デプスインタビューとは?数字では分からないユーザーの深層心理を知ろう
WEBマーケティングにおいて成果を出すためには、地道なデータの分析と、それに基づく改善のためのアクションが必要不可欠です。しかし、数値データのみを分析するだけではユーザーが持つ潜在的なニーズを拾うことは難しいのも事実でしょう。
そんな時に大切になるのが、実際にユーザーの声を聞き、商品やサービスに対する深層心理を引き出すことです。手法は様々ではありますが、潜在的な声を汲み取る意味で有効な手法の1つに「デプスインタビュー」があります。
今回は、デプスインタビューの一連の流れ、そしてインタビュー後の分析や改善へのプロセスについてご紹介します。ご紹介する方法は一例ではありますが、商品やサービス改善のための手段として、ぜひ参考にしてみてください。
潜在的なニーズを知ることの重要性
人間の行動において、潜在的な意識下での情報処理が占める割合は非常に大きいと言われています。そのため、ユーザーを意識した改善が大切になるWEBマーケティングでは、ユーザーの深層心理を把握することは非常に重要です。
市場のニーズを把握するための手段としては、リサーチが有効です。リサーチ結果を適切に分析することで、サービス改善の糸口をつかむことが出来ます。
リサーチにおいては大きく2つのアプローチがあります。
1つが「定量調査」。数値データを収集するリサーチ方法です。
2つ目が「定性調査」です。ユーザーがサービスに対して抱いた具体的な感情や意見を収集します。
ユーザーの潜在的なニーズを知る目的では、定性調査がよく用いられます。「ユーザーがその行動を取った理由」を直接聞くことができるためです。
参考:
ユーザーインサイトとは - Webマーケティング用語|ferret [フェレット]
定量分析と定性分析でできることを理解している?Web担当初心者が知っておきたい両分析の違い|ferret [フェレット]
マーケティングがわかる事典 オンライン版 | 日本リサーチセンター
デプスインタビューとは
そうした定性調査の中でも、個人の深層心理を知る目的で用いられる調査方法に「デプスインタビュー」があります。対象者1人とインタビュアー1人を中心として行われる面談方式のインタビュー調査です。
デプスインタビューは、潜在的なニーズを引き出すうえで効果的な調査方法です。しかし、実際に深層心理を引き出すためには質問や会話などのテクニックが必要になるため、経験が必要になる調査であるとも言えるでしょう。
また、デプスインタビューに限らず定性調査によって得られたデータは、見る人によって分析の結果が変動しやすいという点にも注意しましょう。誰が見ても等しく認識できる定量データの分析と異なる部分であり、分析の際に注意するべきポイントでもあります。
参考:
デプスインタビューとは|市場調査・アンケート調査のマクロミル
インタビュー調査(FGI/DI)|定性調査ならマクロミル
グループインタビューとの使い分け
デプスインタビューのメリットとデメリットについて、同じくインタビュー形式の定性調査である、グループインタビューとの違いを比較しつつ考えてみましょう。
デプスインタビューとグループインタビューの大きな違いは、インタビュー相手の人数です。グループインタビューは、複数人(6~7人程度)で行われますが、デプスインタビューは1人に対して行います。
この人数の違いに着目することで、デプスインタビューのメリットとデメリットが分かります。
メリット:率直な意見を聞き出しやすい
1対1でのインタビューのメリットは、率直な意見を聞きやすいことです。複数人だと意見の同調などが起きる可能性があり、本心を聞くことが出来ない場合もあるでしょう。
他の人がいないことで、商品やサービスに対するネガティブな意見も含め、正直な意見を聞くことができ、本質的な改善が期待できます。
デメリット:コスト面の問題を考慮する必要がある
デメリットは、かかるコストが大きくなりやすいことです。
デプスインタビューでは、深層心理を引き出すため、1人に対してじっくりと調査を行います。1度のインタビューで90分以上かかることも多くあります。
1つのテーマに関しての調査には、10名程度の対象者が適切と言われることもあり、その数に対して調査を実施するためには、時間的にも金銭的にも、相応のコストがかかってしまう点は否めません。
参考:
デプスインタビュー:インタビュー調査(定性調査)3. | マーケティングリサーチの専門会社、KFS
デプスインタビューとエスノグラフィー調査の違いと使い分け | リサーチ・市場調査 | クロス・マーケティング
マーケティングがわかる事典 オンライン版 | 日本リサーチセンター
実施前の準備と注意点
ここからは、実際にデプスインタビューを実施する時の流れを確認していきましょう。
デプスインタビューによる調査を検討する際の参考にしてみてください。
仮説を立てる
まずは、現在の市場の状況や、サービスの問題点などについて、仮説を立てます。
「自社のECサイトは、ここが使いづらいのでは?」といった現状に対する仮説や、「会員数が増えていないけれど、こんな会員限定サービスがあったら登録者数が増えるのではないか?」といった問題の改善方法に関する仮説などを書き出します。
