
「ファンは“神様”ではない」佐藤尚之(さとなお)氏が語る“ファンベース”への取り組み方
- 2018年2月5日
- ニュース
テクノロジーの発達に伴い デジタルマーケティング が一般的になった現代において、改めて“顧客とのリアルな接点”が重視されはじめています。 マーケティング 施策の一環として、「グループインタビュー」や「アンバサダーイベント」など、“顧客との接点”を取り入れている企業も珍しくありません。
とはいえ、肌感覚として顧客との接点を創り出すことは大切だと認識していても、自社で具体的な施策として活かしきれていないという方もいるのではないでしょうか。
通称“さとなお”として知られるコミュニケーション・ディレクター 佐藤尚之 氏は、顧客との接点を持つ上で、「まずはファンの声を“傾聴”し、そのファンが自社の商品のどの部分に共感してもらえているのかを知ることが大切」と述べています。
今回、ferret 創刊編集長 飯髙悠太が佐藤尚之 氏の新著、「ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために」にも提唱されている「ファンベース」についてお伺いしました。顧客の声を企業の成長に活かすためのヒントになるでしょう。
佐藤尚之 氏 プロフィール
佐藤尚之(さとなお)
コミュニケーション・ディレクター
(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。東京大学大学院非常勤講師。
朝日 広告 賞審査員。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとして キャンペーン 全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。現在は 広告 コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝 キャンペーン 」でのJIAAグランプリなど受賞多数。
本名での著書に「明日の 広告 」「明日のコミュニケーション」(ともにアスキー新書)。「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊に「ファンベース」(ちくま新書)
“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(光文社文庫)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。
「ファンベース」は安定的な売り上げのための“中長期的施策”
飯髙:
今日はよろしくお願いします。2008年にさとなおさんの著書『明日の
広告
』を読んだときは、本当に衝撃的でした。それ以来、さとなおさんの発信されるメッセージをずっと拝見してきたので、今日は光栄です。
佐藤 氏:
ありがとうございます。よろしくお願いします。
飯髙:
さとなおさんが近年提唱されている「ファンベース」についてお伺いできればと思います。
「企業の成長のためにも、ファンベースを取り入れよう」という言葉をよく聞くのですが、実際にそれがどんな活動や施策を指すのかをイメージできない ユーザー が多いと感じています。
まずは、さとなおさんが、“マスではなくファンを重視する理由”からお伺いできますでしょうか?
佐藤 氏:
最初にお断りしておくと、僕自身はマスベースによる、つまりマスメディアを使ってマス(大衆)にリーチしようとする
キャンペーン
を全く否定していません。
ただ、圧倒的に情報が届きにくくなった現在、認知や話題化のための キャンペーン はなかなか効かない時代になっています。ちょっと話題になってバズっても、数時間から数日ですぐに忘れ去られてしまう。マスの キャンペーン だけでは届かない層が増えてきた時代に、中長期的なスパンで商品への共感や愛着を形成していく施策がファンベースだと考えています。
ファンベースを定義するなら、ファンを大切にし、ファンをベース(土台・支持母体)にして中長期的に売上や価値を上げていく考え方。ファン自身が長くその商品を使い続けてくれることと、そのファンが周りの人にすすめてくれることで新規の顧客にリーチすること。この2つによって、中長期的に安定した売り上げをあげる施策です。
パレートの法則 (2:8の法則)で言われるように、多くの商品において2割の上位顧客が8割の売り上げを支えています。その2割のファンきちんとキープする施策(ファンベース)で売り上げの安定とアップを図りつつ、認知や話題化 キャンペーン を組み合わせて新規顧客も開拓していくといった、相乗効果を起こす感じをイメージしてもらうのがいいと思います。
「ファンベース」は中小企業において、特に効果的
飯髙:
企業の規模感によって、ファンベース施策と、
キャンペーン
施策、それぞれの重要度は変わりますか?
佐藤 氏:
よりファンベースが重要になるのは、中小企業のほうでしょうね。とくに、宣伝広告費に多くの予算をかけられない中小企業は、マスメディアを使用した
キャンペーン
を頻繁かつ継続的にやっていくのは現実的ではない。そう考えると、ファンベースが施策の中心になる。というか、ファンベースが唯一の方法になるといっても良いくらいかもしれません。
また、イノベーターやアーリーアダプターなど、感性の鋭い人たちに使ってもらいたい商品の場合もファンベースが重要になります。大量の情報に触れている彼らに、マスベースの キャンペーン で企業に都合のいいことを一方的に伝えても、ほとんどスルーされてしまいます。唯一届くのは、価値観の近い友人からの 口コミ くらい。だから、イノベーターやアーリーアダプターを狙う場合も、ファンベースが重要になってくるでしょう。
飯髙:
僕も日頃から、
インフルエンサー
マーケティング
はもう届かないなと。友人などの強い絆をもった人からの
口コミ
だけが伝わっていくと考えています。
佐藤 氏:
その通りだと思います。
ただし、 インターネット の情報にあまり触れてない地方の人たちには、まだテレビなどのマスメディアやタレントなどの インフルエンサー の影響力はあります。芸能人がテレビで推薦した商品も、地方では購買率が上がります。
でも、都会に住むイノベーターやアーリーアダプターたちは、飯髙さんがおっしゃったように、 インフルエンサー が宣伝したからといってものを買ったりしない。単に声が大きなだけの インフルエンサー の言葉より、自分と価値観の近い人や信頼できる人の 口コミ を信頼するのです。
ファンベースに取り組む前に、まずは「ファンの声」を傾聴する
飯髙:
実際に、ファンベースの施策を行う場合、企業は何からスタートするべきですか。