新規顧客開拓が難しくなっている根深い背景

なぜ難しくなっているのか。佐藤氏によると、理由は大きく5つあります。

【新規顧客開拓が難しい5つの理由】
1.人口の急激な減少
2.超高齢化社会&消費しない若者
3.陳腐化するUSP    
4,溢れすぎるモノ
5.情報過多と二極化

減る国内人口、高齢化、需要と供給のバランス崩壊・・・

現在日本の人口は減少の一途をたどっており、40年後には4,000万人減ると統計が出ています。
100年後には4,000万人になり、韓国よりも人口が少なくなります。

母数が減っているということは、そのぶん新規を増やせる確率も減ります。
ただ、人口が減ってもファンがいれば望みはあると佐藤氏は指摘します。
「逆にいうと、人口が減ってもファンをキープしていれば売り上げは減らないと言えます。」(佐藤氏)

2つ目は高齢化です。
2007年生まれの人は平均寿命が107歳まで伸びると言われています。
2020年には女性の半数が50歳越え、2024年には3人に1人が60歳以上になります。

「自分自身、55歳になってだんだんわかってきたんですが、老人って先行きに対する不安とかで財布の紐が固くなってくるんですよね。
あと認めたくないですが好奇心がだんだん減少していきます。」(佐藤氏)

高齢化社会が進み、消費に消極的な世代が増える一方で、若年層の消費も鈍っています。
若年層が消費しない大きな理由として佐藤氏は「若年層の独身の割合が半数を超えている」背景があると言います。

若者が消費しない理由は様々言われていますが、大きいのは、十数年後、半数が独身になる
ということですね。結婚すると新しい需要が山ほど増える。その需要が激減しているんです。」(佐藤氏)

また、需要は減っているのに、モノは溢れすぎています。

「選択肢が多すぎると、人は買わなくなります。
ジャムの実験(※)があります。6個のジャムを置いた売り場と、24個のジャムを置いた売り場を用意して、どっちの方が売れるかを検証しました。
24個の方が売れそうですが、選択肢が多いと人は悩んで、本当にこのジャムでいいのかと自信をなくして、保留にして、結果購入をやめてしまうんです。
まず、商品が多いとモノが売れなくなる。」(佐藤氏)

※ジャムの実験・・・「決定回避の法則」の代表的な実験。「決定回避の法則」は、人は選択肢が多いと決められずに結果購入にいたらないとする行動心理学用語。

USPを構築しても、すぐに他社に真似されてコモディティ化する時代

従来のマーケティングメソッドでは、3C分析を行ったうえでまず自社のUSP(※)を明確にする工程を踏むのが一般的でした。

※USP・・・「Unique Selling Proposition」の略。「顧客に対して自社だけが約束できる利益」のことで、自社だけが持つ価値を端的に表す際に用いられる。

しかし、USPはすぐ陳腐化する時代に変化してきたようです。

「良いものであればあるほど、先行商品は研究されて追随されて、陳腐化していきます。
USPだけでは競合とは戦えないんです。」(佐藤氏)

USPはほとんど意味がなくなってきています。
であれば、今たまたま使ってくれている人をファンにしていくこと、既にファンになってくれている人を大事にするための施策を行なうべきでしょう。

ネットの情報にものすごく触れる人と全く触れない人とで完全に分断されている

5つ目の情報過多と二極化について、佐藤氏の詳細な解説がはいりました。
ネットを活用している情報感度の高い人は、ものすごい量の情報にまみれています。

2010年のデータ総量は約1ゼタバイトで、1ゼタバイト=世界中の砂つぶの数と言われています。
2020年のオリンピックイヤーには35〜40ゼタバイトになると言われています。
佐藤氏は、自社の広告も情報も「砂の1粒と同じ」と指摘し、現代を「情報“砂の一粒”時代」と呼んでいます。

一方で、ほとんど情報に触れていない層が多数いるのも事実です。
日本は、ネット空間にほとんどアクセスしない人の割合が異常に高くなっています。

「3年前のデータですが、日本国内で月に1回以上検索するのは5,200万人、ということは7,500万人ぐらいは月に1回も検索していません。
Yahoo!が出した都道府県別の検索数を見ると、東京しか検索してないんです。
東京はかなり特殊な環境です。
東京に住んでいるとみんな検索したりスマホ使ったりしているのでそれを基準にマーケティングしてしまうけど、東京は別の国と捉えるべきです。」(佐藤氏)

マーケティング界隈では「スマホがよく見られている」「スマホしか見られなくなっている」と言われがちですが、日本全国で考えると実はそこまで見られてはいないようです。
日本の場合、ネットを異常に使っている人と使っていない人が完全に分断されてしまっているのが現状で、マーケターはその分断を認識する必要があります。

情報感度が二極化した今、自社の情報を全くの新規ユーザーに届けるのは非常に困難です。
多くの情報に触れている高感度なユーザーは、興味のない情報は無視します。
情報量の少ない人は、テレビは見るもののネットの情報は伝わりません。

しかし自社のファンであれば、情報を届けることはそれほど困難ではありません。
まずファンに伝えて、そこから広げていく手段の方が効率でしょう。

今回のセッションのテーマでもある「ファンベース(ファンを獲得し、育成するための中長期的なマーケティング施策)」は、情報が届きにくい現代でも有効な、数少ない手段なのです。