グループインタビューとの使い分け

デプスインタビューのメリットとデメリットについて、同じくインタビュー形式の定性調査である、グループインタビューとの違いを比較しつつ考えてみましょう。

デプスインタビューとグループインタビューの大きな違いは、インタビュー相手の人数です。グループインタビューは、複数人(6~7人程度)で行われますが、デプスインタビューは1人に対して行います。

この人数の違いに着目することで、デプスインタビューのメリットとデメリットが分かります。

メリット:率直な意見を聞き出しやすい

1対1でのインタビューのメリットは、率直な意見を聞きやすいことです。複数人だと意見の同調などが起きる可能性があり、本心を聞くことが出来ない場合もあるでしょう。

他の人がいないことで、商品やサービスに対するネガティブな意見も含め、正直な意見を聞くことができ、本質的な改善が期待できます。

デメリット:コスト面の問題を考慮する必要がある

デメリットは、かかるコストが大きくなりやすいことです。

デプスインタビューでは、深層心理を引き出すため、1人に対してじっくりと調査を行います。1度のインタビューで90分以上かかることも多くあります。

1つのテーマに関しての調査には、10名程度の対象者が適切と言われることもあり、その数に対して調査を実施するためには、時間的にも金銭的にも、相応のコストがかかってしまう点は否めません。

参考:
デプスインタビュー:インタビュー調査(定性調査)3. | マーケティングリサーチの専門会社、KFS
デプスインタビューとエスノグラフィー調査の違いと使い分け | リサーチ・市場調査 | クロス・マーケティング
マーケティングがわかる事典 オンライン版 | 日本リサーチセンター

実施前の準備と注意点

ここからは、実際にデプスインタビューを実施する時の流れを確認していきましょう。
デプスインタビューによる調査を検討する際の参考にしてみてください。

仮説を立てる

まずは、現在の市場の状況や、サービスの問題点などについて、仮説を立てます。

「自社のECサイトは、ここが使いづらいのでは?」といった現状に対する仮説や、「会員数が増えていないけれど、こんな会員限定サービスがあったら登録者数が増えるのではないか?」といった問題の改善方法に関する仮説などを書き出します。

このプロセスは、次に説明する質問内容の決定段階にも大きく関わってくる大切な作業です。

大まかな質問内容の決定

仮説を立て終えたら、それをもとに“大まかな”質問内容を決めます。質問内容は最低限のものをいくつか定めるぐらいにしておきましょう。

ユーザーの意見を深掘りするためには、その場の状況に応じた質問が必要であるためです。詳しくは後述します。

実施する人数・時間

調査に際して必要な人数と実施時間も考える必要があります。

対象者を何人集めるのか、どれぐらいの時間で実施するかに関しては、デプスインタビューのデメリットの箇所でもお話ししたように、かかるコストを考慮したうえで設定しましょう。

また、自社で調査を行う場合、インタビューに関してどのように人員を配置するかを考えておきます。例えば、インタビュアーが記録も兼ねるのか、補佐としてもう1人配置するのか、といったケースが考えられます。

適切な調査対象者を定義する

インタビューの対象者選びは非常に重要です。定義した仮説に対して、有効な回答を得られるようなユーザーを探しましょう。

例えば、「20代のOLが求める、化粧品の特徴に関する仮説」を検証することが目的である場合、インタビューの対象に30代OLや専業主婦を選択すると、その回答は有効でなくなる可能性があります。求めている商品像が異なるためです。

このように、調査を通して得たい情報は何かを考えたうえで、その情報を握っている可能性があるユーザーは誰なのかを検討することが大切です。
いくつかの条件を設定しておくなどして、適切なユーザーを絞り込みましょう。

調査対象者の集め方を検討する

実際に対象者を集める際、どのような手段を用いるかにも留意する必要があります。
方法は様々考えられますが、例えば以下のような手段が想定されます。

  • 外部の(調査会社)に依頼する
  • 自社の社員の中から、条件に近い人物を選出する
  • ソーシャルメディアを用いた呼びかけ
  • 知り合いを通じた紹介

これはあくまでも一例です。予算や使えそうなリソースに応じて、効果的な方法を選びましょう。

なお、外部の調査会社に依頼する場合ですが、対象者のリクルーティングのみを請け負っている企業もあれば、リクルーティングからインタビューの実施までを行っている企業もあります。そちらも状況に応じて使い分けるのが良いでしょう。

参考:
ユーザビリティテストの被験者を集める時に気をつけたい5つの注意点|ferret [フェレット]