高齢化に伴い65歳以上のシニア層は2016年に3400万人に達し、総人口の27%を占めるようになりました。人口の4人に1人以上は高齢者であることから、ビジネスにおける注目度が年々高まっています。また、高齢者のインターネット利用率も増加傾向にあり、IT企業がシニア向けサービスを提供する機会も目にするようになりました。

とはいえ、「シニア層」に向けたビジネスはどのように展開すれば良いのか悩んでいる担当者もいるのではないでしょうか?現代のシニア層は趣味嗜好も多様化しており、かつての「シニア層へのイメージ」だけでマーケティングを行うことは困難になっています。

今回、シニア層の市場規模の推移を確認し、シニアマーケティングを考える上で必要なペルソナ設定やニーズについて解説します。また、具体事例も合わせてご紹介します。

シニア向け産業の市場規模

シニア層の人口増加に伴い、シニア層向けの市場規模も拡大傾向があります。みずほ銀行 産業調査部の資料によると、2012年のシニア層向けの市場規模(「医療」「介護」「生活産業」)が68.5兆円であるのに対し、2025年には107.6兆円と約57%上昇する見込みです。

シニア層の消費支出が増加することにより、食品、家庭用品、ファッション、IT(通信)、娯楽など様々な生活産業に影響をビジネスチャンスを与えると考えられます。そこで、様々な業界がシニア層向けマーケットに注力を始めています。

参考:
「高齢者市場への取組みの考察:社会的課題解決に向けて」| みずほ銀行 産業調査部

インターネット利用率の増加

また、近年のシニア層はインターネット利用率も増加しています。2016年に実施した総務省の通信利用動向調査によると、「1年に1回以上インターネットを利用したことがある」という調査に対して60歳〜69歳で76.6%、70歳〜79歳で53.5%の人々が利用したことがあると回答し、非常に高い結果になりました。

インターネットの利用用途も、「電子メール」「ネットショップ」「交通情報」「天気予報」と多岐に渡ることから、Webサービスに対するニーズの高まりがわかります。

メディアでも、SNSを使いこなすシニアが話題を集めており、IT企業もシニア層に向けたサービス開発やマーケティングが行われ始めています。具体的なサービスについては後述します。

参考:
60代のネット利用率は7割超!高齢者のインターネット利用状況がわかる最新データを解説|ferret

シニア向けマーケティングを実施する上でのポイント

シニア層に向けたマーケティングは事例が少ないことから難しいと言われることがあります。また、「シニア層」といえど様々なニーズを持った方がいるため、世間一般の高齢者のイメージだけでは対応しきれないことも要因でしょう。

そこで、シニア向けマーケティングを実施する上で確認すべきポイントをご紹介します。

「シニア層」のペルソナは多種多様

シニア向けマーケティングを実施する上でターゲットユーザーを明確にする必要があります。明確にするためには、ペルソナの設定を行いますが、「シニア層」のペルソナはニーズに合わせて設定できます。

株式会社 日本SPセンターの資料によると、シニア層は「アクティブ・シニア」「ギャップ・シニア」「ディフェンシブ・シニア」「ケア・シニア」の4つに分類できます。

「アクティブ・シニア」「ギャップ・シニア」は、新しい価値に対して敏感で「新たな需要」を創出できる傾向があります。「ディフェンシブ・シニア」「ケア・シニア」は、既存の必需品への需要を持つ傾向があります。

参考:
シニアって誰? <今話題の「シニア」層の定義> | シニアマーケティング研究室

世間一般の「シニア層イメージ」はNG

ペルソナ設定に関して、もう1つ確認すべきポイントがあります。それは、先にも述べたようにシニア層は多様なニーズを持っています。なので、世間一般のシニア層のイメージではマーケティングを行うに不十分と言えるでしょう。

博報堂の「新しい大人文化研究所」が行った40代〜60代への調査によると、約80%の人が「自分達は従来の40~60代とは違う」と考えていることがわかりました。

トレンドに敏感で、新しい物事にも積極的に取り組みたいという傾向があります。かつてのように、「健康」や「医療」、「介護」のようなニーズだけでなく、「衣食住」や「娯楽」に関して前向きに考えていることがわかります。

参考:
新大人研レポート No.17 シニアから新大人へ、新型50・60代に。その①|博報堂 新しい大人文化研究所

「革新的な商材」よりも「馴染みのある商材」

トレンドに敏感な傾向がある一方で、商材とニーズのミスマッチが起こる場合もあります。

ジャストシステムが運営するマーケティングリサーチキャンプの調査では、60代の40%以上が新しいデバイスが登場した際、操作方法を覚えることに抵抗を感じることがわかりました。

ガラケーに慣れているゆえ、スマートフォンの操作を覚えるのが難しいというイメージです。そのため、*「革新的な商材」よりも「(使い慣れた)馴染みのある商材」*を選びやすいと考えられます。

参考:
【超重要!】"シニア市場"とか言ってるけど、シニアのことを考えているの? マーケティングを考えるうえでとっても大切なことを教えます。| マーケティングリサーチキャンプ

シニア向けマーケティングの活用事例

次に、シニア向けマーケティングを活用した具体的なサービス事例をご紹介します。

趣味人倶楽部

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趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)

「趣味人倶楽部」は、株式会社オースタンスが運営するシニア層向けのコミュニティサイト(SNS)です。趣味を通じて仲間と知り合い、日記や写真で交流を深められるという特徴があります。

シニア層の中でも、物事に積極的な人々をターゲットにしており、旅行からグルメ、フィットネスなど様々な趣味のシニアが交流できる仕組みです。

みまもりほっとライン

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みまもりほっとライン | 象印マホービン株式会社

「みまもりほっとライン」は、電気ポットを手がける象印マホービン株式会社が提供する「見守り」サービスです。同社が販売する電気ポット「iポット」とスマートフォンが連携し、家族がシニアの安否情報を確認できるという仕組みです。

また、iポット自体には、お湯が溢れないロック機構や蒸気の影響を抑える機能など安全への配慮が施されています。

まごチャンネル

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まごチャンネル

「まごチャンネル」は、株式会社チカクが提供する写真共有サービスです。離れて暮らす家族から送られてきた写真をテレビで観られる仕組みです。

テレビと連動することで、シニア層でも抵抗なく操作することができるため話題を集めました。先に述べた「馴染みのある商材」を実施した事例と言えるでしょう。

まとめ

シニア向けの市場規模は2025年に100兆円規模に達すると言われており、今後ビジネスを展開する上で欠かせない市場に成長しつつあります。

介護や健康といった既存のサービスにも需要はもちろんありますが、「アクティブシニア層」のような「シニアに感じさせない層」の増加によって、ITやエンタメ分野のニーズが明らかになりました。

上記で紹介した具体事例のように、「IT」と「馴染みのあるデバイス」を掛け合わせるサービスは今後シニア向けビジネスを展開する上でのヒントになるでしょう。

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