Hulu Liveが変えたUI〜色依存からの脱却とジェームズ・タレルのインスタレーション

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ユーザーがコンテンツにアクセスするのを簡単にするだけでなく、Huluのデザインチームは存在感のあり、はっきりと差別化できるUIを作り上げたいと考えていました。

ジョン・コーチ率いるデザインチームが新たな差別化について考えているときに議題に上がったのは、**「自分たちが提供しているものは何か」*ということであり、結論は「ストーリーテリング」*でした。

語り部が語るのを暖炉を囲って聞き入るのが、現代文化ではスクリーンを囲って番組を見入るのになぞらえて考えてみました。
そのとき、デザインチームが重要な要素として見逃さなかったのが、*「光」*です。

この「光」の使い方からデザインチームの頭の中に浮かんだのは、ジェームズ・タレルの作品でした。
ジェームズ・タレルは、主に光や空間を題材とした作品を制作している現代芸術家です。
日本でも世田谷美術館や名古屋市美術館をはじめとして、さまざまな場所で彼の作品を見ることができます。

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Copyright(C) James Tarell

タレルは没入感のある経験を作るために光を使っており、まさにHuluが実現したい没入的で映画のようで、なおかつパーソナライズされた経験を演出するのに最適でした。
タレルの作品と同様に、ステージを作り、ユーザーを空間に配置することで、独特の「ユーザー体験」が生まれると考えたのです。

「ブランドアイデンティティー」とは緑を全面に押し出すことではなく、「光を使った色面を通じての体験」そのものだと考えるようになったのです。

Hulu LiveのUIは「美しすぎる」と一時海外でも話題になりましたが、実は単にグラデーションを多用しているだけでなく、いくつもの問題を解決する考えられたデザインになっています。

例えば、当初Huluのデザイナーはフチなしのデザインを各画面で見せたいと考えていましたが、実際にはアートワーク(いわゆるジャケット画)の質は番組ごとにバラバラでした。
しかし、グラデーションのオーバーレイをかけることで、それらが全て統合されるように見えます。
デザイナーはエンジニアと協力し、独自のカラーピッキングのアルゴリズムを作り、主調色(ドミナントカラー)を分析して色調に基づいたグラデーションをそれぞれの画像にオーバーレイをかける方法を作り上げました。

差別化とは何か?

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毎月39.99ドル(日本円で約4,500円)を支払うことで、通常のHuluに加えて50以上のチャンネル数を持つHulu Liveも視聴することができます。
さらに、50時間分の録画ストレージまで用意されています。
Hulu LiveはAndroid・iOS・Apple TV・Chromecast・Xbox Oneに対応し、今年の後半にはRokuやAmazon Fire TVデバイスにも対応予定です。

アメリカではSling TV、Playstation Vue、DirectTV Now、YouTube TVといった競合サービスがあります。
しかし、こうした若手の競合に対して、4大放送(ABC・CBS・Fox・NBC)のライブ放送を配信しているのも、Hulu Liveだけです。

しかし、こうしたラインナップだけでなく、Huluが変えようとしているのはそもそものユーザー体験です。
「ブラウズ」(ぶらぶらと見る)という体験そのものをなくし、自分が今観たい番組をすぐに観られるようにしたいと考えています。