「God is in the details.」 (神は細部に宿る)

有名なことわざとして知られているこの言葉は、一説によるとドイツ人前衛建築家のミース・ファンデルローエ、もしくはドイツ人美術理論化のヴァールブルクが言った言葉とされています。
「細かなディティールをおろそかにしては、全体の美しさは構築できない」という意味の言葉です。

一方、*「20対80の法則」というルールについて、聞いたことはありますか?
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが指摘したモデルで、
「全体の80%の成果は、全体を構成するうちの20%が生み出している」*という法則です。
ビジネスにおいて、売り上げの8割は全顧客の2割が生み出している、あるいは仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうち2割が生み出している、といったように、あらゆる場面で当てはめられているパレートの法則
パレートの法則は、もちろんデザインやWebマーケティングにおいても当てはまります。

Webマーケティングにおいて、細部を重視し、検証する行為として持ち出されるのが、UIパーツのA/Bテストです。
確かに、ボタンの大きさを数ピクセル改善したり、リンクの見せ方を改善したりするだけで、数十〜数百ドル単位でコンバージョン率が改善されたという例も報告されています。
しかしながら昨今UX(ユーザー体験)という言葉が注目されているように、ユーザーに語りかけるようなコピー・テキストコンテンツの中身を改善することは、さらに効果が期待できます。

コピー部分は、GoogleやAmazonなども改めて着目している重要なエンハンスメント要素です。
今回は、コピーライティング改善のために今からでも行いたい効果的な「マイクロコピー」を作るための5つのポイントを、実例も含めて紹介します。

いま注目されている「UXライティング」

GoogleやAmazon、Dropboxといったシリコンバレーの名だたる企業は、UXライター」という新しい職種の採用に乗り出しました。
UXとはUser Experience(ユーザー体験)のことで、UXライターとはユーザー体験を生み出すためのライティング業務を担います。

従来のUXデザイナーは、パーツやリンクなどのUIデザインや、離脱率を下げるためのアニメーションなどを統合して、よりよいユーザー体験を考えるための役割を担っていました。
ところが、実際にコンバージョン率を上げるために、UXデザインと同じくらい重要なのは、購入ボタンに到達するまでのコピーライティングの中身です。
実際に、わずかな言い回しの差でコンバージョン率が変わるので、最近はデザインのA/Bテストだけではなく、短いコピーのA/Bテストも行われるようになりました。

参考:
UXデザイナーと何が違う?最近話題の新しい職種「UXライター」とは?

UX改善のかなめ「マイクロコピー」とは?

UXデザインの改善について考えるときに、フォントの種類や色、登録フォームの大きさや登録の流れなどを考えるひとは多いでしょう。
しかし、マイクロコピーについては、見過ごされてしまいがちです。

実は、マイクロコピーの定義というのは広いので、はっきりと定義することはできませんが、一般的にはボタンのラベル、ヒントテキスト、エラーメッセージを含む、ユーザーにアクションを促すための短めのコピーと解釈されています。
一見すると、それくらいの短いメッセージであれば、アプリケーション全体のデザインと比べると、それほど重要ではないように思えるかもしれません。
しかし、意外にも、こうした短い言葉にもコンバージョンを左右するくらい大きな力があります。

マイクロコピー 5つのポイント

マイクロコピーの概要と重要性についてはご理解いただけたと思いますが、それではどのような点に気をつけてマイクロコピーを組み立てていけばいいのでしょうか。
ここでは、効果的なマイクロコピーを作るための5つのポイントをご紹介します。

1. ユーザーの心配事を緩和する

ユーザーが登録フォームに到達したにもかかわらず、ユーザー登録を行わないのはどうしてでしょうか。
それは、登録や購入について疑問や懸念点、あるいは心配事があるからです。
そのため、マイクロコピーによってできるだけ不安を取り除くことができれば、コンバージョン率を上げることができます。

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Facebookのサインアップページを見てみましょう。
アカウント登録」というタイトルの下に、「情報の共有範囲は設定で管理できて安心です。」というコピーがあります。
電話番号やメールアドレスを入力させますが、「入力=友人に公開」ではないということが分かるので、ユーザーの不安をひとつ取り除きます。
また、誕生日を入力しないとアカウントを作ることができませんが、その理由はリンクを押すことで確認することができます。

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また、カンバン方式のタスク管理ツールTrelloトップページもご覧ください。
新規登録ボタンには、「新規登録 – 無料です」という言葉をつけて、無料でサインアップできることを強調しています。

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クラウド会計ソフトfreeeのトップページでは、「無料で試してみる」というボタンが合計で6箇所設置されています。
「試してみる」という言葉は「登録する」という言葉よりも敷居が低く感じられるので、一般的に登録率が高くなる傾向にあります。

