読者に「自分ゴト化」してもらうための編集方針

ferret:
コンセプトの変化とともに、コンテンツ制作や見せ方においても変えていった部分はあったのでしょうか?

岡山 氏:
ありますね。これは編集方針をイラスト化したものなんですけど……。

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(岡山 氏がiPadで描いた70seedsの編集方針)

岡山 氏:
70seedsの編集方針にはまず、「ミクロな動機×マクロな課題」というのがあります。
「社会の新しい当たり前をつくっていく」という話って、マクロな課題に寄りがちなんです。でも、例えば「テレビで社会課題の話題を取り上げても縁遠すぎて視聴率が獲れない」って話、よくありますよね。とはいえ社会課題を取り上げている人には、これを始めたミクロな動機、その人がやっている個人的な理由があるはずなんです。結局このミクロな動機が、読者が課題を自分ゴト化するために重要なことなのではないのかなって。

ふたつ目の「読者は自分ともう1人」というのは、ライターが良いと思うだけではなく、「もうひとり、こんな人に読んでほしい」という人物のイメージを立てて、その人がちゃんと読んでくれるかという客観的な視点も入れて書くということです。

もうひとつは「入り口は広く、出口は狭く」。難しいことや世の中にとって正論になるような話って、どうしても入り口が狭くなりがちと言いますか…いわゆる「意識が高い人」しか読まなくなっちゃうような。でもそうじゃなくて、入口はちゃんと広く取る。そういうことに関心があんまりなかったり、関心はあるけど踏み出してこなかったりという人たちをどう引っ張り込んでくるかっていうのがすごく大事なので。

そのために動画を作ったり、記事の表現を変化させていったりしています。興味を持ってもらうために入り口は広く、ただし中身は徹底的に丁寧にして出口は狭く、ということを重要視しています。

記事の見せ方は「テレビ」を意識

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ferret:
70seedsは、記事トップに画像が固定されていて記事を読み進めていくと固定画像が変化していく、という一風変わった記事の見せ方をしていますよね。これにはどのような狙いがあるのでしょうか?

岡山 氏:
端的に言うと、テレビを意識しています。日本人にとって一番身近なメディアは、やっぱりテレビなんですよ。若い世代はテレビを見ないとも言われていますが、それでもテレビのフォーマットに親しんだ人たちが作り出す、テレビ的なコンテンツを楽しんでいますよね。

ferret:
確かにそうですね。

岡山 氏:
70seedsの記事でもテレビ的な部分を意識して、上の画像とテロップが切り替わることで、サーっとスクロールして読み進めていってもなんとなく話を飲み込めるようにしているんですよ。

やっぱり視覚的に刺激を与えながら、最後まで読んでもらうために飽きない工夫をしていく必要があるなと思います。

最近インタビュー記事でよく見かける、インタビュアーとインタビュイーの顔アイコンを出して吹き出し風にする見せ方も、その手法のひとつですよね。
それに加えて、スマホ最適化にも取り組んでいます。例えばインタビュー記事の見せ方。インタビュアーとインタビュイーのセリフを左右に振って表示させているのですが、文字の配置や文字数をLINEやメッセンジャーと同じにしているんですね。

スマホに合わせ過ぎて、パソコンでは見づらいって話もあるんですが……。今は読者さんの8割がスマホなので、ひとまずスマホに合わせていこうと実験しています。