PVではなく態度変容が重要な理由

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飯髙:
SNSやWebのリーチの弱さという点で「コンテンツをどう流通させるか」がすごく重要だと思うのですが、そこで意識されていることはありますか?

谷口氏:
コンテンツの流通には、制作費と誘導費という条件があります。とはいえ、Webでは予算の問題もあり、制作費はおろか誘導費を十分に使えないのが現状です。誘導されないのでバズしか無いとなったらゲリラ戦ですよね。奇襲的クリエイティブをしかけるしかない(笑)

バズ系やお笑い系、感動系の長尺コンテンツなど様々ですが、結局良いマーケティングというのは、*その人の考えを変えて、感情を起こさせて行動を変えるものです。*それは、ある意味反発を生むものでもある。完全にバズを狙ってしまうとユーザーに迎合することになってしまいます。

現状、「ユーザーに感情を起こさせて行動を変える」というのは、アドネットワークを用いた分散型コンテンツには限界があると思っているんです。その商品がどう使われているかといった実用的なコンテンツが主流ですよね。

それも良いのですが、スマートフォンでコンテンツを観る時代に、どうコンテンツ作りを行っていくべきなのかも考えなければなりません。現在は、バズに頼り過ぎていて、ソーシャルのその先の表現というのは無いと思っています。

分散型コンテンツってそもそもシリーズ化できないんですよ。CDのアルバムみたいなこともできないし、連載もできない。パーツでしか観られないんです。

それは、永遠に貧乏だということなんです。ちゃんとコンテンツでお金を生むためには、Webコンテンツでも世間の空気が作れるということをガツンとやっていかなければなりません。枠の問題でもあり、コンテンツの問題でもあります。

バズ系のコンテンツばかりやっていると力を失っていくんです。メッセージ性の強いブランド枠に対するコンテンツはわけて考えないといけない。Webっていうのはプラットフォーム文化であり、プラットフォームで勝とうという世界だったのですが、今後はどういうコンテンツを創っていくか、という文化の勝負が新たに始まっています。

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飯髙:
ユーザーに感情を起こさせる……。谷口さんは様々なメディアで「態度変容」を起こすことが重要だとおっしゃっていましたね。

谷口氏:
PVで判断されがちなんですよね……。それならアドネットワークでいいじゃんってなりますよね。

態度変容は疑心暗鬼で分析してみたんですけど、予想以上にコンテンツ系ってすごく変容を起こすんですよね。マンガを読めばそりゃユーザーの行動も変わるなって。

これまでちゃんとそれにレスポンスできてなかった。PVしか見ていなかったと反省になっていて。今後はコンテンツとアンケートをセットにしていかないといけないなと思いました。

飯髙:
ferretでも定期的にアンケートを取るようにしています。僕らのコンテンツが良いのか悪いのか。編集における課題になっていて、そこが僕らの企画の源泉になっています。

谷口氏:
よく言うんですけど*バズったコンテンツと、その満足度が高いコンテンツは違いますよね。*じゃあ何が違うんだっていう話で、広がりと深さで違うので、その軸を混ぜていかないと思っていますね。

飯髙:
僕らferretでは、バズるコンテンツと、自社ツールへ誘導するコンテンツって全然違うと感じています。Tips系のコンテンツはバズるんですけど、離脱率が高い。一方で事例系のコンテンツPVが伸びないのですが、CVRが高い。

でも、頻繁にアンケートを取ろうと思うとそれなりに予算が必要ですよね。

谷口氏:
だから仕組みを作るのが優先だと思うんですよね。元々コンテンツとアンケートが別になっているのではなく、コンテンツを見た後にクイズを出すのも良いですし。仕組みが無ければ根本的な解決になりませんからね。

飯髙:
コストをかけずに導入できる仕組みもありますもんね。そういえば、態度変容を重視されている中で、今でも「バズ」の依頼を受けたりするのでしょうか?

谷口氏:
ありますね。誘導費まで予算が下りないことが多いんですよ。Webの施策っていうのは実験的じゃないですか。どの企業も半信半疑でやっているから莫大な予算は出ないんです。態度変容を起こすコンテンツも、まずは結果を出さないと先がないなと感じています。

飯髙:
目先の結果に寄ってしまう……。

谷口氏:
予算が無いのはしょうがないので、それを繰り返し成功させていくしかないんですよね。

でも、動画は変わってきましたよね。動画って結構長くジワジワ観られるんです。昔に比べてスマートフォンで見られているなという実感がすごいあって。スマートフォンで動画を見るのが普通になっているんだなとユーザーの声を観ているとわかりますね。

飯髙:
インスタグラムの「ストーリー」など勢いがありますよね。

谷口氏:
現在注目しているのが、実店舗などインスタ映えする場所を広告用にガンガン作っちゃえっていう。
それで、ようやく建築学科の意味が出てくるわけです。強引に結び付けてみました(笑)

ただ問題は、実店舗の実績としては過去にワコールさんの男性パンツのPRをした時に、パンツに合うワインをソムリエが出してくれる店を開いたんですけど。その実績しかないんですよ……。

ただインスタ映えっていうのは、何か結局ユーザーがどのように主役になるのかっていうのを盛り付けていくだけなので、あれは面白いなって思っています。

これからも増えていくのでしょう。今までのコンテンツっていうのは、キャラクターやスーパーヒーローがいたんですけれども、それがユーザーになっていくのをどう支援をしていくのか。

チームラボの猪子さんともそういう話をするんですけど、彼の舞台ってキャラクターを出さないんですよね。ユーザーを主役にしている。猪子さん自身もキャラクターを作ったほうが楽なのはわかっているんですけれども、それだと今までと変わらないからっていう話をしていて、あえてやめていると言ってました。