Web広告運用はインハウス化の潮流。よくある課題と成功の秘訣を解説
Web広告運用は、代理店に外注するスタイルからインハウス化の潮流に移行しつつあります。
社内メンバー自らが運用を行うことで、デジタルマーケティング関連スキル・ノウハウの蓄積や、人材育成につながり、自社商品や顧客を深く理解しながらスピード感を持ってPDCAを回していけるからです。
しかし、その裏側にはいくつかの課題もあります。この記事では実際にあった課題の事例や、成果を出すためのポイントを解説します。
目次
- Webマーケティングはインハウス化の潮流
- Web広告運用をインハウス化する3つのメリット
- インハウス運用で留意すべきポイント
- インハウス化事例
- インハウスで成果を出すために押さえておきたい項目
- インハウス支援サービスの活用も有効
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Webマーケティングはインハウス化の潮流
[図1]は、Web広告の実施状況を示したデータです。これは、2020年12月に株式会社PLAN-Bが発表した調査結果です。
Web広告施策を実施している会社では「完全に外注」が少なく、「社内で運用」「部分的に外注」というスタイルが多いことが伺えます。
[図1]Web広告の実施状況
出典:BtoB企業のマーケター225名にWebマーケティング実施状況を調査!半数以上がオウンドメディア、SNSアカウントの運用を行っていると回答
また、「デジタルマーケティング人材の不足」を示す調査結果もあります。[図2]は2021年9月、Repro株式会社の調査によるものです。
約6割の会社が「デジタルマーケティング人材が足りない」と感じていることが明らかになりました。
[図2]デジタルマーケティングに関する課題
出典:役職者の約60%がノウハウ・人材の不足に悩み” Repro(リプロ)が「Webサイト活用状況に関するアンケート」の調査結果を発表
Web広告など、デジタルマーケティング施策をやりたくても、スキル・人材不足の課題を抱える会社が多いことが伺えます。
だからこそ、これからWeb広告運用のインハウス化に挑戦し、自社内にデジタルマーケティング関連のスキル・ノウハウを蓄積していけば、会社にとって長期的な強みになると言えます。
Web広告運用をインハウス化する3つのメリット
Web広告運用をインハウス化する具体的なメリットは、次のような点です。
①商品・サービスを深く理解している人が担当できる
自社内でWeb広告運用をすることで、日頃から商品・サービス・ユーザーとさまざまな角度から深く向き合っている人が、コピーやクリエイティブのアイデアを自ら考案できるようになります。
Web広告で成果を出す―すなわち、新規顧客を獲得し、1件でも多く成約につなげるためには、ターゲットに刺さる訴求軸を的確に繰り出すことが必要です。そのためには、商品・サービス、そしてユーザーを深く理解することが欠かせません。
インハウス化によって、さまざまな切り口からの訴求をより柔軟に試しやすくなり、より「刺さる」広告を生み出していけるでしょう。
②代理店コストを削減できる
Web広告運用を外注する場合、「広告費」だけではなく、代理店に対する「初期費用」「運用費」なども発生します。
長期的な運用コストに課題を抱えているなら、インハウス化することで、大幅なコスト削減につながります。
③社内にWebマーケティングの知見が溜まり、財産になる
自社にWebマーケティングのスキル・ノウハウが蓄積されていき、会社にとって大きな財産になります。
代理店に外注する場合でも「この施策の結果は、こうでした」などとレポートで結果報告をしてもらえますが、自らアイデアを捻ってさまざまな企画・コピー・クリエイティブに関して試行錯誤を繰り返すことは、苦労もある一方、それ以上に得るものが大きいはずです。
考えたこと、見たこと、得られた手応えは担当者の大きな強みになり、その知見を社内へ共有することが長期的なデジタルマーケティング人材の育成につながります。
インハウス運用で留意すべきポイント
メリットの一方、留意すべきポイントもあります。
①人材育成・確保の必要がある
「人材をゼロから育成するか」それとも「外部から中途採用で、経験者に入ってもらうか」を考える必要があります。
特に「人材をゼロから育成する」場合、初期段階では専門用語や各種Web広告媒体、専門用語、KPIなどが分からず右往左往してしまうフェーズが発生してしまうことも、あらかじめ想定に含めておく必要があります。社内全体で「成果が出るまでに、やや助走期間があっても良い」といった考えを持てる場合は、ゼロからの人材育成も良いでしょう。
一方、「すぐに成果が出ないと困る」という場合には、即戦力となってくれる経験者を外部から新規採用するほうが適しています。
②最新のノウハウを常に自分で追いかける必要がある
Web広告業界の最新動向・ノウハウを常に自社内で、担当者自身が追いかけ続ける必要があります。
Web広告の世界は日々変化が早く、例えばGoogle、Facebookなどのアルゴリズム変更や、ユーザーのプライバシー保護に関する規制など、プラットフォーム各社が行うアップデートを細かく理解していなければ、広告に取り組んでも成果が得られない場合があります。
このような、日々の情報キャッチアップが難しい場合には、代理店を頼る必要があります。
③ノウハウが属人化しやすい
インハウスのWeb広告担当者には、自らターゲットと向き合い、コピーやクリエイティブを考えるノウハウが身についていきます。
しかしそれと表裏一体で「ノウハウ・スキルが属人化しやすい」という側面も想定されます。
もし、担当者が休職・退職などになってしまったら「社内の他の誰も、Web広告運用について分からず、施策を継続できない」といった事態にもなりかねません。
身につけた知見は日々社内に共有し、他の施策にも横展開していくなど、体制づくりを工夫する必要があります。
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インハウス化事例
