ランディングページやネットショップに関わるWeb担当者であれば、コンバージョン率を上げたり直接的な売上を上げるために、さまざまな施策を試してきたのではないでしょうか。

A/Bテストをしたり、ボタンの位置や色、大きさを変えてみたり、直接カスタマーにアンケートを取ってみたりという具合です。
もちろんそうしたアプローチも重要ですが、もうひとつ試して欲しいものがあります。
それは心理学の活用です。

Web担当者の中には、「ロジカルなデータが重要だ」という人もいます。
しかし、実際に相手をしているのは、Webページそのものだけでなく、その先にいる人間です。
言葉の言い回しや相手の心を掴む見せ方など、心理学に基づいて売上を上げるための手段は、リアルな現場で商談を行なっているセールスパーソンと同じように、Web担当者も心理学を学んでおくと、必ず役に立つでしょう。

今回は、ショッピングサイトの売上アップに貢献する心理学の学び始めに役に立つポイントをご紹介します。
ユーザーの心をぐっと掴むことができれば、エンゲージメントも上がり、結果的にコンバージョンも売上も上がります。
まだ心理学的な要素を取り入れたことがない方や、どうやって売上を上げればいいか分からない方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. 欲求に基づいたアプローチをする

心理学の中でも最もポピュラーな理論のひとつに、*「マズローの欲求5段階説」*があります。
この欲求5段階はシンプルなピラミッドで表示され、人間の意思決定に大きな影響を及ぼします。

生存や安全に関する基本欲求から自己尊厳や自身の可能性を追求するものまでありますが、重要なのはこのピラミッドの上位の段階は下位の段階が満たされない限り達成されないということです。

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この欲求5段階説は学術的なので、難しく感じてしまう人もいるでしょう。
しかし、この理論は実生活にも適用することができます。

自動車を例に考えてみましょう。
全ての車は、A地点からB地点に人を運ぶという、全く同じ役割を持っています。
もちろん、快適さやスピードの出方などは多少異なるでしょう。
しかし、ほとんどの車には似たような機能が備わっています。

それでは、自動車がどのように差別化を図るかというと、このピラミッドに基づいたアプローチをかけていくのです。
フォルクスワーゲンでいえば、所有欲求を満たしたいという気持ちにアプローチをします。
ボルボでいえば、安全欲求にアピールします。
もちろん、こうしたハイエンドな自動車ベンダーは結果的に自己の尊厳も満たしてくれます。

競合製品と比べて、機能の紹介ばかりをしているのであれば、あまりカスタマーの心に響いていないかもしれません。
例えばランディングページを作成する場合は、長々と商品説明するのやめて欲求の段階に基づいてアピールすればいいのです。
できるだけ欲求に直接訴えかけるアプローチを行いましょう。

2. たった1つのオススメをはっきりと勧める

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諸説ありますが、人間が1日に行う「選択」の回数は実に1万〜2万回だそうです。
実際、そんなに選択をしているので、選択肢が多すぎると正しい判断ができなくなるときがあります。
それが、心理学でいう*「選択麻痺」(Choice Paralysis)*の状態です。

ネットショップにおいてはこれは大きな問題になります。
例えばあなたがスマートフォンでAmazonにアクセスして買い物をする時のことを思い出してください。

洗剤がなくなったことに気づいていつも買っている洗剤を買う場合であれば、選択麻痺はそれほど問題ではありません。
しかし、似たような製品がたくさんある中でユーザーに洗剤を選ばせようとすると、ユーザーはどれがいいか分からず、結局時間がなくなって買い物を諦めてしまいます。

この問題は、ランディングページにおけるCTAボタンについても同様のことが言えます。
ランディングページ上でいくつもの製品が紹介されてしまうと、結局ユーザーは選べなくなりランディングページから離脱してしまうのです。

この問題から学べるのは、似たような製品がいくつかあったとしても、たった1つのオススメを大々的に取り上げることです。
ユーザーは専門家ではなく、専門家はショップの店主であるあなたです。

専門家の勧めているものであれば、ユーザーがその製品を求めていればまずその製品の購入を「検討」する状態になります。
自信をもってたった1つのオススメにスポットライトを当てたほうが、結果的に信頼と売上の両方を勝ち取ることができるのです。

