NHK広報局をはじめTwitterを積極的に活用していることで知られるNHK(日本放送協会)から、運営からたった1年で8万フォロワーを獲得している注目のアカウントが登場しました。

今回は、NHK 「ねほりんぱほりん」のTwitter運営から見えてくるリアルタイムマーケティングの手法と効果を解説します。

ねほりんぱほりんは、人形劇風のトーク番組というユニークな番組内容もさることながら、Twitterでは優れたリアルタイムマーケティングを行っています。
企業の担当者をはじめ、Twitterを戦略的に活用したい方はぜひ参考にしてみてください。

NHK 「ねほりんぱほりん」とは

ねほりんぱほりん___NHK.png
http://www4.nhk.or.jp/nehorin/

NHK 「ねほりんぱほりん」とは、NHK(日本放送協会)にて2016年より放送している人形劇風トーク番組です。「ねほりんぱほりん」では、顔出しNGの訳ありゲストや聞き手の山里亮太氏・YOU氏はブタやモグラの人形として登場します。

普段はメディアの表舞台には登場しない人物にスポットライトを当てているのが特徴で、過去には「養子」や「ゴーストライター」「元国会議員秘書」「元薬物中毒者」などがゲストとして呼ばれています。

2015年より放送開始され、2016年10月にはレギュラー放送が開始しています。その後半年の休止期間を経て、2017年10月より第2シーズンの放送が始まりました。

公式Twitterアカウント概要

NHK_ねほりんぱほりん__nhk_nehorin_さん___Twitter.png
https://twitter.com/nhk_nehorin

アカウント開設:2016年9月
ツイート数:834
フォロワー数:87,273

「ねほりんぱほりん」では、2016年10月のレギュラー放送前にTwitterアカウントを開設し、2017年10月30日現在8万7千万人のユーザーにフォローされています。

1ツイートで105名ほどのフォロワーを獲得している計算となり、いかに急速なスピードでフォロワーを増やしているかわかるでしょう。

NHK「ねほりんぱほりん」の人気ツイート

「ねほりんぱほりん」では11以上のツイートが5千リツイートされているほど安定して反響の大きいツイートを生み出しています。
その一部を紹介しましょう。

1.話題となったニュースの内容に合わせたツイート:痴漢えん罪経験者

こちらは「痴漢えん罪経験者」をゲストに招いた際の弁護士によるコメントを取り上げたツイートですが、ツイート自体は放送のタイミングに合わせたものではありません。

このツイートがされた前日の5月15日に、東急田園都市線青葉台駅で痴漢を疑われた男性が線路に飛び降り死亡するという事故がありました。
前後には痴漢を疑われた男性が線路に逃げ込むトラブルが相次いでおり、実際にツイートに対しては事故について言及しているものも多く見られます。

参考:
[鉄道事故:痴漢疑い、はねられ死亡 線路に飛び降り 横浜・青葉台駅|毎日新聞] (https://mainichi.jp/articles/20170516/ddm/041/040/131000c)

2.ユーザーの共感を生み出すツイート:最終回SP

上記のツイートは、放送前の告知として配信されたツイートです。
2017年3月31日の月末金曜日にツイートされており、プレミアムフライデーについて取り上げています。

プレミアムフライデーとは月末の金曜日は通常よりも早く業務を終えるという経済産業省及び経団連が主導してきた経済刺激策であり、2017年2月から始まりました。
しかし、実際には月末の金曜日は多くの企業が経理業務で忙しく、曜日の変更も視野に入れるべきだと指摘されています。

こちらのツイートに最終回の告知だったのに加え、プレミアムフライデーという時事性の高い内容とユーザが共感する内容を取り組むことでリツイートを伸ばしました。

参考:
盛り上がらぬ「プレミアムフライデー」に曜日変更案浮上 (1/5) |ITmedia ビジネスオンライン
プレミアムフライデーとは?BtoC企業の新たなビジネスチャンスを理解しよう|ferret [フェレット]

3.番組の裏側を取り上げたツイート:地下アイドル

上記は「地下アイドル」を取り上げた回の放送後にツイートされた内容です。
番組の裏側である人形劇の動画を配信しているだけでなく「背面ケチャ」や「推し曲」といった地下アイドルファン特有の言葉を利用し、ユニークな内容に仕上げています。

こちらのツイートには人形を動かしているスタッフなどに対するねぎらいのコメントがついており、ユニークさだけでなく番組の舞台裏に対する興味深さが「いいね」やリツイートにつながっていることがわかります。

参考:
[NHKねほりんぱほりんのベストツイート|favstar]
(http://ja.favstar.fm/users/nhk_nehorin)

運営のポイントは「リアルタイムマーケティング」

なぜ「ねほりんぱほりん」はここまで多くの人気ツイートを発信し、かつフォロワーを増やすことができたのでしょうか。その理由としては、ユニークな番組内容もさることながら、Twitterでのリアルタイムマーケティングが挙げられるでしょう。

リアルタイムマーケティングとは、顧客が必要とする情報を最適なタイミングで提供することでコミュニケーションを図り、 広告効果を最大化する マーケティング手法を指します。

NHKでは、20代のテレビの視聴傾向としてリアルタイムでの視聴だけでなく、ネットの動画共有サービスにアップロードされている動画やTwitterなどのSNSをまたいで視聴が行われていることを指摘しています。

実際、「ねほりんぱほりん」のTwitterアカウントは、リアルタイム視聴とネットにアップロードされる動画、Twitterの3つをつなぐ役割を背負っているのがわかります。

