若年層を中心に爆発的に流行している、動画共有SNSの「TikTok(ティックトック)」。

TikTokはどうしてここまで若者の心を掴んでいるのでしょう。また、TikTokは今後どのように発展し、ビジネスに活用されていくのでしょうか。

2018年9月7日、株式会社ベクトルはTikTokと戦略マーケティングパートナー契約を締結したと発表しました。

ベクトルグループに所属し、若者マーケラボの主席研究員として活躍する高橋美乃里氏とともに「これからのTikTok」を考察します。

参考:
プレスリリース

高橋 美乃里氏プロフィール

高橋美乃里

高橋美乃里(たかはしみのり)
株式会社スマートメディア
若者マーケラボ 主席研究員

戦略PR会社のベクトルグループにて若者を中心としたマーケティングをはじめ、リサーチや新規事業を行う。若者に流行っているプラットフォームとそこで流通するコンテンツを研究中。

どうしてTikTokは流行したのか

ferret:
広告パートナーでもあり、TikTokの流行世代にも近い年齢の高橋さんから見て、どうしてTikTokはここまで流行しているのだと考えていますか?

高橋氏:
まず、スマートフォンに最適化されたタテ型ショートムービーなので、PCよりもスマホをメインで使う若者にとってもっとも馴染みやすいフォーマットになっていることが挙げられます。

また、「SNOW」の写真フィルターなどを考えていただければわかりやすいですが、ここ数年の間に「写真で最大限に可愛いを作り上げる」というのが研究されてきました。でも動画に関してはそれが実現できたのって、ここ1〜2年ぐらいの話。AI系フィルターの発展のおかげで、「動画の可愛いを作りあげる」ことができるようになってきましたよね。そのタイミングとTikTokがマッチしたのではないかと思います。

ferret:
なるほど。とはいえTikTokも初めの頃は「広告がウザイ」という話をよく聞きましたよね。言ってしまえば、曲もオリジナルではないですし、自分の言葉を発することもない。ダンスもオリジナルかと言われれば、必ずしもそうではないわけで。

なのにどうしてその「ウザイ広告アプリ」から現在のような超人気コンテンツにまで発展していったのかというのが気になっていまして……何か思うことはありますか?

高橋氏:
おそらく従来の動画コンテンツって、人気者になろうと思ったら「超美人やイケメン」もしくは「変顔やネタが話せる超お調子者」の二択だったと思うんです。その中で一般人が活躍しようと思うと、人気者のモノマネとかがが精いっぱいだったりして……。従来の動画媒体で一般人が気軽に動画を公開して、それが多くのユーザーに楽しんでもらえるようなものにできるかと言われると、難しいというのが現実だったと思います。

しかし、可愛く撮れるフィルターや、トランジションというかっこいい動画効果を簡単にかけられるTikTokが登場したことで、一般人が挑戦する口パクやモノマネなどでもクオリティの高いコンテンツが作れるようになったと感じています。

ferret:
確かにそうかもしれません。投稿のハードルは下がって、それでもって動画のクオリティは一定レベルが保たれるようになって……つまり、誰でも気軽に参加しやすくなったということですね。

「ビジネス」における影響は?

ferret:
YouTubeやInstagram、Facebook、ライブコマースなど、動画をビジネス活用するというのは珍しくなくなってきました。「ビジネス」という視点で見た時に、TikTokはどのような価値があると思いますか?

高橋氏:
TikTokには、「AIでユーザーを取りこぼさない」という強さがあります。リテンションも高いですし離脱率も低い。ひとりのユーザーが離脱せずに楽しめる動画を上げ続ける、という仕組みができているんです。

広告ビジネスはリテンションの高さと滞在時間が重要です。その2つが強いので、広告ビジネスにおけるTikTokの価値は高いのではないかと思いますね。

ferret:
TikTokの離脱率が低いというのは少し意外です。ここには理由があるのでしょうか。

高橋氏:
アルゴリズムの影響が大きいと思います。ベクトルで勉強会をやる時には「とりあえず心を無にして30分ほどTikTokを視聴してみてください」とお願いしています。

というのも、TikTokは独自のアルゴリズムによって30分視聴を続けていると自分にフィットしたコンテンツが出てくるんですよ。なので、だいたいみんなハマっています(笑)

ferret:
最近だと40代の男性もハマっているというニュースもありましたもんね。

高橋氏:
「若くてかわいい女の子が多いから」と言われていますよね。確かにその通りかもしれません。

先ほどもお話したように、アルゴリズムによって関連動画として表示される優先順位も変わってきます。ですから、かわいい女の子の動画を見続けていれば、関連動画にも反映されていくんですよ。

このように、好みの動画を続けて視聴ができる結果として、年代・性別問わず受け入れられているのかもしれません。

TikTokインフルエンサーの価値

ferret:
広告の価値」という意味では、TikTokで活動しているインフルエンサーたちの価値に関しても気になります。YouTuberやインスタグラマーとの違いはあるのでしょうか。

高橋氏:
あると思います。特徴としてはトランジションですね。従来の動画コンテンツは「美男美女・お調子者」が多かったのですが、TikTokはこれに加えてトランジションが得意な「テクニシャン」が多いのも特徴的です。トランジションを最大活用してハイクオリティな動画を制作している点は、他の媒体のインフルエンサーと異なる点だと思います。

ferret:
本格的に動画編集をしようと思ったら、スキルが必要ですもんね。
TikTok内でこれらのインフルエンサーを活用したマーケティングを実施する企業は増えてくるのでしょうか。

高橋氏:
それでいうと、今のところTikTokでは「インフルエンサーが企業から頼まれた商品をTikTok内で紹介する」という行為を禁止しています。広告を出す場所は、TikTokで定めたインフィード広告枠のみなんです。

ferret:
なるほど。コンテンツを見る側からすれば快適な環境ですね。

高橋氏:
そうだと思います。TikTokとしては、サービスを害さない形での広告配信を望んでいるんです。なので、インフィード広告にTikTokインフルエンサーを起用する可能性はあるかもしれませんね。

ferret:
そこが動画配信プラットフォームと大きく異なる点かもしれないですね。

TikTokの人気はいつまで続く?

高橋美乃里

ferret:
アルゴリズムの話を聞くと、「なるほど」と納得する反面、「このTikTokブームは一過性で継続しないのではないか」という様にも思っています。とはいえ例えばYouTubeでも、「YouTuberブームなんて一年も続かない」という声もあった中、なんだかんだ波に乗っているじゃないですか。

その視点でいくと、TikTokの盛り上がりはこれからも継続すると思いますか?

高橋氏:
過去の事例を見てみると、やはり10代向けサービスの寿命は長いとは言えません。弊社取締役の伊藤は、塾経営の経験をもとに「学校が変われば彼らの見るコンテンツが変わる」という話をしていました。10代が見るコンテンツは、自分が関わっている周りの人々に帰属するからです。その話でいくと、今の高校生は大学生になったらTikTokをやっていないかもしれません。

ですがTikTokは独自のアルゴリズムに加えてコンテンツが面白いので、従来の10代向けサービスよりもブームが長いのではないかと考えています。

アルゴリズムが強みのTikTok

若者を中心に、流行中のTikTok。

その人気の秘訣は、可愛い動画を簡単に撮影、投稿できる手軽さに加え、アルゴリズムによって離脱率の低さや滞在時間の長さを実現していることにあるようです。

TikTokのブームは一体いつまで続くのか、また、ビジネスにどのように活用されていくのか……。これからもTikTokから目が離せません。