【津田大介氏特別インタビュー】あらゆる企業がメディア化する今、情報発信側が見失ってはならないものとは(前編)
ナップスターの登場から予見したライターの未来
津田氏:
99年、ナップスターという音楽ファイル共有ソフトが流行りました。
世界中のパソコンを繋げて、お互いの音楽データを自由に交換できることを知ったとき、これは革命だと思いましたね。
音楽業界が変わっていくだろうなと思ったと同時に、ライターの仕事もなくなっていくと予感しました。
音楽ファイルを自由に交換できるようになったのと同じように、ネット上で皆勝手につながって、情報を自由に交換する世界になった時、ライターは食えなくなるなと。
じゃあなんとかしなきゃなという気づきが99年当時ありました。
でもこの動き自体は面白いなと思いました。
音楽業界だけでなく、情報を商売にするあらゆるビジネスで破壊的なイノベーションが起こると思った。であれば、僕がやることは現場の最前線で取材をすることかなと。
そこから3年間ぐらいずっと取材やっているとそれなりに知見がたまってくるんですが、その知見をアウトプットする場所を持っていなかった。
そこで当時ちょうど個人ニュースサイトが流行っていたので、自分でCGIを勉強して2002年に「音楽配信メモ」というサイトを始めました。
ライターからITジャーナリストへ
津田氏:
当時ライターの「上がり」って3つの選択肢しかなかったんですよ。1つは編プロの社長、1つは作家、もう1つはどこかの出版社に就職する。
それは常に意識していました。そんな折、自分が書いていたパソコン系の雑誌がどんどん休刊になって、これからどうしようかなと思っていた時に出版社から単行本を出さないかとお話をいただいたんです。
単行本って、雑誌と違って売れないとお金にはならないんです。でも本を出して自分の名前を売っていくしかないなと思って。
2003年ころから単行本を書き始めて、ITジャーナリストと名乗るようになりました。
こうやって色々試行錯誤していくなかで、うまくいったこともあれば失敗したこともあります。
まず大学留年してるし、就活も全滅していますし(笑)。
雑誌ライターからジャーナリストに変わった時は、収入が激減しました。
創業したナタリーは何度も倒産しかけたし、社会運動を始めると利害関係ができて敵も増える。
いろんな失敗を繰り返しています。
ポリタスも始めましたが、まだマネタイズは十分じゃないですね。
ナタリーもそうでしたが、メディアは最初の2,3年はコストセンターとしてやりながら、どこかのタイミングで収益化を考えなきゃですね。
**飯髙:**ちょうどferretもそのタイミングなんですよ。2014年の9月にリリースして、1年後にマネタイズを始めて、昨年11月にようやく黒字化できました。
**津田氏:**楽しい時期ですよね。
**飯髙:**ただ、編集チームはよい物を作りたい、マネタイズチームはお金を稼ぎたい、どちらが上なんだろうっていうのはいつも考えています。でもやっぱり僕は結果的にはメディア側に立っていますね。
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