「ビートルズですら世界を変えられなかった」櫻田潤が“学び”を重視する理由

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情報のインプットとアウトプットをつなげることを徹底

ferret:
確かに、感覚的に捉えることは大切ですね。櫻田さんは、先ほど「もともと、読んだ本などを図解するのが好きだった」と仰ってました。図解して理解するというプロセスから“学ぶ意欲”が強く感じられます。その源泉はどこにあるのでしょうか?

櫻田 氏:
学びの源泉。すごい質問ですね(笑)

何だろうな……。*源泉になっているのは「好奇心」ですね。*とにかく知りたいという気持ちがあるんですよ。まず、テクニック的なところでお話しすると、(情報の)インプットとアウトプットをつなげるっていうのを徹底しています。

例えば、NewsPicksを使う場合であれば、ブックマーク的に「Pick」することも可能なのですが、必ずコメントを付けるというルールを自分に課しています。ちょっとでも良いから自分の考えを入れる。

でも、情報源は基本的に、自分が好きなテーマしか選んでいないんです。例えば、小さい頃、好きなキャラクターとかたくさん覚えられたじゃないですか。好きな物をとことん掘り下げていく感覚です。

ferret:
冒頭に挙がった「ROCK’N’ROLL METRO MAP」がまさにそうですよね。好きなミュージシャンからルーツを深掘りしていくような。(イギリスのロックバンド)Oasisのリアム・ギャラガーが「ジョン・レノンが好き」と知れば、必然とビートルズを聴くようになるように。

櫻田 氏:
まさにそうですね。音楽もテクノロジーも1つのカルチャーだと思っているんですよね。経済だって、カルチャー誌を読んでいる感覚です。そもそも、勉強しているという感じはないですし、好きなアーティストを辿ってきた道と同じアプローチを、あらゆるカルチャーに対して行っている気持ちです。

あと、いろんな物事に「凄い!」と感じやすい体質なんです。Googleが何か発表すれば、すぐに凄いと感じるんです。そういう感受性みたいなところは、学ぶ上で重要かもしれませんね。「必要だからやらなくちゃ」というより、「何これ凄いな」でスタートしています。
  

GoogleやFacebookは世界を変えている

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ferret:
櫻田さんは元々音楽がお好きだったとのことですが、テクノロジーや経済に関心を持ち始めたのはいつ頃からなのでしょうか?

櫻田 氏:
音楽とテクノロジーは1つのカルチャーとして捉えています。NapsterやMySpace、iTunesにBeatsなど様々なサービスが生まれていたので関心を持ちやすかったんですよね。

アメリカのテキサスで開催される「South by Southwest(略称:SXSW)」という音楽や映画、テクノロジーのイベントがあるのですが、もはや1つのカルチャーになっています。

ただ、唯一「経済」は異色だなと感じています。僕がずっと心に思っていることがあって、「ビートルズですら世界を変えられなかったな」ということです。ジョン・レノンの「(自分たちは)キリストより人気だ」という発言がキッカケとなり、レコードが燃やされてしまうような事態になり……。音楽は1つのカルチャーだけど世界を変えることはできなかった。

*でも、GoogleやFacebookは明らかに世界を変えているんですよね。*その理由は何かというと、資本主義的なアプローチを取り入れているからだと思っています。音楽単体でそれを実現するには難しいのですが、AppleのiPodやiTunesのように音楽とテクノロジーが交わると可能になる。

音楽とテクノロジーを突き詰めると、結果として経済は欠かせない要素の1つということがわかります。

ferret:
音楽に関心があり、そこに対してテクノロジーが密接につながっている。それを起点に経済や政治、社会全体に関心を持つイメージですね。

櫻田 氏:
結局、“世界を変える”には、そういった要素も必要だと気付いたんですよね。今関心のあるカルチャーを挙げたように、僕は「デザイン」自体に興味がそこまであるわけではないんですよ。様々なカルチャーに関心を持って、それを表現するためにデザインをしていると個人的に思っています。

ferret:
必要な要素として経済を学ぶことにつながったのですね。櫻田さんは、「学び」についてどう思われますか?

櫻田 氏:
*学ぶことは「生きる」に近いなと思っています。*常に新鮮でいるためには絶対に必要です。知らない分野に出会うと、誰でも一気に初心者になるんですよね。そこがポイントだと思います。

インフォグラフィックだって続けていると、「我々は物知りだね」みたいな空気が出てきちゃうわけです。すると、意識しなくても傲慢になってしまう気がしていて……。
そんな知識すぐに崩れるんだ」っていう気持ちがどこかにあるんです。

過去の実績とか蓄積とかを忘れるために学び続ける感じですね。常に初心者であり続けたいんですよ。
  

「成果につながった経験があるかどうか」学び続けるための動機とは

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ferret:
初心者であり続けたいという動機があるからこそ学び続けられるんですね。櫻田さんまでとはいかなくとも、社会人として学び続けたいと感じた方に向けて何か取り組めることはありますか?

櫻田 氏:
自身が学んだことが成果に繋がった経験があるかどうかが重要だと思います。学んだことをアウトプットし続け、成果がでるかわからない中で、何かをキッカケに成果につながるタイミングというのがあります。

そこまで続けられると、ずっと続けられる。インターネット上でどんどん発信し続けるのが良いと思います。ブログを書くのも良いですね。

ferret:
櫻田さん自身、2010年に「ビジュアルシンキング」を立ち上げられたタイミングで、もしTwitterをやっていなかったとして、インフォグラフィックを作り続けていましたか?

櫻田 氏:
もしかすると、作っていなかったかもしれませんね。フィードバックの得られやすい環境と、その置き場があったというのは大きいですね。

ただ、矛盾したことを言うと、読者0だったとしても置き場があれば続けるかもしれません。もちろん、そこで成果を得てブレイクスルーするためには「読者の反響」が影響すると思っています。今後さらに伸び続けるか、その“伸び率”という意味では外発的な要因は影響します。