このプロセスは、次に説明する質問内容の決定段階にも大きく関わってくる大切な作業です。
大まかな質問内容の決定
仮説を立て終えたら、それをもとに“大まかな”質問内容を決めます。質問内容は最低限のものをいくつか定めるぐらいにしておきましょう。
ユーザーの意見を深掘りするためには、その場の状況に応じた質問が必要であるためです。詳しくは後述します。
実施する人数・時間
調査に際して必要な人数と実施時間も考える必要があります。
対象者を何人集めるのか、どれぐらいの時間で実施するかに関しては、デプスインタビューのデメリットの箇所でもお話ししたように、かかるコストを考慮したうえで設定しましょう。
また、自社で調査を行う場合、インタビューに関してどのように人員を配置するかを考えておきます。例えば、インタビュアーが記録も兼ねるのか、補佐としてもう1人配置するのか、といったケースが考えられます。
適切な調査対象者を定義する
インタビューの対象者選びは非常に重要です。定義した仮説に対して、有効な回答を得られるようなユーザーを探しましょう。
例えば、「20代のOLが求める、化粧品の特徴に関する仮説」を検証することが目的である場合、インタビューの対象に30代OLや専業主婦を選択すると、その回答は有効でなくなる可能性があります。求めている商品像が異なるためです。
このように、調査を通して得たい情報は何かを考えたうえで、その情報を握っている可能性があるユーザーは誰なのかを検討することが大切です。
いくつかの条件を設定しておくなどして、適切なユーザーを絞り込みましょう。
調査対象者の集め方を検討する
実際に対象者を集める際、どのような手段を用いるかにも留意する必要があります。
方法は様々考えられますが、例えば以下のような手段が想定されます。
- 外部の(調査会社)に依頼する
- 自社の社員の中から、条件に近い人物を選出する
- ソーシャルメディアを用いた呼びかけ
- 知り合いを通じた紹介
これはあくまでも一例です。予算や使えそうなリソースに応じて、効果的な方法を選びましょう。
なお、外部の調査会社に依頼する場合ですが、対象者のリクルーティングのみを請け負っている企業もあれば、リクルーティングからインタビューの実施までを行っている企業もあります。そちらも状況に応じて使い分けるのが良いでしょう。
参考:
ユーザビリティテストの被験者を集める時に気をつけたい5つの注意点|ferret [フェレット]
実施中の注意点や使えるテクニック
いよいよインタビューの実施です。ユーザーの潜在的な意見を引き出すことは簡単ではありません。
適切な質問や会話のテクニックなどを駆使して、時間をかけて深掘りする必要があります。
ユーザーの意見を深掘りすることが求められるデプスインタビューの際、質問や、注意する点はたくさんあります。具体的には以下のようなポイントを抑えておきましょう。
- まずは相手との信頼関係を築く
- 質問は決めすぎず、臨機応変に掘り下げていく
- 深掘りはするが、「なぜ」を使いすぎないこと
- 回答を得るのが難しい場合、他の方法と併用するのもアリ
まずは相手との信頼関係を築く
ユーザーの潜在的な感情を引き出すためには、インタビュアーとの間に信頼関係を築くことを意識します。
インタビューが始まると同時に、いきなりサービスの質問を投げかけるのは良くありません。緊張などから本音を話してくれない可能性があるためです。
なのでまずは、和やかで話しやすい雰囲気を作ることを意識します。相手の話にしっかりと耳を傾けたり、共感の意を示してみましょう。
簡単なことのようで、意外と忘れがちで、難しい部分です。
質問は決めすぎず、臨機応変に掘り下げていく
デプスインタビューの際は、質問内容を決めすぎないようにしましょう。
質問内容をマニュアル化し過ぎてしまうと、表面的な意見にしか触れられないことが多いためです。
ある程度決めた大枠の質問について、相手の回答を受け臨機応変に掘り下げていくことが重要になります。
この調査の目的は、あくまでもユーザーの行動を具体的に聞き出し、その裏に隠された欲求・ニーズを分析することであるのを忘れないようにしましょう。
深掘りはするが、「なぜ」を使いすぎないこと
質問を深めていこうとすると、どうしても「なぜ」という表現を多用してしまいがちです。
「なぜ」を問うことはもちろん大切ですが、行き過ぎると相手に負担をかける原因にもなります。
インタビューで得るべきものはあくまでも分析のためのデータです。
「答えを得る」というよりは「材料を集める」感覚で質問をするのが良いでしょう。
例えば「なぜその行動を取ったのですか?」という表現ではなく、「その行動を取ったとき、どのようなことを考えていましたか?」と、詳しい状況を聞くように変えてみます。
これだけでも質問を受ける側の印象もだいぶ変わり、リアルな感情を引き出すことが出来るでしょう。
行動観察法との併用
質問の際の注意点について述べてきましたが、相手によってはなかなか意見を引き出せないこともあります。
そうした場合は、行動観察法との併用も1つの手です。
行動観察法とは、デプスインタビューと同じく定性分析の一種です。質問に対する回答ではなく、実際の行動を観察することで、ユーザーの行動の特徴・その裏にある潜在的な心理を推測します。
