ホームページ広告により集客した顧客に、実際に接するのは現場の従業員です。
しかし、「現場がマーケティングを意識しない!」と感じているWeb担当者の方も、きっと少なくないのではないでしょうか。飲食店やショップでは接客に追われ、商品を顧客に合わせて改善したり、サービスを広める意識を忘れがちです。

そこで今回は、企業が一丸となって顧客に向き合うため、ショップや営業部隊などの現場とマーケティング活動をつなぐ事例を紹介します。

Webと現場をつなぐ2つの考え方

ホームページリスティング広告などのWeb上の活動と、店舗での接客が共同でマーケティングに取り組むのに押さえておきたい単語として「オムニチャネル」と「コーポレートアイデンティティ」の2つがあります。

共に、マーケティング分野ではよく使われる用語ですので、改めておさらいしておきましょう。

オムニチャネル

店舗でも、ホームページでも、顧客が商品やサービスに触れる場所のことをチャネルといいます。オムニチャネルとはそれらを連携させて、どのチャネルを利用しても顧客にとって同等の利用体験をしてもらうことを言います。

連携の取りやすいような横断的な組織作りや、顧客管理システムやポイントシステムを統合することで、顧客はどのチャネルを利用しても同じ感覚で利用することができます。

例えば、ある店で洋服を買った時にSSサイズを買ったとして、店員さんはそのお客様が次回来店した際にLサイズの服をオススメすることはしないでしょう。

同様に、その店の運営しているネットショップを見た時にLサイズの服しかオススメされなかったら、顧客は利用したくなくなってしまいます。
ホームページと店舗はオムニチャネルとして、連携する仕組みが大切です。

オムニチャネルについては詳しい記事があるので参考にしてみてください。

参考:
最近流行りの「オムニチャネル」とは?誰がどう活用するべきかを解説!

コーポレートアイデンティティ

企業に対するイメージの統一性という意味ではコーポレートアイデンティティも押さえておきたい考え方です。コーポレートアイデンティティとは「企業の自己同一性」と訳し、理念やロゴ、コーポレートカラーに一貫性を持たせることで企業のイメージを形作ることを言います。

デザインだけではなく、従業員同士が「この会社の特徴はこれ」と統一した価値観を持っていることで、価値観に合わせた行動ができます。

スターバックスコーヒーは「人々の心を豊かで活力あるものにするために」というスローガンを掲げていて、コーヒーだけではなく落ち着いた空間そのものを売りにしています。カラーも落ち着いた緑を採用するだけでなく、店内の椅子は座り心地のいいソファが多いのはそのためです。

また、利用客が勉強道具を広げて長時間滞在したとしても、店員は注意することはありません。これはコーポレートアイデンティティが現場まで浸透している証です。

スターバックスコーヒー公式HP

こちらの記事ではコーポレートアイデンティティの事例も紹介しています
企業の顔となるコーポレートアイデンティティの重要性を解説

店頭で行うマーケティングの事例

では、実際にWebでの施策とリアルの現場とを結びつけるにはどうしたらいいのでしょうか。ポイントとなるのはいかに、現場とWebに統一性をもたせるかということです。

資生堂エリクシール

資生堂ではブランドごとに統一したイメージで取り組んでいます。
特に40代向けの化粧品であるエリクシールでは、売り出している商品ごとにホームページだけでなく、店頭に置くポップやポスターも同じキャッチコピーやカラーを使用しています。

エリクシールHPトップ.png
ELIXIR|資生堂

百貨店では化粧品を販売するために、美容部員と呼ばれる販売員がお客様にメイクを施しながら商品の説明します。

その際の営業トークマニュアルはWebでうたっているものと同じ内容を盛り込んでいます。
口紅を売る時に鮮やかな発色を売りにしているのに、営業トークで「オフィスでも使える地味な色で」と言ったら矛盾してしまいます。

自社がホームページで売り出している内容と店頭の営業トークが同じ方向を向いているのか確かめながら、接客マニュアルを見直すのもいいでしょう。

キリン淡麗グリーンラベル

淡麗グリーンラベルHP.png
淡麗グリーンラベル|KIRIN

こちらはホームページからリアルのショップという新しい展開が生まれた例です。

ビールというと、仕事の後にサラリーマンが体に悪いとは思いながらも飲むものというイメージがつきがちですが、淡麗グリーンラベルは爽やかなイメージを採用しています。

その特徴的なコンテンツとして、一見ビールとは無縁なGREEN NAMEというコンテンツを配信したことも話題になりました。

green_name.png

GREEN NAMEではこのように名前の中にある「グリーン」(緑に関する文字)を見つけてデザインを生成できます。

3週間で100万生成を突破するほどの人気振りで、ユーザーからこのデザインを利用したグッズが欲しいという声があったことから、期間限定ではありますがリアルのショップまで展開されました。

ショップでは低価格で試飲できるだけではなく、自分の名前を使ったオリジナルのパッケージのグリーンラベルを作れます。

参考:
森、木、水……自分の名前がアニメになるKIRIN『GREEN NAME』制作の舞台裏と成果

このように、Webで公表だったコンテンツを実店舗に展開してみるのも、現場とWebをつなぐにはいいでしょう。
挙げた事例は大々的なものですが、例えば和菓子の店のホームページで「つぶあんとこしあんの違いについて」書かれたページが好評だったら、実際のお客様に説明する時にそのページを印刷して利用するのもいいかもしれません。

説明する販売員にとっても自社のホームページに興味を持ったり、Webで行っている集客について興味を持つきっかけになります。