自社商品のデザインや仕様、自社社員が作成した記事などのコンテンツは、知的財産としての価値を持ちます。そのような知的財産をライセンスとして販売するIPビジネスというビジネスモデルがあるのをご存知でしょうか。

今回は、「IPビジネス」とは何か、ビジネスに取り組む企業の事例を紹介します。ゲームやアニメ業界で利用されてきたIPという言葉ですが、IPは業界に関わらず存在します。自社で特許やブランド、コンテンツを所有している方は今後のためにもIPビジネスとは何か基本知識を学びましょう。

IP(intellectual property)とは

IP(intellectual property)とは、日本語では「知的財産」と訳されます。
知的財産とは、発明やデザイン、著作物など、人間が創造的活動により生み出したものを指し、楽曲やデザインといった芸術分野の作品のほか、顧客リストや社内のノウハウといった営業秘密も対象となります。

また、知的財産には法令により定められた権利または法律によって保護されるという利益を得られる権利として「知的財産権」が認められています。
例えば、楽曲や小説の作者に与えられる著作権は日本国内では著作権保護法で保護されています。
そのため、著作権を保有していない他者がその作品を無断で利用することはできません。一方で作者は他者から契約のもとライセンス料を受け取り、作品の利用を認めることも可能です。

IPビジネスとは、こういった知的財産権をもつ人物や企業が作品自体を販売して収益を得るだけでなく、自身の知的財産を販売または貸与することによってさらに収益を得ようとするビジネスモデルなのです。

参考:
なぜIP(知的財産)ビジネスに取り組むのか | 企業ビジョン・成長戦略 | フィールズ株式会社
[特許使用料が過去最高 5月経常収支、企業の海外事業好調で|日本経済新聞] (https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H4P_Y5A700C1EE8000/)

IPビジネスを展開している企業

IPというと、楽曲や小説、アニメといった芸術分野の作品というイメージが強いかもしれません。ですが、IPには植物の品種や半導体のチップなども含まれます。

では、具体的にどういった企業がIPを使ったビジネスを展開しているのでしょうか。代表的な4社を紹介します。

1.バンダイナムコホールディングス |アニメ・ゲーム

株式会社バンダイナムコホールディングス.png
http://www.bandainamco.co.jp/

バンダイナムコホールディングス では、『機動戦士ガンダム』シリーズをはじめとしてゲームやアニメなどエンターテイメント分野でのIPを所有しています。

所有しているIP(一部)
・『仮面ライダー」』シリーズ
 ・『アイドルマスター 』
 ・『ウルトラマン』シリーズ
 ・『それいけ!アンパンマン』
・『たまごっち』シリーズ

同社ではゲーム会社やパチンコメーカーと提携することで、これらのIPを使ったゲームやパチンコの展開を実現しています。
2016年3月期の決算では、売上高が6,200億円、経常利益が632億円となっており、売上高経常利益率は10.1%を超えています。2017年9月時点での大企業・製造業における売上高経常利益率7.47%であることと比較しても、高い利益を確保していることがわかるでしょう。

参考:
強力なキャラクターIPでコンテンツの多言語展開を拡大するバンダイナムコ|日経トレンディネット
[主要IPのご紹介 | 事業紹介 | 株式会社バンダイナムコホールディングス] (http://www.bandainamco.co.jp/group/ip.html)
[2017年(平成29年)3月期説明会資料|バンダイナムコグループ]
(http://www.bandainamco.co.jp/ir/library/presentation.html)
[大企業製造業の業況判断DI、4四半期連続で改善=9月日銀短観] (https://jp.reuters.com/article/boj-tankan-idJPKCN1C700X)

