*CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー、家電見本市)*は、ネバダ州ラスベガスで開催される見本市です。一般公開はされていませんが、ショーでは多くの新製品が発表されたり、プロトタイプが展示されるので、多くの業界関係者が注目しています。

かつてはファミリーコンピュータ(ファミコン)やバーチャルボーイ、Xboxなども展示されたCESですが、今年も興味深いラインナップが揃っています。

そこで今回は、世界最大の家電市「CES 2018」で公開された「すごい技術」 をご紹介します。私たちの家に間もなくやってくるかもしれない技術は、CESを覗けばわかるかもしれません。
  

世界最大の家電市「CES 2018」で公開された「すごい技術」 7選

1. e-Palette (トヨタ)

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トヨタ自動車がCESで出展したのが、移動・物流・物販など様々な目的に利用できるモビリティサービス(Maas)専用次世代電気自動車(EV)である*「e-Palette」*です。実際には「e-Palette Concept」と「構想段階」であることを打ち出しています。

e-Paletteは、個人向けのEVではなく、法人を想定したEVです。ボディは低床で、大きさはバンのようです。

洗練されたシンプルなデザインですが、コンパクトな業務用EVとしては想定できるものです。しかし、その想定範囲は、移動や物流、物販と、非常に広範囲です。様々な場面に応じて使い方が自在に変わるので、あえてデザインも質素なものにしています。

映像を見ていただければ、実際の利用のイメージが付きやすいでしょう。自動車は自動運転で動き、ある時間はライドシェア、ある時間は荷物の運送といったように利用時間によっても様々な用途に変わります

さらに、トヨタは車両制御インターフェイスを自動運転キットの開発会社に開示することも発表しています。開発会社は開発に必要な車両状態や車両制御のデータを取得でき、開発された自動運転キットを搭載することが可能になります。
  

2. Relúmĭno スマートグラス(サムスン)

サムスンは、C-Labという自社研究所の名前で3つの新しいプロジェクトを発表しました。その3つとは、どこでも持ち歩ける超小型スピーカーのS-Ray(Sound Lay)、呼吸器系のソリューションであるGoBreath、そして視覚障碍者向けのスマートグラスRelúmĭnoです。

視覚障碍を持つ方のうち、86%(約217万人)が弱視だと言われています。一口に弱視だと言っても、その見え方は十人十色なので、そうした人々に最適化した視覚映像をRelúmĭnoが提供します。

すでに、RelúmĭnoアプリはMobile World Congress 2017で発表されていましたが、このスマートグラスはスマートフォンアプリと無線で通信し、電源供給やプロセスを任せることで、軽量化を実現しています。スマートフォンはグラスに付いているカメラからの映像を処理し、処理された映像がグラスのレンズに、弱視の方の見え方に応じて最適化されます。

これまでもサムスンはGalaxyシリーズでスマートフォンやVRデバイスを開発してきましたが、その技術をRelúmĭnoにも活かしています。技術が特定の問題を解決する手助けになっている点では、十分に評価に値するでしょう。
  

3. ロールアップ OLED テレビ(LG)

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LGがCESで発表した注目の新技術が、65インチのOLEDディスプレイを搭載したテレビです。テレビの大きさに関して言えば、それほど目立ったものではないかもしれませんが、実はこのテレビは、ある点で世界初を打ち出しています。

Via: The Verge

*「世界初のロールアップ可能なOLEDテレビ」*であると発表されたこの技術は、4Kにも対応しながら紙のように巻いて収納することができます。また、テレビの一部を収納することで、全く新しいサイズで別の機能を楽しむことができます。

海外のあるジャーナリストは、「この技術が強力なセリングポイント(買うきっかけ)になるわけではないけれども、それが将来このテクノロジーが役に立たないということを意味しているわけではない」と中立的に評価しています。ただ、LGが小売店向けに販売しているウォールペーパーサイネージのような超薄型のテレビ技術が一般にも普及すれば、テレビは「置くもの」ではなく「貼るもの」に変わるかもしれません。
  