インタビュー相手が、話すことを苦手としていた場合は、この方法を併用することで有効な情報を得られる可能性があります。
例えば、ユーザーが商品やサービスを利用する状況を実際に観察することで、リアルな使い方などの情報を得ることが出来るでしょう。
参考:
ユーザーインタビューを行う際に気をつけたい4つのポイント|ferret [フェレット]
デプスインタビューとエスノグラフィー調査の違いと使い分け | リサーチ・市場調査 | クロス・マーケティング
行動観察で分かる! ユーザー行動の「なぜ」
インタビュー結果をサービスの開発や改善につなげるには
せっかくインタビューをしても、そこで得た情報を分析し、商品やサービスに活かさなければ意味がありません。ですが、どのように分析を進めるべきか悩むこともあると思います。
そのために必要なプロセスについてご紹介します。これはあくまでも一例ですので、自身に合った形でアレンジしながら進めてみてください。
調査結果を整理する~KJ法の利用~
まずは調査結果を整理しましょう。そのための方法は様々考えられますが、よく用いられる手法の1つに「KJ法」があります。
古くから学問領域やビジネスの世界など、幅広い分野で活用されているデータ整理の手法です。ブレインストーミングなどのアイデア発想法と組み合わせて用いられることもあります。
KJ法は以下のようなプロセスを踏み、データを整理します。
- カードの作成
- グループ化
- 並び替え・図解化
- 文章化
それぞれの流れを見ていきましょう。
1.カードの作成
最初に、インタビューの際のメモや、音声の書き起こしなどを用意し、集めた情報をカード化していきます。
インタビューで得た1つ1つの情報を、ポストイットなどに記入します。気をつけることとしては、簡潔な表現を用いつつ、抽象的になりすぎないよう意識することです。
カード化したアイデアは、ホワイトボードや壁などに貼っていきましょう。
2.グループ化
情報のカード化が終了したら、それらをグループに分けていきます。関係性が深そうなカード同士をまとめていきましょう。
最初は大きな文脈というよりは小さなグループを複数作るイメージで固めていきます。グループを作ったら、今度はそれぞれのまとまりを表現する名前を付けていきます。
その後また、小さなグループ同士を再びグループ化...といった具合で繰り返していき、情報を整理します。
3.並び替え・図解化
グループ化が終了したら、今度はそれぞれのグループの間の関係性を考えましょう。
グループの配置を並び替えたり、矢印などの記号を用いることによって、相関図を作成します。
4.文章化
最後に、図解した相関関係を文章化していきます。
重要性が高いと思われる要素から文章化を進めていき、全体がどのような関係性でつながっているのかを文章にします。
ここまでの流れは容易ではなく、それぞれのプロセスを行き来することもあるでしょう。
しかし、インタビューで集めた情報は、こうした情報整理によって価値を発揮しますので、粘り強く情報を整理することが必要です。
参考:
KJ法とは?メリットやデメリット、実施方法をご紹介 | BizHint HR(人事の悩みにヒントを届けるニュースサイト)
ペルソナの設定とカスタマージャーニーの作成
さて、上記のKJ法のような手段でインタビュー結果を整理しました。そうした過程で、ユーザーの抱える本質的な課題や、潜在的なニーズが浮かび上がってきます。
それをもとに、改めて商品やサービスのターゲット(ペルソナ)を設定します。
これによって、ユーザーの抱えている課題や、そのために必要な商品やサービス像をイメージし、改善に向けたアクションが起こせます。
また、近年はスマートフォンの普及などによりユーザーとの関わり方が多様化していますので、先程のペルソナがどのような行動の流れで自社のサービスと接点を持つのかを表すカスタマージャーニーマップの作成を行うことも多いです。作成したことが無ければ、この機会に検討してみるのも良いかもしれません。
ペルソナの設定やカスタマージャーニーの作成方法に関しては、以下の記事などを参考にしてみてください。
参考:
ホームページ運営に欠かせない!ペルソナの設定方法とは?|ferret [フェレット]
カスタマージャーニーマップとは〜作成するために最低限知っておきたい基礎知識と活用事例|ferret [フェレット]
まとめ
今回は、ユーザーの潜在的なニーズを拾うための調査手法「デプスインタビュー」の準備から実施、そして分析までの流れをご紹介しました。
数値データの分析はもちろん大切ですが、それだけではユーザーの目線に立った商品・サービスを提供することは難しいといえます。
ご紹介したデプスインタビューのように、実際のユーザーの声を聞き、感情や欲求を掘り出すことも同様に大切です。数値データの分析と合わせて行うことで、その効果を最大化することが出来るでしょう。
「ユーザーが何を求めているのか」という問いに行き詰まったとき、このような調査・分析手法が有効です。
まだ言語化されていない、ユーザーの潜在的なニーズを探し出し反映することで、本当の意味でユーザー目線に立ったサービスを目指しましょう。
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