2.株式会社ブシロード|カードゲーム・オリジナルアニメ

ブシロード公式サイト___製品・イベント_(1).png
http://bushiroad.com/

株式会社ブシロードはカードゲームを中心にゲームやアニメ作品を展開している企業です。

【所有しているIP(一部)】
・カードファイト!! ヴァンガード
・ヴァイスシュヴァルツ
・『BanG Dream!(バンドリ!)』
 ・『ミルキィホームズ』

同社では、自社が所有しているIPをアニメ制作会社やゲーム製作会社に提供するだけでなく、他社のIPを利用したコンテンツ開発にも取り組んでいます。また、2017年9月にはシンガポールに本社を置くコンテンツ配信プラットフォーム「MobiClix Pte Ltd」との資本業務提携を発表し、海外展開にも積極的に取り組んでいます。

参考:
ブシロードとMobiClix、途上国向けデジタル・コンテンツ配信で資本業務提携
[コラム「社長木谷の視点」|株式会社ブシロード] (http://bushiroad.com/company/column_30.html)

3.株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)|マンガ・小説

無料小説ならエブリスタ.png
http://estar.jp/

DeNAでは任天堂などの企業と提携し、他社のIPを利用したゲームコンテンツの開発に取り組んでいます。それだけでなく、マンガアプリの「マンガボックス」や小説共有サイト「エブリスタ」を展開することで、自社IPの創出にも挑戦しています。

【所有しているIP(一部)】
 ・『恋と嘘』
 ・『天空侵犯』

参考:
[業績のご報告|DeNA]
(http://v3.eir-parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=ir_material&sid=72454&code=2432&ln=ja&tlang=ja&tcat=ir_material&disp=simple&groupsid=26874)
[菊池健×椙原誠×山内康裕:Webマンガと市場構造 「そのプラットフォームでしか見られないコンテンツを、どれくらい用意できるか。」 |DOTPLACE] (http://dotplace.jp/archives/22077)
任天堂とDeNA、資本・業務提携 任天堂IP活用のスマホ向けゲームアプリを共同開発へ | ITmedia NEWS

4.Imagination|半導体チップ

Imagination_Technologies___Developing_and_Licensing_IP_cores.png
https://www.imgtec.com/platforms/omnishield/

Imaginationは半導体 集積回路配置(チップ)をIPとして保有し、他社にライセンスを販売しているイギリスの企業です。

同社の「PowerVR」シリーズはIntelの「Atomシリーズ」や、Appleが「iPhone」「iPad」で採用している「Aシリーズプロセッサ」に内臓されています。
しかし、2017年4月、Appleは今後はチップを含め自社開発のシステムに切り替えることを宣言しています。ImaginationにおけるAppleからのライセンス料は2016年度の総売上高1億2000万ポンドの半分以上を占めており、同社はこの影響で主力事業の売却を決定しています。

【所有しているIP(一部)】
・「PowerVR」シリーズ

売上が1つの企業からのライセンス料に依存している場合、こういった経営上のリスクがあります。他社との提携はIPビジネスにおける基本ではありますが、提携先との契約解除によるリスクは認識しておいた方がいいでしょう。

参考:
[IPビジネスで成功する方法Imagination社にみる秘訣 |セミコンポータル] (https://www.semiconportal.com/archive/editorial/industry/ipimagination.html)
[半導体メーカー、スマホ時代の生き残り戦略 - 第1回 ライセンス企業の激突、ARMの競合にImagination Technologiesが浮上|ITpro] (http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130404/468563/)
[Appleから調達停止宣告されたImagination、全社売却へ | ITmedia NEWS] (http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1706/23/news054.htm)

まとめ

IPビジネスは、自社の知的財産を販売することで成り立つビシネスモデルです。アニメやマンガなどのコンテンツ、自社が保有している特許などの利用権を他社に販売することで安定した収益を実現できるのが特徴でしょう。中でも、海外に需要があるのがわかっているのに、自社で直接販売するとコストが高くなってしまう場合、現地の企業にライセンスを販売するビジネスが考えられます。

ですが、ライセンス販売を通した海外進出を行う場合は、現地で知的財産を守る法律があるのか、自社の特許は有効なのかといった点をチェックする必要があります。
改めて自社のIPを見直し、それがビジネスとしてどういった価値を持つのか考えてみましょう。

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