インハウスのマーケティング担当者は、商品への理解が深いのでつい、商品の特徴を押し出してしまいがちです
しかし、ユーザー視点や、市場全体を俯瞰で見て最新の生活者動向・関心事を深く理解し、どのような訴求軸がベストなのか、その時々で考えることが重要です。
①インハウス化初期の課題例
企業Aの事例
- 課題
インハウス化初期において、商品紹介のWebサイト(ランディングページ)が未構築だった。その状態から、新規顧客獲得効率を上げる必要があった。
- 施策
実際に自社商品を買ってくれるユーザー層を基に、ペルソナ設定を行った。
ペルソナに合致したユーザー接点を整備し、LPへ誘導する集客導線を整えた。
②インハウス化後期の課題例
企業Bの事例
- 課題
インハウス化後期において、商品やユーザーインサイトに基づいて訴求軸を考えていたが、どの訴求も頭打ちになってしまい、「ユーザーに刺さるクリエイティブ」のアイデアが枯渇してしまった。
- 施策
市場(マーケット)に立ち返り、生活者の最新動向に関するリサーチを実施。
生活者の「今」の関心事を切り口にすることで、成果が大幅に改善した。
インハウスで成果を出すために押さえておきたい項目
①「顧客理解力」と「コミュニケーション力」を持つ人材の配置
外部から新規でマーケターを採用しようとする場合、「Web広告運用経験の有無」がマストな条件だと考えがちです。
しかし、人材採用・配置で重視すべきは 「顧客理解力」と「コミュニケーション力」 です。ポイントは、コミュニケーション力(傾聴力)の高さです。
まずは社内で共に、商品を買ってくれるユーザー層について語り合うことができ、長期的に顧客と深く向き合える人を採用することが重要です。
②高速PDCA
インハウス化では、PDCAを早く回していくことが高い成果につながります。
しかしPDCAが早く回る分だけ、施策立案・報告の工数は膨れ上がっていきます。すると社内のWeb広告運用担当者に負荷が集中しすぎてしまい、思うように成果を出せないケースも出てきます。
そこで、事前に工数に関する見積をできるだけ正確に行い、人員配置など入念に準備しておくことが重要です。
③長期的な目線
「自社のお客様は、どういう人なんだろう?」
「ブランド認知度を高めるには?」
という基本の2点を常に押さえ、ブレないようにしましょう。
PDCAが早く回るようになると担当者は「今週中にこの検証を済ませないと‥」「直近で達成すべきKPIは?」「今月はあと何件リード獲得が必要?」など、目の前のタスクに追われ、短期的な目標達成に意識を奪われがちになります。
しかし、Web広告運用の目的は「自社のブランド認知度を少しでも高め、一人でも多くの顧客を獲得し、成約につなげること」であるはずです。
目の前のタスクに追われて目指すゴールがブレそうになったら、基本の2点に立ち返り、長期的な目線を持つようにしましょう。
インハウス支援サービスの活用も有効
Web広告運用では、顧客を理解し、“刺さる”コピーやクリエイティブを数多くの切り口から打ち出し続けることが肝です。
しかし、事例でも紹介したように、「うちのお客さんには、こういう訴求軸が響くから…」といった勘や経験だけに頼っていては、いつしかクリエイティブのアイデアが枯渇していき、何をやっても施策の成果が頭打ち、という事態にもなりかねません。
そこで、データに基づき、自社の勝ちパターンや、マーケットの「今」に響くコピーやクリエイティブを客観的に見つける視点も必要です。
AIを活用したWeb広告インハウス支援サービスなどもありますので、そのようなサービス・ツールについても理解して上手く活用し、Web広告のインハウス運用で確実に成果を出していきましょう。
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- KPIとは、目標に対して施策がどの程度達成されているか、を定量的に表す指標のことをKPI(重要業績評価指標)といいます。
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- Googleとは、世界最大の検索エンジンであるGoogleを展開する米国の企業です。1998年に創業され急激に成長しました。その検索エンジンであるGoogleは、現在日本でも展開していて、日本のYahoo!Japanにも検索結果のデータを提供するなど、検索市場において圧倒的な地位を築いています。
- フォーム
- フォームとは、もともと「形」「書式」「伝票」などの意味を持つ英単語です。インターネットの分野では、パソコンの操作画面におけるユーザーからの入力を受け付ける部分を指します。企業のホームページでは、入力フォームが設置されていることが多いようです。
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- Webサイト
- Webサイトとは、インターネットの標準的な情報提供システムであるWWW(ワールドワイドウェブ)で公開される、Webページ(インターネット上にある1ページ1ページ)の集まりのことです。
- ランディングページ
- ランディングページ(landing page)とは、ユーザーが検索エンジンあるいは広告などから最初にアクセスしたページのことです。「LP」とも呼ばれています。ただしWebマーケティングにおいては、商品を売るために作られた1枚で完結するWebページをランディングページと呼びます。
- 導線
- 導線とは、買い物客が店内を見てまわる道順のことです。ホームページにおいては、ページ内での利用者の動きを指します。 ホームページの制作にあたっては、人間行動科学や心理学の視点を取り入れ、顧客のページ内での動きを把握した上でサイト設計を行い、レイアウトや演出等を決めることが重要になります。
- ユーザーインサイト
- ユーザーの本質的な欲求や本音を「ユーザーインサイト」と呼びます。データや起きている事象を観察することによって、ユーザー自身も意識していない願望を発見することができます。
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