4. Mirage Solo(レノボ)

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一方のレノボは、CESに合わせて、Daydream対応のスタンドアロン型のMirage Soroと、4K対応の180度VR動画を撮影することができるVRカメラMirage Cameraを発表しました。

これまでDaydreamを楽しむには、Daydream対応コンテンツを「Daydream View」というヘッドセットに装着することで、VRコンテンツを楽しむことができるというものでした。

Mirage Soloは世界初のDaydream対応のスタンドアロン型ヘッドマウントディスプレイで、ほかの機器に依存することなく、映像を表示するディスプレイやバッテリーなど必要なものを全て搭載しています。外部機器に接続しなくてもいいという点で画期的であり、注目を集めています。
  

5. UV Sense(ロレアル)

ウェアラブルデバイスと言えば、スマートウォッチやスマートグラスなどを想像する人が多いでしょう。しかし、フランスのクリシーに本拠地を置いている世界最大の化粧品メーカーであるロレアルがCESに出品した技術は、予想に反した意外なものです。

ロレアルが出品したのは、まるでネイルアートのように爪に貼り付ける、UV Senseというデバイスです。サイズはまるでミントタブレットほどの大きさですが、爪に着けて身体で浴びている紫外線の量を測定してくれるのです。もちろん、これほどまでに小さいというだけでも注目に値しますが、さらには日光を受信するのにバッテリーが必要ないということです。

Apple Watchさえあれば音楽も聴けたり心拍数も測れたり電話もできたりと、Apple Watchはいまやウェアラブルデバイスの独壇場となっていますが、こうした特化型センサーが現れることで、業界の動きはどのようになるのでしょうか。
  

6. aibo(ソニー)

ソニーはCESで車載向けのイメージセンサー技術やXperiaシリーズの最新スマートフォンなどを展示していましたが、中でも注目を集めているのが、ソニーの新型「aibo」です。

すでに日本で2017年11月に披露されていましたが、日本国外で初めて展示するかたちになりました。ソニーは「AI」「ロボティクス」の領域で複数のプロジェクトを着実に進捗させていますが、その成果としての「aibo」に多くの期待が寄せられています。

海外の反応はどうでしょうか。The VergeのジャーナリストSam Byfordの言葉を借りれば「aiboとしばらく遊んでみたけれども、すでにもう恋しくなっている」と、AIペットとしては嬉しい反響が集まっています。

aiboは2018年1月中には発売予定で、198,000円で一括で購入するプランと、月々2,980円でサブスクリプションで楽しめるプランが用意されているということです。
  

7. Tangle Lake(インテル)

「インテル、入ってる」でお馴染みのチップメーカーインテルがCESの基調講演で発表したのが、49量子ビットの量子コンピューティングテストチップTangle LakeとAIチップLoihiです。Loihiは昨年お披露目されていましたが、Tangle Lakeは今回初披露となります。

量子コンピューティングでは、従来のコンピュータのトランジスタが情報の基本単位としてきた「0」と「1」の「ビット」に類似した*「量子ビット(通称キュービット)」を扱いますが、これにより*「0」と「1」の両方を同時に表すことができる**ようになり、従来型のコンピュータの*「1億倍高速」*になると言われています。

理論的な証明がある一方で、物理的に量子ビットを製作し作動させるためにどうすればよいかが課題になっていました。

量子コンピューティングでは、極度に低温状態に置いて「量子もyつれ」状態を実現させ、超伝導によって量子ビットを再現できるといいます。インテルはこれまで7ビット、17ビットの量子コンピューティングチップの出荷を進めていました。

最終的に量子コンピュータが商業分野で活躍するには100万かそれ以上の量子ビットが必要だと言われていますが、こうしたチップが少しずつ情報処理できる容量を増やしながら開発が進められるのは、大きな進歩です。

インテルはシリコンによる量子コンピューティングチップの研究も進めており、シリコンでの制作が可能になれば、現在の仕様に比べてはるかに小さい量子ビットを実現できるとしています。