2. 人間的なコミュニケーションをとる

画面上の言葉は実際の代わりとなることはありませんが、マイクロコピーによって人間的な語りかけをすることができれば、簡単にウェブサイトを信頼することができるようになります。

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ファッション通販サイトZOZOTOWNを例に見てみましょう。
このホームページの検索窓には、「何かお探しですか?」というプレイスホルダーが入力されています。
検索窓だけ設置して空欄にしておく場合に比べて、困った時に自然と検索窓のほうに視線が移動します。

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Booking.comの検索窓はもっとフランクです。
「行き先、宿泊施設名または住所」の検索窓には「世界にはまだあなたの知らない場所がいっぱい…さあ、旅に出ましょう!」というワクワクするセリフが表示されます。

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ドミノピザの注文ページでは、3種類のエントリー方法が表示されています。
「お手軽注文はこちら!!」「ご登録済みのお客様は」「カンタン2STEP登録」という吹き出しをつけて、セリフのように語りかけるマイクロコピーが付されています。
これによって、ユーザーは自分の好きな方法で注文することが容易になります。

3. 検索フィールドを最適化する

検索窓まわりに検索のヒントが適切に表示されていれば、ユーザーはより簡単に検索できるようになります。

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例えば、民泊サービスのAirbnbトップページに設置されている検索窓をご覧ください。
場所・日時・ゲスト欄には「行き先、都市、住所」「チェックイン→チェックアウト」「宿泊1人」といったプレイスホルダーが入っているので、それぞれの検索窓に何を入力すればいいのかが分かりやすくなります。

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同様に、UBER Eatsページでも、「住所を入力してください」の右側に例として「○○区××1-2-3」というように具体的な例が書かれているので、その形式通りに入力すればいいことが分かります。

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インテリジェンスが展開するオープンイノベーションサービスのeiiconの登録画面です。
「eiicon株式会社」などのプレイスホルダーを参考に入力すればいいので、何を入力すればいいのかが明確です。

4. ここからスタート

あたらしいサービスの利用を開始したいときに、オンボーディングの手法として「ここからスタート」(スタートヒア)と呼ばれるマイクロコピーを設置するサイトも増えてきました。

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Wordpress.comでは、ブログサイトを開設する際に、「ここからスタート。」という文字とともに、開設ウィザードを始めます。
その下には「まずは、どのような外観のホームページをご希望ですか?」というコピーを置き、ユーザーは3種類のタイプの外観からブログスタイルを決めることができます。

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Evernoteでは、トップページ下部に*「今日からスタート」「色々な発見ができる、新しいノートをお試しください」というコピーとともに、新規登録フォームを設置しています。
また、Evernoteには実際には無料・有料含めて3つのプランが用意されていますが、この登録フォームでは
「無料で新規登録」*というボタンにして、ユーザーの不安を払拭することに成功しています。

参考:
信頼性アップにつながる「スタートヒア」ページをサイト内に設ける5つのメリット

5. 写真とシンプルなマイクロコピーをペアにする

ビジュアルイメージはすぐに目に飛び込んでくるので、画像や図表を効果的に使うことは効果的です。
しかし、そこに突き刺さるシンプルなメッセージがあれば、さらに強力に伝えることができます。

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Todoistトップページでは、大きな写真と短いコピーの組み合わせを配置して機能を紹介しています。
「気が散らないよう集中しやすいデザイン」というデザイン上のメリットだけでなく、「タスク管理は人生の一部。Todoistで人生の舵を取り、充実した毎日を送ろう。」という人生において必要不可欠なことを伝えています。

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美しい写真と短いキャッチコピーのペアと言えば、Appleのホームページです。
例えばApple Pencilのページでは、「おなじみの形が革命を起こします。」という強力な印象を与えるコピーを採用しています。
購入ボタンは常に右上に固定されているので、訪問者はこれから出会ういくつものキャッチコピーに突き動かされ、欲しいタイミングで購入ボタンを押すことができます。

参考:
Appleも実践!シンプルだけど魅力的なデザインを実現しているホームページ6つの心得

まとめ

今回は、コンバージョン率改善のための「マイクロコピー」を作るための5つのポイントをご紹介しました。
マイクロコピーは、分かりやすくしようとすればするほど短く簡潔に表現しなければならないので、効果的なコピーを作ろうとするたびに難易度が上がります。
逆に、ユニークなマイクロコピーを作ろうとすると、マイクロどころかやや長くなって、明瞭性に欠けてしまうこともあるので注意が必要です。

その意味では短いコピーだと味気ないように思われるかもしれませんが、できる限りリスクをとって、A/Bテストを行なったりユーザーの声を拾ったりすることによって、より洗練されたコピーとして磨くことができます。
大切なのは、ユーザーの立場に立って、安心させたり楽しませたりワクワクさせたりすることです。
ぜひベストな表現方法を見つけてみてくださいね。