音楽ストリーミングサービスやスマートスピーカーの普及によって、国内でも急速に注目されている「デジタルオーディオアド」。
では音声広告の元祖ともいえる「ラジオ広告」はどうでしょうか。

電通の「日本の広告費」によれば、1990年代後半には約2,400億円近い売上があったのに対して、現在は約1,200億円と市場は半分に縮小。しかし、インターネット上でラジオが聴けるサービス「radiko(ラジコ)」の登場もあって、ラジオ広告も「オーディオアド」として生まれ変わろうとしています。

進化しているラジオの価値と将来性について、今回は株式会社J-WAVEの手塚氏と伊東氏にお話を伺いました。

ラジオの現状

DSC_0646.jpgアカウントマネジメント局 アカウントプランニング部 副部長
手塚 渉氏

ラジオはインターネットとの親和性が高い

ferret:ラジオの聴取人口は年々減少しています。ラジオ局としてどのようにお考えですか?

手塚氏:この現状に関しては危機感を抱いています。「一度も聴いたことがない。」という人もいるので・・・。

ferret:特に「若者のラジオ離れ」は顕著だと言われ続けています。

手塚氏:今の若者って何にでも離れている気がするんですよ。車にテレビ、いずれは「スマホ離れ」も来るかもしれません。今まではラジオって親の影響で聴くようになったという人が多かったのですが、今はこちらからラジオを聴くきっかけを創る必要がありますね。

ferret:ラジオ広告費も長年減少傾向にありますが、近年は横ばいに推移しています。その要因は何なのでしょうか。

手塚氏:まず、ラジオを含めて4マスメディアの広告費が減少しているのは、インターネット広告の急成長によってシェアを奪われているからだと思います。そのなかでラジオ広告が健闘しているのは、インターネットとの相性が良いことが要因の1つと言えます。リスナーとのコミュニケーションは、はがきやFAXから、メールへと変遷しました。今ではtwitterとの連動企画もあり、インターネットを介したリスナーとのコミュニケーションが一般的になっています。

ferret:今では「ラジコ」で聴く人も多いですよね?

手塚氏:ラジコの普及によって生まれた最大のメリットは、スマホをいじりながらラジオを聴く環境が生まれたことです。メディアというのは時間の奪い合いなので、インターネットの発達によって、テレビ、新聞、雑誌の利用時間は奪われてしまっています。
そういった点で「ながら聴き」ができるラジオは他のマスメディアと比べてインターネットとの親和性が高い。広告を出稿される企業側もそこに期待されているのではないかと思います。

ラジオCMの魅力

自由度の高いクリエイティブを低予算で

ferret:「音声」を通じた広告の価値に注目が集まっている今、従来の音声広告であるラジオCMの魅力とは改めて何なのでしょうか。

手塚氏:まずラジオCMの特長はテレビCMに比べて圧倒的に費用を抑えられる点です。テレビCMの場合、キャストを手配してロケ地に出向き、時には特殊な映像技術も使用します。そうしてできた映像による訴求は効果的である一方で、膨大な費用が必要で、広告を出稿できる企業は限定的です。
その点、ラジオCMはスタジオでの録音が一般的で、費用は格段に抑えられます。また、音を巧みに使えばどんな場面でもストーリーでも作り上げることができるのです。
聴覚のみに頼った訴求ですが、商品・サービス、企業の魅力をリスナー自身の想像力で膨らませることによって印象に残ることでしょう。

DSC_0467.jpgアカウントマネジメント局 アカウントプランニング部 副部長
伊東 知子氏

ferret:企業の規模や予算によって、ラジオCMの活用に違いは生まれますか? 

伊東氏:大企業の場合、テレビ番組のセールスは共同提供が一般的だと思います。そうすると一つ一つのCMの印象は薄くなり、他の企業に埋もれてしまう可能性もあります。
ラジオ番組の場合はクライアントが1社で番組を冠提供頂くことが可能です。特に1時間の1社提供の番組の場合は、企画から構成まである程度関わることができるので、「企業理念、姿勢、提供したい価値」など伝えたい大切なメッセージを長い時間リスナーに届けることができます。

一方で、スタートアップ企業や中小の規模の企業にとって、コストパフォーマンスの良いラジオCMは、企業名の刷り込みによる認知、ブランディングに非常に有効だと考えます。交通情報や天気予報、ニュースなどの提供の場合も、社名とCMをオンエア、毎日刷り込んでいくことが可能です。

ferret:具体的にはどのようなCMが多いですか?

