バズマーケティングとは、ユーザーによる口コミを生み出すことで、キャンペーンや商品を拡散させるマーケティング手法です。広告費を抑えながらもキャンペーンや商品を多くの人に知ってもらえる一方で、ユーザーの反応は操作しづらく、再現性が低いのが難点でしょう。
では、口コミが生まれる企画にはどういったポイントがあるのでしょうか。

今回は、ゴールデンボンバーからみるバズマーケティングのポイントを解説します。
「ゴールデンボンバー」は2004年に結成されたヴィジュアル系エアーバンドであり、8秒ライブやQRコードによる曲の配信など、ネット上でも話題になることの多いバンドです。それぞれのプロモーション事例を例に、なぜユーザーの口コミが生まれたのかを解説していきましょう。

参考:
生産実績過去10年間オーディオレコードCD合計|一般社団法人 日本レコード協会」

ゴールデンボンバープロフィール

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ゴールデンボンバー Official WebSite

ゴールデンボンバーは2004年に結成された4人組のヴィジュアル系バンドです。
バンドでありながら演奏は行わず、楽曲に合わせて行なうパフォーマンスが話題となりました。

作詞・作曲やライブの演出などはボーカルの鬼龍院 翔氏が担当しています。

ゴールデンボンバーが行ったプロモーション事例

日本レコード協会の発表によると、音楽CDの売上は20112年の3,108億円に比べ、2016年には2,457億円と年々減少傾向にあります。

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引用:日本のレコード産業2017

同協会が2016年8月に行った調査によると、CDのような有料ソフトを買わない理由として「無料の音楽配信サイトや動画配信サイト、アプリの利用で満足している」をあげた人は全体の21.0%にのぼり、YouTubeやiTuneといった配信サービスがCDの売上減少につながっていることがわかりました。

しかし、このような音楽業界の中でも、ゴールデンボンバーは様々なプロモーションを行なうことで売上を伸ばしてきました。
では、一体どのようなプロモーションを行ったのでしょうか。3つの事例を見てみましょう。

参考:
2016年度 音楽メディアユーザー実態調査|一般社団法人 日本レコード協会

事例1.8秒フリーライブ

たった8秒だけ行われた「8秒フリーライブ」はTwitter上で大きな話題となり、ライブの様子を撮影したツイートは8万回以上リツイートされました。

このライブはLINEスタンプの発売と新曲の発表に合わせて行われたものであり、ライブ前の準備の様子はLINE LIVE番組「さしめし」内でも公開されています。

参考:
[ゴールデンボンバー8秒間フリーライブ開催! | ゴールデンボンバー Official WebSite] (http://pc.goldenbomber.jp/contents/106528)
[ゴールデンボンバー異例ライブ 8秒の新曲歌い終了|日刊スポーツ] (https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1847675.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp)

事例2.QRコードによる曲の無料配布

2017年4月に発売したシングルCD「#CDが売れないこんな世の中じゃ」はQRコードで全曲無料配信されています。

新曲披露の際に音楽番組内でQRコードが印刷されたフリップボードを掲げ、CDが売れないから無料でプレゼントすると呼びかけを行っています。
それにより放送直後、アクセスが集中したことにより特設サイトが一時つながない状態になってしまうほどの大きな反響を得ました。

参考:
ゴールデンボンバー、Mステで演奏しながらQRコード掲げて新曲を無料配信 → アクセス集中でテレ朝サイトが一時つながらない状態に|ねとらぼ
[#CDが売れないこんな世の中じゃ | ゴールデンボンバー Official WebSite] (http://pc.goldenbomber.jp/musics/3899)

事例3.特典なしのCD

2014年8月に発売したシングルCD「ローラの傷だらけ」は、握手券やブロマイドなどの購入特典が一切ないCDとして多くのメディアで取り上げられました。

発売後第1週の売上は4万2845枚と特典付き前作の5分の1程度にとどまりましたが、オリコン2位につけています。
オフシャルブログ上では*「今消費されるCDは特典の方に需要が傾き、収録された音楽、歌のほうがオマケのようになってしまっています。」*と述べ、多くの人がCDや音楽について考えるきっかけになってほしいと意図を明かしました。

