなイメージを持たれるとブランド毀損にも繋がるので、強い危機感を持っています。

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ですので、弊社のデジタルマーケティングプランナーがユーザー調査を行い、サービスのどこが愛されているのか、どういった情報を知りたいのか、といったことを調査し、ファンが知りたいことを発信していきます。こうしたコミュニケーションを繰り返すことで、「あのブランドが好きだから買う」という関係性を作っていきたいと考えています。

ユーザー調査とは生活者の心の動きを導き出すこと

**[primary]ferret:[/primary]**おそらくですが、すでに各社、ユーザー調査やユーザーインタビューを行い、生活者の声を聞いていると思います。あえて御社のマーケターがそこに注力する理由はなんなのでしょうか?

**[primary]松永氏:[/primary]**おっしゃる通りです。ただ、多くの場合、生活者の声を吸い上げているものの、分析できていないケースがありますね。なぜならば分析するためには時間と手間がかかるからです。

例えば一番多いのは、アンケート結果で一番人気の商品が分かったから、次もその商品に注力していこう、という意思決定です。

弊社の調査は、なぜその商品が好きなのか、いつ好きになったのか、という点まで深堀りします。生活者の心の動きを理解しないなら、生活者の声を聞く意味は全くないと思っているで。生活者の心の動きを導き出すまで調査をするのが違いかなと思います。

**[primary]ferret:[/primary]**お話を伺っていると、ビジネスを成功させる手法ということ以上に生活者を大切にされていると感じました。大切にされているきっかけはなんだったのでしょうか?

**[primary]松永氏:[/primary]**きっかけはコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之(さとなお)さんが主宰している「さとなおオープンラボ」に入ったことです。そこで佐藤さんから最初に「プランナーは伝えた相手を笑顔にして、世の中をちょっとよくする仕事なんだよ」と教えてもらいました。

この瞬間、自分が今まで漠然とやってきたことが、この職業だと明確にできると確信を持てたんですね。私のキャリアのスタートはグラフィックデザイナーで、当時はクリエイティブの力で人を元気にしたいと思っていたんです。その後、キャリアを重ねるごとにコミュニケーションプランナーの方へ寄っていきましたが、さとなおさんと出会ったのは本当に大きな転機でした。

大きなビジョンを持っていれば、キャリアは変化を恐れずにどんどん変わっていくべきだと思うんです。

**[primary]ferret:[/primary]**これまでと同じようにコミュニケーションプランナーとしてバリューを発揮し続けることもできたと思うのですが、社内カンパニーの設立にはどんな想いが込められているのでしょうか?

**[primary]松永氏:[/primary]**さとなおさんのラボで考え方を学び、それを実践に活かし成果を出すことで、クライアントから喜んでもらえることが増えました。

これを自分1人で抱えているのはもったいないから、こういう思想を持ったチームや組織を作るのか、さとなおさんから学んだことをオープンにして、提供できる事業を作りたいと思っていたんです。

そんなとき、たまたま社内で新規事業の公募があったので、「これはやるしかない」と思い、社内カンパニー設立に向けて構想を作り始めました。構想自体は2年前ぐらいから考えていて、公募のタイミングで固めたのが2020年の夏ぐらいですね。

社会課題を解決しながら企業のビジネスにも貢献

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**[primary]ferret:[/primary]**最後に、今後の御社の戦略を教えてください。

**[primary]松永氏:[/primary]**弊社のデジタルマーケティングプランナーを欲してくれる会社は、デジタルマーケティングの推進に課題がある会社だと思います。ですので、おそらく中小規模の会社が多いのではないでしょうか。まずはそういった会社に入って体制を整えていきたいですね。その次のフェーズとして、DXを推進していくための基盤を作っていきたいなと思っています。DX推進であれば大手へのアプローチも視野に入れています。

さらにこの先で言うと、メンバーズが掲げているミッションの説明として「社会の本質的な課題をどのような手段で解決し、何を実現するか」という一文があるのですが、弊社も社会課題を解決して世界を良くしていきたいんです。

企業のデジタル化はあくまで通過点で、そうすることにより人の生活はどんどん良くなると思います。弊社はCSV経営(Creating Shared Value・共有価値の創造)を実践していことしていて、社会の課題を解決しながら企業のビジネスにも貢献、社会をよくしていきながら企業のマーケティング活動を推進していく。この基本思想のもと、世の中に貢献できるような会社にしていこうと構想しています。

**[primary]ferret:[/primary]**御社の力で企業のマーケティングがどのように変わるのか楽しみです!ありがとうございました!

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