3. 慣れ親しんだデザインにする

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たくさんのネットショップがあるのに、なぜ人はAmazonや楽天市場でまず検索して商品を探そうとするのでしょうか。
その答えが、*「現状維持バイアス」(Status Quo Bias)*と呼ばれる人間の心理学上の特性にあります。

人間は、できるだけ慣れ親しんだものに居心地を感じます。
心地よさを感じる場所を*コンフォートゾーン(Comfort Zone)*と呼び、できるだけその場所から出ないように、心が勝手に動いてしまうのです。

ダイエットをしても、ダイエット開始以前の生活のほうが心地よくて結局三日坊主になってしまったり、レストランではいつも同じ料理を頼んでしまうのは、この現状維持バイアスが働いているからです。

そのため、企業は慣れ親しんでもらうために多大なイメージ戦略の広告費を打ち続けています。
夏のカルピスのCM、クリスマスシーズンのコカ・コーラのCMは、分かりやすい例として挙げられます。

それでは、ネットショップを運営しているWeb担当者の場合は何に気をつければいいのでしょうか。

まず、サイトの大幅なリニューアルはできるだけ避けましょう
人々はできるだけ「いつもの」ホームページを期待しているので、全く新しいデザインや、これまで触れたことのない機能ばかりになってしまうと、ストレスを感じて別の慣れ親しんでいるサイトに移動してしまいます。

実際、Amazonのホームページでは、小さな変化によって、ユーザーを圧倒することなく変化に適用してもらうレベルで進化しています。

また、あなたが運営しているネットショップがまだあまり知られていないのであれば、最初はできるかぎり競合と同じようなデザインからスタートしてみるといいでしょう。

斬新なものは一時的に目に止まりますが、あまりにも斬新すぎるデザインはユーザーの受け止める準備ができていないので、逆効果になる可能性があることを心に留めておいてください。

4. 希少性をアピールする

最も強力な心理学テクニックのひとつとして、希少性のアピールが挙げられます。
人々は限定的なものに反応し、モチベーションを感じます。

希少性のアピールには、さまざまな方法があります。
例えばある商品の在庫数を限定して、「在庫はあと3個」と表示することもできますし、Amazonで日々行われているタイムセールのように日時を限定して大きなディスカウントを行うこともできます。

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Booking.comは、とても上手に希少性のアピールを行なっています。
例えば、石垣島のホテルを探すときに、*「選択した日程の石垣島は、71%が予約済みです」*といって、今後値上がりする可能性を示唆しながら、今すぐ予約する必然性を生み出しています。

また、「3名が閲覧中です」「過去6時間に3件の予約がありました」「残りあと5室です」「本日20%OFF!」というさまざまなマイクロコピーによって希少性限定性を演出しています。

参考:
神は細部に宿る!ユーザーに振り向いてもらえるマイクロコピーを作るための5つのポイント

5. 比較して優位性を知らしめる

ネットショップやWebサービスのオプトインページなどで使ってもらいたいもう一つの心理学的特徴が、*価格フレーミング(Price Framing)*というものです。
これは、何かの価値判断をする際には、意識的ないし無意識的に必ず何かと比較を比較しているという人間の行動特性のことを言います。

この特性を正しく理解していないと、ユーザーはあなたのネットショップを見ながら、ある行動に出ます。
それは、同じような商品を別の競合サイトの商品と比較してしまうということです。

ユーザーにとっては同じ性能、同じ商品であれば安いほうがいいに決まっているので、当然の行動です。
結果的に、このサイトに載っている価格よりも低いものがあればユーザーは離脱するので、販売チャンスを逃してしまうことになります。

これを避けるためには、サイト内のグレードの違う商品同士で比較することです。
競合との比較ではなく、同一サイト内での比較ができれば、どこかの比較対象に当てはめることができるので、結果的に総合的なコンバージョン率を上げることができるのです。
しかし注意してほしいのは、2で紹介したように比較しながらも*「たった1つのオススメ」*を強調するようにしてください。

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クラウドストレージサービスを提供しているBoxのプラン紹介ページでは、3つのプランを紹介しながら、最終的にはBusinessプランを強くオススメしています。
その際、このページのように「一番人気」や「あなたにオススメ」などの文字を添えておくと、ユーザーはそのプランを選びやすくなり、離脱も避けることができます。