伊東氏BtoB企業の社名認知や就職活動する学生、その親世代に向けたリクルーティングにラジオCMをご活用いただいています。ラジオ番組は内容や放送時間帯によって細かくセグメンテーションされているので、ターゲティングがしやすいのもラジオCMの特長のひとつですね。

ラジコで進化するラジオCM

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営業の質向上「リスナーの可視化」が可能に

ferret:ラジコのユーザー数は着実に伸びています。ラジオCMにも変化や影響はありましたか。

手塚氏:これまで首都圏のラジオ局は、ビデオリサーチ社による2ヶ月に一度、1週間かけて日記式で行われる「ラジオ個人聴取率調査」を指標としていました。ですがこれは調査期間以外の時期に関しては推察するしかなく、リアルタイムでの分析とはいえません。
しかし、現在はラジオ広告配信の効果を高める取り組みとしてラジコデータマネジメントプラットフォーム(ラジコDMP)の活用をしています。ラジコDMPを活用した解析によって、リスナーの性年代属性に加えて、今まではわからなかったリスナーの趣味・趣向や価値観までもがリアルタイムのデータとして得ることができます。
現段階では試験的な運用ですが、これによっていままでわからなかったリスナーのインサイトが「可視化」できるようになったのです。
ラジコDMP.pngラジコオーディオアドセールスシート_202001版_第3版

ferret:ラジコDMPによって得られたデータはどのように活かされているのですか?

手塚氏:データは番組制作だけでなくクライアントへの営業にも良い影響を与えています。これまでは番組のリスナー層をなんとなくのイメージでクライアントに説明していた部分を、リアルタイムのデータベースで提案できるようになったので、より納得感のある形で、ラジオCMの価値をクライアントに伝えられるようになりました。

ferret:今後ラジオCMはどのように発展していくのでしょう?

手塚氏「ラジコオーディオアド」の普及が予想されます。これは地上波放送のラジオCMとは別に、ラジコDMPのデータを基にラジコユーザー属性に応じて最適な広告に差し替えて個別配信するサービスです。
これによってよりターゲティングの高い広告配信を可能とし、今後は「1再生いくら」といったようにインターネット広告同様のデジタルフォーマットにのっとった広告形態になるかもしれません。
ラジコオーディオアド.pngラジコオーディオアドセールスシート_202001版_第3版

手塚氏:しかし、ラジコユーザーはまだまだ全体のラジオ聴取者の一部に過ぎません。今後、ラジコユーザーが増加して全体に占める比率がさらに高まれば、ラジオも本格的にデジタルオーディオアドとして確立していくでしょう。

J-WAVE最新事例

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ferret:J-WAVEでは番組内で放送されるラジオCMとは別に、プロモーションやキャンペーンに積極的なイメージがあります。最新の事例を教えてください。

「UNIQLO presents WEAR YOUR LIFE」(2019年9月5日~8日)

伊東氏:4日間にわたりユニクロ銀座店にミニ・サテライトスタジオを設置して、「心地よく上質なライフスタイルと音楽とは」をテーマに9時間特番を実施しました。さらに、その内容を凝縮して店舗オンエア用に3時間程度のパッケージを制作し、全国の店舗でオンエアしていただきました。祝日の9時~18時に編成するホリデイスペシャルは、9時間という長い時間を1社冠提供頂くことにより、クライアントの商品やメッセージを印象付けることが可能でブランドイメージの浸透させることができたと思います。
ラジオならではの機動力によって実現した事例です。

『UNIQLO presents WEAR YOUR LIFE』

「山手線RADIO Powered by J-WAVE」(2020年2月3日~17日)

伊東氏:今年の成人の日に放送して好評をいただいた、東京感動線(山手線を基点に、駅、街、人との魅力的な出会いによって感動体験ができる個性的で心豊かな都市生活空間)とJ-WAVEのコラボレーション番組で、10組のゲストが語った「山手線にまつわる”感動ストーリー”」を再編集。当日放送できなかった内容も含め、厳選して「山手線RADIO Powered by J-WAVE」として車内で限定配信しました。

『山手線RADIO Powered by J-WAVE』

ferret:ラジオで放送した番組をコンテンツとしてクライアントに提供しているわけですね。

デジタルオーディオアドとしてのラジオの将来性

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ラジオはオーディオコンテンツに進化

ferret:海外ではデジタルオーディオアド市場が急速に拡大しています。日本でもスマートスピーカーが徐々に普及していて、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスも浸透しています。ラジオは将来的にどうなっていくとお考えでしょうか。

手塚氏:すでに企業の宣伝方法はやりつくされているような感じがしていて。そうしたなか、新たな手法として企業のオウンドメディア需要が高まっているように感じます。そのソリューションとして、ラジオは先ほど述べた事例のように「オーディオコンテンツ」のひとつとして認識されていくでしょう。

伊東氏:リスナーにとってコンテンツを楽しむ為の媒体やプラットフォームは関係ないのです。「ラジコ」もそもそもはインターネットですから。

手塚氏:J-WAVEでは昨年10月にデジタルオーディオコンテンツに特化した子会社「JAVE」を設立しました。今後はいかにクオリティの高いコンテンツを作れるか。企画力が問われるコンテンツ勝負になってくると思います。

J-WAVE 新会社設立のお知らせ(PR Times)

ferret:音楽番組を中心に編成するJ-WAVEにとってSpotify(音楽サブスク)はデジタルオーディオアド市場において競合になってくるのでしょうか?

伊東氏:Spotifyは直接的に見れば競合です。ただ、我々としては今はデジタルオーディオアド市場の拡大に向けて「協業」しているイメージです。
企業が「オーディオアドを出したい」となったとき、選択肢が少ないと市場として成立しません。まずは手を取り合って市場を成熟させていくことが大事だと思います。
 
ferret:ありがとうございました!