参考:
リアルタイムマーケティングとは?一瞬で顧客のニーズを掴むマーケティング手法を解説|ferret [フェレット]
20代は、テレビのリアルタイム視聴と録画再生、動画視聴をどう使い分けているのか?|NHK放送文化研究所

1.時事ネタに合わせた放送内容

2017年10月より開始された第2シーズンでは、新作と過去の再放送を織り交ぜながら放送しています。新作が時事に合わせた内容であるだけでなく、過去の再放送もその時々の社会のニュースに合わせて選択されています。

例えば、2017年10月に再放送された「元国会議員秘書」を取り上げた回は、衆議院議員選挙期間の最中に放送されました。

上記のように、スタッフが「今見てほしい」と考えている回だとツイートしており選挙期間に合わせた放送内容であることがわかります。

参考:
[ねほりんぱほりん▽元国会議員秘書…知らなかった!「先生命」の超裏方人生|NHK]
(http://www4.nhk.or.jp/nehorin/x/2017-10-18/31/18498/1317006/)

2.放送前には季節や時事を取り入れたお知らせをツイート

番組の放送前には、季節や社会で話題になった内容を加えたお知らせをツイートしています。
例えば以下のツイートでは「#中秋の名月」という季節柄に合わせたハッシュタグを用いて、番組の予告を行っています。
画像もツイートに合わせて夜景を眺める番組のワンシーンをピックアップしています。

番組の予告ながら、1,200以上「いいね」されており、ユーザーからも大きな反響を得ているのがわかります。

3.放送時間中にセリフ+画像を抜粋して投稿

「ねほりんぱほりん」ではゲストや聞き手による発言をピックアップして、番組放送中にリアルタイムでツイートしています。

例えば、上記のツイートではゲストによる発言を箇条書き形式でまとめ、番組中のワンシーンを画像として投稿しています。

このようなリアルタイムのツイートを行うことで、視聴者は番組内で印象に残ったセリフや場面に対して、すぐに公式アカウントからのツイートをリツイートして言及できる仕組みとなっています。また、番組専用のハッシュタグも利用しており、視聴者が気軽に番組に言及しているツイートを検索できるようになっているのもポイントでしょう。

4.放送後に動画公開することでホームページに誘導

「ねほりんぱほりん」では、リアルタイムのツイートだけでなく、放送後にも番組を楽しめるような工夫がされています。

アニメと一体化する裏技「鼻イヤホン」【ねほりんぱほりん】___どーがレージ___NHKオンライン.png
http://www.nhk.or.jp/d-garage-mov/movie/90012-21.html

「ねほりんぱほりん」では、番組内のワンシーンをNHK公式ホームページ内の動画公開サービス「どーがレージ」にて公開しています。

例えば、上記はアニメや漫画が好きな女性ファン自身がアニメキャラになりきるために行う「鼻イヤホン」を取り上げた動画です。

上記のように、Twitterから動画へ誘導を行い、放送後でもちょっとした隙間時間に番組を楽しめるようになっています。

5.スタンプや画像を用意して口コミを呼ぶ仕組み

「ねほりんぱほりん」では、公式ホームページ上で番組の内容を取り上げたオリジナル画像の配布も行っています。

例えば上記は、複数の男性と交際することでコミュニティ内の人間関係を壊してしまう通称「サークルクラッシャー」のゲストを取り上げた放送後に投稿されたツイートです。
番組内でゲストが話していた男性に恋心を抱かせる言葉遣いを番組のモチーフである豚のイラストで再現しています。

イラストを公開することで公式ホームページに誘導するだけでなく、LINEなどのメッセージアプリやSNSでの利用を促しているのもポイントでしょう。
このようなイラストをユーザーがメッセージアプリやSNSで利用することで、番組に対する口コミが生まれる可能性があります。

「ねほりんぱほりん」のリアルタイムマーケティングの構造

「NHK ねほりんぱほりん」のTwitterアカウントでは、番組内で登場した印象的なセリフをツイートすることで拡散を生み、他のユーザーに視聴を促すという取り組みを行っています。その土台には、以下のように拡散を生み出す仕組みがあります。

1.時事に合わせた放送番組を設定
2.放送前には季節や時事を取り入れたお知らせをツイート
3.放送中はリアルタイムで印象的な発言と画像をピックアップし、番組指定のハッシュタグ付きでツイート
4.放送後には印象的なシーンを抜粋してホームページ上で公開し、さらに視聴者を増やす
5.LINEスタンプのような感覚で利用できる画像を配布、他のユーザーへ番組の画像が伝わるようにしている

このように放送前から放送中、放送後まで視聴者を増やしていく仕組みがあるからこそ、「ねほりんぱほりん」は安定してフォロワーを増やしているのかもしれません。

まとめ

「NHK ねほりんぱほりん」のTwitter運営からは戦略的に視聴者を増やしていく仕組みが伺えました。これは番組だけでなく、イベントなど企業の取り組みにも活かせるでしょう。
例えば、ユーザー向けの交流イベントの場合、以下のような仕組みが作れます。

1.時事に合わせたセッションの登壇者を手配
2.開催前には季節や時事を取り入れたお知らせをツイート
3.開催中はリアルタイムで登壇者の印象的な発言と画像をピックアップし、イベント指定のハッシュタグ付きでツイート
4.開催後には印象的なシーンを抜粋してホームページ上で公開し、イベントへの注目をさらに集める
5.LINEスタンプのような感覚で利用できる画像を配布、他のユーザーへイベントが行われたことを伝わるようにする

リアルタイムマーケティングは担当者の判断力が試されるため、難しさを感じる方も多いかもしれません。ぜひ今回の事例を参考にして自社でも取り組めるものがないか考えてみるといいでしょう。