参考:
[「音楽は特典に勝てない」と鬼龍院さん ゴールデンボンバー“特典なし”CD、初週売り上げ前作の3分の1以下 それでも「うれしい」|ITmedia NEWS] (http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/28/news064.html)
ローラの傷だらけ|ゴールデンボンバー 鬼龍院翔オフィシャルブログ「キリショー☆ブログ」

ゴールデンボンバーからみるバズマーケティング3つのポイント

ここまで紹介してきた事例はバンドならではのプロモーションだと思われるかもしれません。ですが、企業のキャンペーンにおいても学べる点があります。

事例をもとに、ユーザーの口コミを生み出すようなバズマーケティングにおけるポイントを3つ紹介しましょう。

1.ユーザーに意見を問いかける

特典なしのCDやQRコードでの音楽配信は、どちらも音楽業界ではあまり行われてこなかったことです。
特にヴィジュアル系バンドのような固定のファンがついているバンドであれば、特典なしのCDは売上を大きく下げる可能性すらあります。

ですが、ゴールデンボンバーではあえてそのようなタブーにも斬りこみ、ユーザー自身にCDや音楽について考えるきっかけにしてほしいと表明しています。
このように業界の問題を明らかにし、意見を問いかけることで、ユーザーがSNS上で発言するきっかけを作っています。

ユーザー自身が意見を交わし合うSNSでは、このような提言がきっかけにして口コミが広がることもあるでしょう。

参考:
[金爆、特典なしシングル発売はクレームがきっかけ | ORICON NEWS] (http://www.oricon.co.jp/news/2042340/full/)
[マーケター必見!バズマーケティングの成功事例10選|LISKUL] (http://liskul.com/wm_buzzs10-4655)

2.気軽にソーシャルへ投稿できる環境づくりを行なう

口コミを生み出すためには、口コミのもととなる素材が提供されていなければいけません。
「8秒フリーライブ」では、無料のライブながらスマートフォンを利用した撮影が可能でした。その結果、Twitter上では、ライブに訪れたファンがライブの映像を投稿し、拡散されています。

ユーザーの口コミを操作しようと、規制をきつくしすぎてしまうと逆に参加までのハードルが高くなってしまいます。
キャンペーンを行なう際は、ユーザーにとって参加しやすい環境づくりが整えられているかチェックは欠かさないようにしましょう。

3.クロスメディアを活用して効果を高める

QRコードによる音楽配信では*「クロスメディア」*と呼ばれる、複数のメディアを活用することで広告の効果を高めるマーケティング手法が用いられています。

音楽番組からQRコードを利用して、特設サイトへ誘導することで、配信データだけでなくCDの発売情報もチェックできます。
新聞やテレビ、チラシといった1つのメディアでは表現しきれないことであっても、別のメディアへと誘導することで情報を補えます。

それだけでなく、メディアを複数利用することで、それぞれの特徴を生かしたユーザー体験を実現できます。テレビ番組では1曲しか歌えなくても、ネット配信であればユーザーに何度でも曲を聞いてもらえます。

チラシでキャンペーンの告知を行い、ネット上ではキャンペーン用のミニゲームを配信するといった幅広い企画が実現できるのがクロスメディアの特徴でしょう。

参照記事:
「続きはWebで」が広告の効果をあげる?「クロスメディア」の事例を紹介|ferret [フェレット]

まとめ

ゴールデンボンバーでは、業界のタブーに切り込みながら、ユーザーの心に訴えかける施策を数多く生み出してきました。特典なしのCD販売やQRコードによる楽曲配信からもわかる通り、音楽業界に対して自身の感じていることを率直に表現しているのもユーザーの心を動かしたポイントでしょう。

バズマーケティングは、ユーザーが口コミをしたくなるような、面白さや感動を生み出すことが必要です。ただユニークなだけでなく、どうやったらユーザーの心を動かせるのか考えてみましょう。