工芸のファンを増やすため、毎日見てもらえるアプリを

中川政七商店では、「さんちの手帖」という旅のお供アプリを提供しています。このアプリの特徴は、自社以外の商品を紹介しているアプリであるということです。

商品を販売する企業であれば、商品紹介やそれにまつわるエピソードを紹介したり、アプリで買い物できたりするのが一般的です。

中川政七商店では、なぜ自社以外の商品を紹介するアプリを提供しているのでしょうか。緒方氏は、このアプリをリリースする背景には工芸界の事情があると話します。

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「このアプリは中川政七商店以外の工芸を紹介するメディアです。中川政七商店では、“日本の工芸を元気にする”というビジョンを掲げています。アプリを使って工芸に対する関心度を高めていこうと思って運営しています。」(緒方氏)

緒方氏は各地方の工芸を紹介するアプリを作ることで、日本人が工芸に触れる機会が増えて工芸に関心を持ってくれるようになるのではと想定しています。

また、工芸全体を盛り上げていく目的の中で、アプリという手段を使った理由として、アプリの方がブラウザよりも毎日見てもらえるからだと話します。

「買い物アプリって、買い物をする時しか使いません。それだとホーム画面から消されてしまう。そこで、毎日使ってもらうにはどうしたら良いか考えた時に、メディアは毎日記事を更新する発想があります。毎日開くのであれば、ブラウザで検索してアクセスするよりも、アプリでホーム画面をタップした方が早いですよね。」(緒方氏)

また、「さんちの手帖」は旅行先でも使って欲しいのでガイドブックとしても使える機能が付いているそうです。「お客様にこうなって欲しい」という目的があって、それを実現するためにアプリを活用しているとのことです。

アプリ導入のハードルについて

今回の登壇者の中で唯一アプリを導入していないのが、ロクシタンジャポンです。ロクシタンジャポンの吉屋氏は、アプリ導入について以下のように話します。

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「リアル店舗と繋がるのはなかなか難しいです。それを考えると、アプリで企業と店舗とお客様が繋がれるのはすごくいいなと思っています。何度か打診をしたこともあります。しかし、海外では自社アプリがほとんど使われていません。ブランド価値を伝えるための綺麗なアプリは作られていますが、活用までできていません。なので、承認が得られていないのが現状です。投資に踏み切れるアイデアが描ききれていないので説得できていないというのもありますね。」(吉屋氏)

せっかくアプリを制作しても使われないかもしれないという懸念はどの企業にもあるでしょう。「そのアプリが何を生み出せるのか」まで描けなければ、ただ作っただけで終わってしまう可能性も考えられます。

アプリ以外の選択肢も

アプリを活用している中川政七商店緒方氏とライザップの澤本氏からは、必ずしもアプリである必要はないとの声も上がりました。

「(さんちアプリでやっていることを)意外とブラウザでやれる時代も来るのではと思うんですよ。もしかしたら、“自社サービスのアイコンをホーム画面に置ければいい”ってことかもしれません。基本的にはいいものができたらそれを正しく使いたいなと思っているだけですね。」(緒方 氏)

「“アプリじゃなきゃダメじゃん”みたいな議論が社内であるんです。でもこの部分はブラウザでいいじゃんっていう議論もしないとバランスが悪いですよね。開発時間が余計にかかってしまうことだってある。結果的にお客様から上がってきた声を消化できるのが半年後になっちゃうのは本末転倒ですよね。」(澤本 氏)